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グリーフケアにおけるスピリチュアルケア [2012年10月05日(Fri)]
先日、日本スピリチュアルケア学会に行き、色々な先生方とお話をしました。

東日本大震災後、ご遺族の話や被災地の方々お話を伺うにつけ、それは「精神的な痛み」というより「魂の痛み(スピリチュアルペイン)」であるように感じました。

そして遺族のわかちあいの会を開催していても、彼らの魂の救済には何の力も発揮できていないという無力感に襲われ、知り合いのご住職にお電話をして「スピリチュアルに対してはやっぱり宗教しか介入の方法がないんだろうか」という悩みをシェアしました。(この話はCafe de Monkの記事に詳しく書きました)

今回、京都での学会ではカール・ベッカー先生が、日本人のスピリチュアリティについてご講演下さり、その中で日本人の大事にしている価値観や文化などを紹介してくださいました。

スピリチュアルと言った時に「霊的」と訳されることが多いため、何か宗教的な要素をイメージさせますが、ベッカー先生のスピリチュアリティの話を聞いたときに、これは個々人の尊厳やアイデンティティかかるものであるという認識を改めて持ちました。

グリーフサポートはメンタルとソーシャルの両輪のサポートでとよく言われますが、そこにどのようにスピリチュアルケアを組み込んでいくかとか、そもそもメンタルとスピリチュアルの違いは何なのかという課題にぶつかります。

私のような精神医学・看護の世界では落ち込んでいる人の話を聞くとか抗うつ薬を飲んでもらい抑うつを改善するといった手法に囚われ、表面的なメンタルケアに終始しがちです。
かと言って、私たちは宗教家ではないわけなので、死後の世界や魂のつながりについて確固たる話をご遺族に語ることもできません。

では、一体、グリーフサポートの中でどのような視点でどのようにスピリチュアルケアを取り入れていくかというのは課題だと思われます。

東日本大震災で私達が失ったものは大切な人・家・仕事等様々でしたが物質的なものだけではなく、大事な文化やふるさと、いつまでも平和だと思っていた未来や希望までも失いました。

「そこにはもう住めないから他の土地に住んで転職すべきだ」と言われた方も大勢おり、私達が経験した喪失はアイデンティティや自身のスピリチュアリティを脅かすような喪失だったように思います。

グリーフサポートの中で大切にしなければならないことの一つには、ご遺族が悲嘆を抱えながらも、自分らしく生きていくことがあります。それはその人の価値観や文化などのスピリチュアリティを尊重することから始まります。

グリーフケアにおけるスピリチュアルケアという視点で考えた時に、私は以下の2点について重要な要素だと考えます。
一つは「亡き人とつながっている感覚」をご遺族が持てることです。
心の中で彼らに話しかけたり、彼らと生きた時間を自分の中で意義付けることができること。
さらに、喪失の悲しみや、彼らと一緒に過ごした思い出と共に、ご遺族自身の人生がまだこの先も続くという感覚です。
2つ目は「何を失っても、この魂で、この運命を生きていく」というご自身の魂や運命への信頼の感覚をご遺族自身が持てることです。

宗教者ではない私たちが、魂の救済などという言葉を使うことはできませんが、遺族のスピリチュアリティを尊重し、グリーフサポートの中で亡くなった人との魂のつながりや自身の運命や魂への思いに寄り添えた時に、スピリチュアルケアの一端を担えるように思います。

亡き人とのつながりを感じる瞬間。それは決して特別なものではありません。
美しく蝶が飛ぶ姿を見た時、雲の間から見える光、思いがけないところから出てくる亡き人の遺品、亡き人がくれたご縁・・・・そんな風に日常の中で亡き人とのつながりは感じることができます。

このような感覚はメンタルケアの枠組みではなく、スピリチャルなサポートの要素なのだと思います。
もちろん、うつで自尊心が下っていたり、生活に困窮していたら、その人らしさやスピリチュアリティは保てないわけですので、眠れない・不安が強い・抑うつが強いといったことに対するメンタルのケアや、生活そのものの支援もその人のスピリチュアリティを支える要素にはなるでしょう。

その上で亡き人とのつながりや自身の人生への信頼感へのサポートをグリーフケアの中にいれていけたらメンタルサポートから発展し、スピリチュアルなサポートになっていくのはないかなと感じています。

人はただ食べて寝るだけの動物ではなく、生活する動物です。
グリーフサポートの目指すところも、その人のスピリチュアリティが尊重され、その人がその人らしく活き活きと生きていけることを支えるところにあるように思います。


*スピリチュアルケアについてはまだまだいろんな議論がなされているところではありますが、今回の日本スピリチュアルケア学会で私が感じたことを覚書としてこの記事を記します。ご意見のある方、コメントをいただけたら幸甚です。

基調講演・特別対談で沢山の気付きを下さいました気仙沼の菅原文子さま、谷山洋三先生、大下大圓先生、このご縁を下さいました龍谷大学の黒川雅代子先生、鍋島直樹先生に、こころからの感謝を申し上げます。
Posted by 高橋聡美 at 00:00
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