自傷と自殺 [2011年02月13日(Sun)]
2月6日に飯田橋で医療者と考える自死遺族支援と題したワークショップを開催しました。
20名の医療従事者が集まり、医療が抱える自死にまつわる問題点や今後の課題、さらには医療従事者にできる自死遺族支援についてみんなでディスカッションをしました。 ワークショップに先立ち、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所(自殺予防総合対策センター 副センター長/薬物依存研究部 診断治療開発研究室長)の松本俊彦先生に自傷と自殺について講演を頂きました。 精神科で働いているとリストカットを繰り返す患者さんと出逢いますが、医療従事者は「またか」とか「どうせ死ぬ気なんかないんだろう」といった、陰性感情を抱くことがあります。(ガッデムシンドローム) あるいは「人の気を惹くためにやっているんだろう」と思うことも多々あります。 松本先生は「リストカットは気を惹く行動ではなく、心の痛みを麻痺させるための行為です」と話されました。 実際、なぜリストカットをするか?という問いに対して半数以上の患者が「不快感情への対処」と答えているそうです。不快感情の対処行動としての自傷行為であれば、放っておけばいいのではないか?というとそういうわけではありません。 自傷行為をすることでいわゆる脳内モルヒネが分泌され、心の痛みに対する鎮痛効果が生じたり、自傷行為によって周囲が気を配ってくれたりすることにより、自傷行為がアディクション化します。また、繰り返すごとに耐性が上昇するため、自傷がひどくなるということでした。 自傷行為をされた場合、私たちはどのように声かけをしていいか、戸惑うことが多々ありますが、その傷を見せに来てくれた時はSOSのサインだということを認識して、患者さんと向き合う必要があります。 打ち明けてくれた患者に対し「自傷行為をしてはダメ」と頭ごなしに言うのではなく、まずは「よく言えたね」と援助希求を評価・支持すること、そしてそのような行動を起こさなければつらくて仕方のない状況にあることに対し共感し、存在を肯定することが大事となります。 10年前の精神科領域ではこのようにアクティングアウトを起こす患者には「治療契約」を結び、約束が守れなかったら退院して頂くというような治療がなされていましたが、自傷を繰り返しSOSを求めている人の手こそ、私たちは離してはならないのだと思います。 自傷行為に対する正しい理解と、ケアがなされるように心から願っています。 |
Posted by
高橋聡美
at 22:03