BBCで日本で自殺者が増えている報道がなされ,Webでも配信されました。
その中で、昨年、自死したある著名人の名前と写真が掲載されており、あたかもその人の自死が日本の女性の自殺の増加につながったかのような記事になっていました。
【個人名をあげることの害について】 2020年は色んな著名人が自死で命を落としました。 にもかかわらず、BBCの記事は特定のひとりの著名人の名前を挙げて、故人を写真入りで紹介していました。
日本の有識者(dedicated to combating Japan's suicide problem)のコメントもあって、残念ながら、その方も自殺の増加をその著名人の影響だという論調にとどまるのみでした。 自死報道によって自殺が増えるいわゆる「ウェルテル効果」が、2020年の日本の自殺の増加の「要因の一つ」であったことは確かだと私も思います。
ここで問題にしたいのは、「自死報道が自殺の増加に影響を与えた」ということを論じる際に、個人名やその人の写真まで掲載する必要があるのかということです。 自死報道の在り方については、誘発自殺を防止するために、原因を特定しない、写真を掲載しないなど様々な議論がなされてきました。 そんな中での今回の記事は、 @日本人の女性の自殺が増えたのはあの著名人の影響と理由を限定的に報じてしまっている A個人の名前や写真など、自死報道の議論に直接関係のない情報まで出ている という点において非常に問題だと感じています。 【自死報道が遺族に与える影響】 この報道を目にしたご遺族や関係者は、身内の自死で自殺がこんなにも増えてしまったと罪悪感やうしろめたさを抱くことでしょう。 遺族への配慮に欠ける記事であると断じたいです。
このような自死報道が自死遺族を生きづらくさせていると、私たちはこれまでも学んできたはずです。 本当にBBCの記事は残念に思えてなりません。
国内の報道でも「あの人は小さな子供がいたのになんで自殺したんだろう?」というような、コメントがよく出ますが、 その言葉を聞いた子供は「自分は親の自殺を止める存在になれなかった」という想いを抱きながら、生きていかなければならなくなります。 このように自死報道は、様々な形で遺族を二次的傷つき体験に晒すリスクがあるのです。 【自死が起きた後、私たちがとるべき行動】 1人の自死で沢山の人が、底知れぬ悲しみを抱きます。 みんなが傷つきます。 なので、犯人捜しをして誰かを責めるとか、今回のBBCの報道のように名指しや写真入りで「この人の自殺の後自殺が増えた」と書くことは、遺族を生きづらくさせるだけです。 自殺が起きた後に、私たちが立ち戻るべき軸足は「もうそれ以上誰も傷つかない・もうそれ以上誰も死なない」ということです。 日本人の自殺をどうしたら減らせるか、その原因追及は必要です。 けれども、誰のせいと個人名を出すことは、新たな心理的危機を生みます。 自殺が増えている中、改めて自死報道を考えていかなければなりません。 「その人が自殺したから自殺が増えた」、ではないです。 「自死報道のあり方が人々を刺激したから自殺が増えた」んです。 グリーフの中にあるご遺族を苦しめないように。 社会の問題を亡くなった方の問題にすり替えたりしないように。
*BBCの記事は自死報道としてはよくない記事なので拡散防止のためにリンクは貼りません。 |
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BBCの記事から考える自死報道のありかた
Posted by
高橋聡美
at 23:54
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