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鹿児島県垂水市の自殺予防 その2 自殺予防教育の実際 [2021年07月23日(Fri)]

垂水市は大隅半島にあって錦江湾に面しており桜島とくっついている街です。人口は14,000人ほど。
8つの小学校があり、中学校が一つあります。大小の小学校の児童が卒業後、一つの中学校に集まることになります。

一番大きな垂水小学校で児童数約370人、児童数が10人くらいの小学校が3つあります。
小さな学校もあるということでGIGAスクールに力を入れていて
他校との交流もリモートで深めているとのことでした。

垂水市はGIGAスクール構想が県内で最先端を走っている自治体。

その実力が今回も発揮されました。


児童生徒の対象は6年生・中学生全学年でした。

自殺予防と言っても「死にたい」というレベルのSOSの出し方を教えるものではなく、

1.日々の困りごとのレベルのSOSを出せること

2.自分の持つレジリエンスや自尊感情を認識できること

3.それらを育むんでいくことが可能であることを知ること

4.自分のコーピングの傾向を知り、コーピングの幅を広げ色んな困難に対処できる能力を養っていくこと

など、生きる力のようなものをつけていくことを盛り込むようにしています。


さて、そんな垂水市での授業はどんな風に運営されたのか紹介したいと思います。


【垂水小学生対面授業とハイブリッド授業】

市内で最も大きい垂水小学校6年生は1クラスごとに対面授業でした。


ほんとに子どもたちが元気で、発言も活発でした。

はじめてであった子どもたちなのに、授業が終わらないんじゃないかと思うくらい発言が活発でした。

こうして何でも言えるのは、子どもたちが先生たちのことを信頼していること、

周りに信頼できる大人たちがいるからだろうと感じました。
子どもたちの発言のおかげで、私が思っていた以上に実のある授業となりました。


2日目に午前中、協和小学校、午後は水之上小学校で授業し、双方とも少人数小学校である、牛根・新城・柊原・松ヶ崎・堺とリモートでつなぎながら授業しました。

いわゆるハイブリッド授業です。


内容は対面授業と同じです。
小学生は講演とグループワークがあるのですが、

6年生が一人しかいないというような学校の児童のことを考えたら

グループワークのある授業はリモートより他の児童と一緒に受けられたほうがよかったなと思いました。
今回はコロナのこともあったので、リモートが最善だと考えます。
小さな学校を想定してグループワークをいれない授業も考えていかないといけないかなとも思いました。

私自身、課題を頂いた授業でした。


そんな私の課題に関係なく、子どもたちはテレビ画面に自分たちが映るのを楽しんでいました。
対面の子たちは
こちらの問いかけに直接答えてくれ、

リモートの子たちに質問を振ると、こちらもまた大きな声でしっかりと答えてくれ

双方向のやりとりもできました。

遠隔の教室の先生たちのサポートのおかげです。

何より、子どもたちによってこの授業は成立し、

それからリモート設定をしてくださった市の担当者に救われた授業でした。



【中学生 各学年ごとのハイブリッド授業】
垂水中央中学校は各学年3クラスあります。

小学校は学校を結ぶ遠隔リモートハイブリッドでしたが、中学校では

「体育館に集めないで教室で受ける」ハイブリッド授業でした。
体育館に集めないというのは、コロナ対策でもありましたが、この季節の鹿児島、熱中症対策でもあります。

中学生の授業は講義とワークシートの形式。


2組で対面授業をし1組と3組はリモートで講義を聞きました。

ワークは各クラスの先生方にご協力いただき進めてもらいました。

各学年、3クラスが並んで隣の教室なので、ワークの時は全クラスをラウンドすることができました。

リモートで画面で見ていた講師がいきなり「ど〜も〜」と登場して生徒は最初びっくりしてましたが(笑)


やっぱり、面と向かってお話できるのはいいと思いました。

とりわけ、こころの授業なので。

対面、遠隔ハイブリッド、隣のクラスとのハイブリッドと3つのタイプの授業を経験できて、そのメリットデメリット、課題もいただいた授業でした。


授業もさることながら、鹿児島県垂水市の自殺予防 その1でも書きましたが、今回の垂水市の先駆的な取り組みは、学ぶべきことがとても多かったです。


垂水市の子どもの自殺予防が先駆的だと思う点を3点挙げておきます。


【市内一斉実施】

垂水市は今年から自殺予防教育をスタートさせましたが

市内の全小学校の6年生と、市立中学生全学年に3日間で一斉にSOSの出し方授業を実施計画しました。

ほかの自治体は「自殺予防教育、やりたい学校はどうぞ」というような手挙げ方式や

自治体が選んで1校だけというケースが多いのです。

かつ、自殺対策計画に沿って結果を出さないといけないので

「とりあえずやりました」という感じの自治体も少なからずあります。

全小中学校の実施、1万数千人の自治体だからできることかもしれません。

予算のある大きな自治体しかできないと思ったら大間違い。

学校数の少ない小さな町こそできるし、GIGAスクールの先端を走る垂水市のように、IT化を推進することで実現できるのだと思いました。



【出し方と受け止め両輪研修】

さらに、垂水市の子どもの自殺対策の先駆的ところは

子どもにSOSの出し方教育をするだけではなく、教員対象にSOSの受け止め方研修も同時に実施している点です。


今回は子どもたちが帰った後の時間に教員対象に研修をさせていただきました。


子どもたちにはSOSの出し方教育で「大人に相談してね、3人まではあきらめずに!」と言いますが

さて、大人がSOSを受け止められているか?というと、

昨今の児童生徒の自殺の増加をみると、大人側に問題があることがわかります。

SOSの出し方を教えて、SOSを出しても、大人がうけとめられないと「わかってもらえない」という絶望に陥ります。


SOSの受け止め研修は、子どもたちに「SOS出しましょう」という前(あるいは同時)にやるべきことだと私は思っています。



SOSの受け止め先の拡大】

悩み事を抱える子が、身近に相談できる大人がいない、あるいは、相談できない子たちもいます。


垂水市は対面相談のほかに、4月から24時間体制の電話相談・LINE相談「たるみず寄りそい心の相談」を独自にスタートさせています。


子どもから高齢者まで誰でも相談できる窓口。
対面・電話・LINEとさまざまな相談ツールを揃えることで、大正昭和世代から平成令和世代まで対応できる窓口になっています。

「小さな町にはできない」と思ってあきらめている自治体は多いです。

けれども、垂水市を見る限り、「小さな町だからこそできることが沢山ある」と思います。

ちぇすと〜!垂水市、これからも最前線で突っ走ってください。


垂水相談_page-0001.jpg
Posted by 高橋聡美 at 10:42
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