あしなが育英会で「東日本大震災10年 津波遺児が語る今」記者会見があり、私も会見でコメントを述べさせていただきました。 会見で3人の遺児たちが、これまでの10年そして今を語ってくれました。 「同じ体験をしている仲間と出逢えた」「グリーフプログラムは成長の場になった」と、グリーフプログラムに対する思いもみなさん語ってくだいました。 そしてこれまで支えてくれた人たちへの感謝とこれから自分がすべきことや、自分が幸せであることの大切さなどを話してくれました。 私の感じたことを記しておきたいと思います。
震災時、佐藤利憲先生や相澤治さんら地元の支援者に、あしなが育英会が加わって下さって、震災遺児のサポートにあたりました。
私は「その子が、亡くした親の年を超えるまで」と答えていました。 「え???3年、5年でなく?」と驚いた記者さんは沢山いました。 予後のわかるような病気をイメージして「治癒まで何年?」という感じで訊いたのだと思います。 死別後のグリーフは病気ではないです。 消す薬もないです。悲しみは消えることはありません。 「その人が戻ってきたら」悲しみは消えるでしょう。 しかし、そんな魔法はありません。 震災時、まだお母さんのお腹の中にいた遺児もいます。 その子が10歳になります。 今日、記者会見で体験を語ってくれた遺児たちも、まだ未来のビジョンを模索する年代です。 10年の支援で、やっと、ここまでです。 やっとです。
あの時、私が答えた「亡くした親の年齢を超えるまで」というスパンは間違ってなかったと確信します。 震災当時、40代だった私は50代になりました。 あと20年も遺児支援できるしょうか? 「はい、70代になってもがむしゃらに支援します」 そう、この記者会見での遺児たちの話を聞くまでは思っていました。 「支援しなければ」と思っていたのです。 今日、彼女・彼らは「自分たちが同じような境遇の人を支えたい」と言っていました。 支えなきゃと思っていた子たちが、10年経つと支える側になっていました。 当事者に対する私の傲慢でした。 この子達は、擁護されるだけの存在なんかじゃない 自分たちの経験を生かして、心を痛めている人や同じような境遇にある人を支えることのできる人たちなんだ と、今日の会見で認識しました。 グリーフの物語を会見で語ってくれて ありがとう。 【PTG(外的心的外傷後成長)】 ここまで読んでいただいた方の中には 「ああ。震災遺児は、ちゃんとこころの支援を受けていて、世の中に役立とうとしてるのか」と思う方も多いと思います。 今日、記者会見に臨んでくれた遺児たちは、震災体験を「感謝」や「未来」に変えたPTG(外傷後成長)の部分を語って下さいました。 遺児支援してきてよかったなと、彼らの話を聞いて、心の底から思いました。
グリーフプログラムに通ってこられる子どもは、グリーフプログラムに送り迎えしてもらえる子たちです。 「同じような体験をした仲間と出逢えてよかった」いう体験を、生活状況が厳しいあるいはこころのケアの理解のない家庭の中にいる子どもほどできていません。 今日、記者会見に臨んでくれた遺児たちは、グリーフプログラムにつながってくれたケースです。 子どもは家庭を選べません。 だから、親御さんが情報を得られなくても、親御さんがプログラムに連れてくることができなくても 「プログラムに行きたいな」と思う、支援を必要とするすべての子どもにグリーフサポートが行き届くといいなと思います。 今日の会見のあの子たちのように未来に進む子も沢山います。 とはいえ、あの会見があの子たちの「すべて」だとは私は思いません 前を向いたり後ろを向いたり、私たちが想像できないこころの体験をしたと思います。 前向きになれない震災後の子どもたちもいる。 支援につながられない子もいる。 そこを見落とすことなくこれからも支援していきたいです。 |
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