こんにちは。
前回のブログ記事は読者から反響がありまして、今回はその質疑応答を対話形式で皆様にもお伝えしてみようと思います。読者のご自身が「自殺問題に関心を持ち始めたばかりの人」という立場に立ってみて、臨場感を味わってもらえれば嬉しいですね。
質問者)すごく丁寧に、そして本質的に捉えた説明ですね。まさに「なぜ多くの人が自殺に追い詰められてしまうのか?」という私の疑問に対して、とても説得力のある答えだと感じました。ご回答いただいた記事を読んだ感想とか、わかったこと、気づいたことをアンケート的に書いてみてもいいですか?
僕)ありがとうございました。手を抜かずに執筆して良かったと思いました。お気づきの点・わかったこと、そして追加でご質問もあれば遠慮なくどうぞ。僕に答えられる範囲でよろしければお答えしたいと思います。
質問者)確かに、ニュースでは「うつ病が原因だった」とか「いじめがあった」とか、何かひとつの理由だけが強調されて報じられることが多い気がします。でも、今回のご説明を読んで「そうじゃないんだな」と初めて知りました。むしろ、いろんな悩みが重なって、それに耐えられなくなってしまう…っていうのがリアルな実態なんですね。
しかも、その状態になってしまうと、「相談すればいい」とか「助けてって言えばいい」っていう発想自体がもう難しくなってるというか、「視野が狭くなってしまう」っていうのはすごく納得できました。人間って追い詰められると、希望がある方向にすら目が向けられなくなるんだなって…。
僕)そうですね。自殺が発生した時のニュースでは、一部分しか取り上げられないため、誤った認識を持ってしまう方も、質問者様だけに限らず多くいらっしゃるでしょう。心理的視野狭窄についても日常的なニュースでは詳しく説明されませんものね。強いて言えば「自殺問題の報道特番」くらいでしょう。
質問者)あと、「希死念慮」と「自殺念慮」の違いも、正直今まで意識したことがなかったです。ただなんとなく「死にたいって思う=すごくヤバい状態」くらいにしか思ってなかったけど、それが病気の症状であり、本人の意思とは違うところで浮かんできてしまうっていうのは、すごくショックでもありました。
僕)あ、そこも説明しておいて良かった〜と思えました。僕の拙い説明文でしたが、しっかり「希死念慮」と「自殺念慮」の違いについて理解していただけて良かったです。病気の症状で、本人の意思とは無関係に思い浮かんでしまう…といった情報は、よほど自殺心理学がテーマの書籍を読んでいないと知ることが難しいことだなと僕も思います。ショックを受けたのは当然の反応だと思います。
質問者)自殺未遂者が自殺者の10倍以上いるっていうのも、驚きでした。ということは、本当にギリギリのところで助かっている人がたくさんいて、その中には「もう一度死のう」と考えてる人も、「他の人を助けたい」と思ってる人もいるってことなんですよね。その両方の声があることを知れたのも大きな気づきでした。
僕)たくさん気付きを得てもらえて嬉しいです。僕たち「自殺未遂当事者の会-芯-」でも入会希望のメールには、「自分も自殺未遂の経験があります。助かった命なので自分と似たような境遇に置かれている大勢の人にも、自分がされたように優しい手を差し伸べてあげたいと思いました」といった率直な声が多いんです。
質問者)なんというか、自殺って「遠い話」じゃなくて、誰にとっても無関係じゃないし、もっと日常の中で「つながり」や「声をかけること」が大切なんじゃないかなって改めて思いました。よかったら、まだまだ自殺問題に関心を持ち始めたばかりなので、内田さんが私のような立場の市民に向けて、もっと知ってほしいことがあれば教えてもらえますか?
僕)そうですね。自殺問題って遠いどこかで起きている出来事ではなくて、実は自分たちの身近で起きている(=しかも都心であれば尋常ではない人数)ことなんですよね。僕から、もっと知って欲しいことですか?そうですね。たくさんあって悩みますが、厳選してみますね!
