自殺の報道の影響について 知っておきたいこと [2020年09月28日(Mon)]
<自殺の報道の影響について> 芸能人の自死が相次いで、みなさんの心も普段より不安定になっていると思います。 かつて、1980年代にアイドルが飛び降り自殺をした際に、若者の自殺が増えました。 当時の報道は遺体がまだある自殺現場をそのまま報道していたりしたため、世の中に大きな衝撃を与えました。 また、自殺の手段も報じられ、この報道以降、同じような手段での自殺が相次ぎました。 マスメディアの自殺報道に影響されて自殺が増える事象を、自殺学では「ウェルテル効果」といい、特に若年層が影響を受けやすいとされています。 ウェルテル効果は単に、その人を思って自殺する「後追い自殺」だけを指すのではなく、その報道に触れて自殺する「誘発自殺」も含みます。 ここ数カ月の芸能界の自殺は、ファンも沢山いただろうし、ファンでなくても日ごろ私たちがよく目にする方であったり、何もかもうまくいっているように見えていた方たちだったりしただけに、ファン以外への影響も大きいように思います。 私自身、彼・彼女らは輝いて見えていましたので、本当にショックでした。 自殺の報道の影響に関しては過去の研究で 1. 自殺が大きく報道されればされるほど自殺率が上がる。 2. 自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がる。 ということが分かっています。 WHOは自殺報道でしてはならないこととして 1.遺体や遺書の写真を掲載する。 2.自殺方法を詳しく報道する。 3.単純化した原因を報道する。 4.自殺を美化したりセンセーショナルに報道する。 5.宗教的・文化的な固定観念を当てはめる。 6.自殺を非難する。 ということをあげています。 80年代のアイドルの自死の時は、遺体の写真を添えながらセンセーショナルに報道したほか、自殺の方法を詳しく報じ、さらに「恋に殉ずる自殺」というような美化をしました。 結果、その年の若者の自殺は前年より245名増えています。この翌年は225名減っておりこの年だけ増えたわけです。 ここ最近の芸能人の自殺報道は、80年代の報道よりは改善されており、記事の後や放送のあとに、相談窓口の紹介もできています。 しかしやはり、ニュース速報で流れ衝撃的に報道されたり、自殺の手段を詳しく報じたり、原因を単純化したりという傾向が散見され、自殺を誘発する報道になっていると言わざるを得ません。 手段や場所などを報じると、憧れの人と同一化したい人たちを同じ方法・場所での自殺に導く危険性や、自殺を考えている人たちが「その方法・場所なら死ねるんだ」と模倣する危険性が出てきます。 自殺への偏見はあってはならないことですが、一方で自殺を美化することは「自殺は人に認めてもらえる行為」と、自殺へのハードルを下げてしまうので、美化することは自殺を誘発します。 また、自殺の原因は決して一つではありません。 仕事に悩みがある・産後うつ・ネットでの誹謗など自殺の原因を一つにしてしまうと、同じ状況にある人が、やはり死ぬしかないのかなという思いに駆り立てられたりもします。 さらに限定することで、自殺の原因となった「人」が、今度は心理的危機にさらされ、自殺のリスクが上がります。 1つの自殺に4つ以上の原因があります。 原因を一つにせず、犯人は探しをすることのないように、自殺が起きた後、私たちが気を付けなければならないことの一つです。 <今、私たちがやるべきこと> まず、このことで動揺している人のサポートをしてください。 話を聴いてください。そしてできるだけ報道などを見ないように勧めてください。 皆さん自身も、心に重いものがのしかかっていると思います。 皆さん自身も、自分の気持ちを誰かに話してください。自分を癒してください。 コロナの影響で効果的な気分転換ができない状況ですが、LINEや電話やSNSで誰かとつながっていてください。 誰かとつながっていることは「命をこの世につなぎとめること」につながります。 あなたの命を守りたいと思っている人は必ずいます。 あなたの手を絶対に離さない人がきっといます。 あなたの心の中に浮かんだ人に連絡をしてみてください。 つながっていましょう。 つながっている限り、大丈夫。 |
Posted by
高橋聡美
at 13:55