自死遺族ケアシンポジウム in 神戸 [2011年02月24日(Thu)]
2月20日(日)に自死遺族ケアシンポジウム(厚労省主催)が神戸で開催されました。
我が国の自死遺族支援をリードしてきた全国自死遺族総合支援センター、自死遺族ケア団体全国ネット、全国自死遺族連絡会のそれぞれの代表がシンポジストとしてお話をされました。私自身、遺族支援をするにあたって、「当事者」と「支援者」の壁に度々ぶつかってきましたが、そのような立場の違いを越えて今、自死遺族支援は「総合支援」の段階に来ているのだと思います。その意味において、立場の違う3団体が一堂に会した今回のシンポジウムは意義深かったと思います。 <総合支援> 従来、自死遺族支援は「わかちあい」などによる心のサポートをメインに展開してきましたが、生活支援も含む「総合支援」のフェーズにやってきたと私は感じています。 全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子さんが「違い探しではなく、共通点を探すこと」「心情の共有は難しくても問題意識の共有はできる」ということをシンポジウムで話されましたが、自死遺族の抱える問題は、法律・経済・教育・医療・・・と多岐に渡ります。遺族の声に耳を傾け、色んな立場を越えて問題意識を共有し、それぞれの専門家がネットワークを組んで総合支援を構築していく必要性があると思います。 今の自死遺族支援は、遺族が必要としている支援が必要な時に届いているとは言い難く、わかちあいの充足だけで満足することなく、生活全般を包括できる総合支援システムを考えていかなければならないと思います。 <遺族のレジリエンスと自律(Autonomy)> 基調講演で清水新二先生(奈良女子大学名誉教授)が「自死遺族支援の目指すところは自律(Autonomy)である」ということをおっしゃっていました。 自立ではなくあえて自律という用語を使われたわけですが、Autonomyつまり主体性あるいは自治というニュアンスが含まれます。 何事でも支援をする際には、その人がその人らしく生きることが目的で、支援の主体は当事者でなければならないと思います。つまり、支援者が「こうすることでこの人は自立できるだろう」と独りよがりの支援を提供するのではなく、自分の人生を主体的に選ぶことができる裁量が本人にゆだねられているということが大事なのだと思います。 遺児支援では「主導権は子ども達」「ファシリテーターが何をすればいいかは子ども達が教えてくれる」ということが強調されますが、これは全ての支援の原則と言えるでしょう。 レジリエンス(潜在的回復力)という言葉が最近、よく使われますが、遺族が自律できること:いかに自分自身の人生を自分自身でコントロールできるかということは遺族のレジリエンスによるところが大きいと思います。 指定発言でリメンバー福岡の井上久美子代表が「想像は現実を越えることはない」とおっしゃっていました。私たちがどれだけご遺族の心情を理解しようと思っても、それは想像するしか方法がなく、その現実は私たちの想像をはるかに超えるものだと思います。だからこそ、私達ボランティアは当事者の言葉にきちんと耳を傾け、独りよがりではない支援を構築するべきなのでしょう。 私の人生は私自身のものであり、あなたの人生はあなた自身のものである。 相手の自律を助けるという作業はすなわち、相手の全てをリスペクトすること他ならないと思います。 |
Posted by
高橋聡美
at 12:04