ご質問者様のように、ニュースを通じて自殺問題に関心を持ち始めたばかりの方がいることは、自殺対策の促進において大変重要で大切なことだと僕たちは思っています。一人でも多くの無関心層に関心を持ち始めていただくことを目指して活動を展開しています。
関心を持ち始めた方は『もう少し詳しく知りたい・学んでみたい』と思い始めます。それは、「もしもに備えて自分にとって大切な人を自殺から回避させられるように予防策を学んでおきたい」という気持ち、もしくは「自分自身が複数の悩みを抱え込む立場になったときに自殺から自分を守りたい」という気持ちの2点に大きく分かれます。
やっぱりどこかで「自分や、自分の大切な人がそういう状態になったらどうしよう?」っていう不安もあります。まさに言ってくれた2つの動機、「大切な人を守るため」「自分自身を守るため」って、どちらもすごく自然な感情だと思います。これは前回のブログ記事で書いたことをそのまま引用しました。重要なことなので。
質問者)重要なことを何度も繰り返して伝えて下さる内田さんの姿勢は大事だな!って感じました。実際に自殺は「特別な人が突然陥る問題」ではなく、誰にでも起こり得るというところがミソだと知ることが出来ました。だからこそ「自殺問題に関心を持ってくれた方々」を逃さずに、次の一歩へと繋げていく活動って本当に重要だし、ありがたいです。
僕)そうですね!また繰り返してしまうんですが、ご質問者様のように、自殺問題に関心を持ち始めたばかりの方々は、「もしもに備えて自分にとって大切な人を自殺から回避させられるように予防策を学んでおきたい」という気持ち、もしくは「自分自身が複数の悩みを抱え込む立場になったときに自殺から自分を守りたい」という気持ちの2点に大きく分かれ、そのどちらも重要ということ。
後者は「保身的な考えではないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それが自殺予防というものです。今は健康的に生きていても突然複数の悩みを抱え込んでしまう状況に誰がなってもおかしくありません。前者のほうは、突き詰めていくと「自分が自分の大切な人にとってのゲートキーパーになれるようになりたい」という気持ちに繋がっていきます。「ゲートキーパー」は人口規模の小さな自治体でも近年ようやく力を入れ始めてきた分野です。
質問者)本当にその通りですね。「保身的」という言葉に対する誤解も、たしかにあるかもしれません。でも、実際には「自分の命を守る術を知っておく」って、まさに予防の本質ですよね。たとえるなら、防災訓練を受けておくことと同じで、「今大丈夫だから関係ない」「地元では過去100年間でも大災害は起きてないから参加する必要はない」ではなく、「いつか起こるかもしれないリスクに備えて準備しておく」ということなんですよね!
僕)あっ!とても良い例えです。僕も講演会の時に、ご質問者様のその防災訓練の例えを参加者に伝えてみたいな!と思いました。防災訓練って幼い頃から大学に入っても定期的に受けるものですし、参加者にとっては、いきなり自殺予防の話をするよりも、導入口として身近で伝わりやすそうです。
質問者)内田さんの今後のご講演にも役に立てれるような例え話を挙げられて私も嬉しいです。ちなみに、「ゲートキーパー」について詳しく学べるような場所や、自治体がやってるような講座とか研修って、どうやって探したらいいんでしょうか?できれば、無理のない範囲で参加してみたいなとも思っていまして。
僕)まず、自治体がやっているゲートキーパーについて学べる研修会や講座は、SNS発信している自治体はそれほど多くないため、日常的に地元の公共施設(=保健センター・保健所・市役所・市民会館・公民館・コミュニティセンター・公立図書館等)へ行ってパンフレットコーナーを見ることで、案内チラシを発見できるケースが多いようです。
質問者)なるほど、やっぱり地元の情報って、意外とネットよりも紙のチラシとかポスターのほうが早く出てることもあるんですね。普段あまり意識して見てなかったんですけど、地域の公民館とか図書館、保健センターみたいな公共施設に行ったときは、パンフレットコーナーもチェックしてみようと思います!あと、答えにくかったら申し訳ないのですが、自治体が主催する「ゲートキーパー研修会」の特徴??のような、内田さんが実際に参加者の1人として参加された時の感想があれば教えていただきたいです。
僕)わかりました。決して、批判するわけではありませんが自治体主催の「ゲートキーパー研修会」もしくは「ゲートキーパー養成講座」(=名称は各自治体によって色々あります)は、中身が薄いものが多く(=僕たちは様々な自治体主催のものを偵察しています)、とてもではありませんが参加したことで「今日からゲートキーパーだ!」と自信を持てるようなレベルには達せていない中身です…。「ゲートキーパーになりたいと思い始めた市民向けの超入門講座」というレベル、といえば何となくイメージできるでしょうか?
質問者)いやいや、そういうリアルな意見、めちゃくちゃありがたいです。批判ではなく、むしろ現場をちゃんと見てきた内田さんの「実感」だからこそ、すごく説得力あるなって思います。
たしかに、自治体が主催するものって「まずは知ってもらう」っていう入口的な意味合いが強いのかもしれませんね。私はまだ自殺予防がテーマの催しには参加経験はありませんが、別の自治体主催の啓発講演会に参加したことはあります。広く浅く、って感じでした。「関心を持ち始めた人」にとっては良いきっかけになるかもしれないけど、それで「よし、ゲートキーパーとして誰かを支えよう!」ってところまで行くには、正直なところ物足りない気持ちになるのはイメージしやすいです。
だからこそ、もし「もっと深く学びたい」と思ったときに、次のステップとして、どこで・どんなふうに学んでいけばいいのか、そういう情報が本当はもっと広まってほしいですよね。質問の続きになるんですが、たとえ専門的な研修をまだ受けてなくても、「日常の中でできるゲートキーパー的な関わり方」とか、「まず持っておきたい心構え」って、ありますか?
僕)上手くイメージしていただけて良かったです。追加のご質問ありがとうございます。「日常の中でできるゲートキーパー的な関わり方」は、相談を打ち明けられた際には「真面目に真摯に相手の気持ちや考えを受け止める」です。決して相手の相談内容について茶化さないこと、軽く扱わないこと、否定しないことが重要ポイントです。ただただ真摯に相手の相談を聴くことも、日常の中でできるゲートキーパー的な関わり方です。
質問者)それ、ものすごく大事な視点だと思います。「ゲートキーパー」と聞くと、特別な知識や技術を持っていなきゃいけないような気がしてしまうけど、実はその“第一歩”って、相手の話を真面目に、真摯に聴くことなんですね。たしかに、つい「元気出しなよ」とか「そんなの気にしすぎだよ」みたいに、励まそうとして軽く言ってしまいがちです。
僕)その通りです。つい「励ましの言葉」を軽く言ってしまいそうになるのですが、特に「そんなの気にしすぎだよ」なんて言ってしまうと、逆に相手に「分かってもらえなかった」と思わせてしまうこともあります…。相談した側としても「あ、もうこの人には話せないな」と絶望感を持ってしまうこともあります。難しいですよね、「励ましの言葉」を言う時って、別に相談してくれた相手を追い詰めてやろう!などという意図はなく、エールのつもりで…という場合が多いと思うんです。
質問者)はい。私もつい「元気を出しなよ」とか「悩んでいるAさんはAさんらしくないよ♪」といった、エールのつもりで言葉掛けをしてしまうことがあります。茶化さず、軽んじず、否定せず、ただ真摯に耳を傾けることが、ものすごく大きな支えになるんだろうなって、すごく納得しました。死にたいほどの辛い相談をしてくれた相手に「何か正しいことを言おう」って神経をとがらせるよりも、「ちゃんと聴くこと」にエネルギーを注ぐほうが、よほど大事なんですね。
僕)そうですね。死にたいほどの辛い深刻な悩み相談であればあるほど、打ち明けられた側としては、さっさと励まして明るい別の話題に無理にでも持っていこうとする心理が働いてしまいがちですね。でも、ご質問者様のように「ちゃんと聴くこと」にエネルギーを注ぐほうが大事、という意識を持ち始めるようになることは大切ですね。
質問者)ちなみに、「話を聴くときの具体的なコツ」とかってあったりしますか?たとえば表情や姿勢とか。「これは意識しておくといいよ」みたいな実践的なポイントがあれば、教えてもらえると嬉しいです!
僕)わかりました。簡潔ですが、表情は優しく。姿勢(=態度)は、腕を組まない・足を組まない・のけぞらない、の3ポイントです。相談を受けた際に「何かアドバイスしなきゃ!」と焦る気持ちが芽生えると思いますが、アドバイスをしたところで当事者にとってあまり意味がないため、アドバイスよりも「こういう相談窓口があるよ。よかったら私も一緒についてってあげようか?」といった情報提供を意識すると良いでしょう。
質問者)簡素ですが、という前置きでしたが、めちゃくちゃ具体的でありがたいです!そういう実践的なポイントって、意外と誰も教えてくれなかったりするので、すごく参考になります。
僕)せっかくなので、もう少し説明を交えて整理してみましょうか?「日常の中で“聴く姿勢”として意識すべきポイント」とでも題しまして。まず「表情は優しく」は、無理に笑顔じゃなくてもいいのですが、相手が「ここでなら話しても大丈夫かも」と安心感を抱いてもらえるような表情が大切ですね。
次に「腕を組まない」は、閉じた印象を与えない態度の1つです。重要な相談を聴く時に腕を組むことが習慣化されている方は直したほうが良いかなと思います。そして「足を組まない」は、聴き手が偉そうな態度を取っているように感じてしまう相談者がいるということ。
もしくは、日常生活の中で足を組む時というのはリラックスしている時が割とあるのではないかと思います。聴き手が相談者に緊張感を持たせないように優しい音楽を流したりと、少しでもリラックスできるような雰囲気づくり(=環境づくり)を心がけることは大切なことです…が、相談者ではなく聴き手が足を組むと、自分だけリラックスしているようにも捉えられがちなので注意したいポイントですね。
質問者)感じ取られ方まで具体的に説明いただいてありがとうございます。こうして見ると、見た目や雰囲気って、想像以上に「安心して話せるかどうか」に関わってくるんだなって気づかされます。聴く姿勢で「のけぞらない」というのは、話から距離を取っているように見えないように?という感じでしょうか?
僕)すみません、お答え忘れていました。「のけぞる」姿勢はご質問者様のおっしゃる通りです。あとは、深刻な悩み相談を勇気を出して打ち明けている最中に、聴き手側が上体をのけぞっている態度を取られたとしたら…?をイメージしてみると、とてもではありませんが「ちゃんと話を聴いてもらえているなぁ」とか感じられないのではないでしょうか。人によっては「横柄な態度を取られた!!」と怒る方もいるのでは…と。
質問者)たしかにイメージしてみると「横柄な態度」に感じられてしまうかもしれないですね。実は先ほどのご回答の中で何より印象に残ったことがあります。「アドバイスをしたところで当事者にとってあまり意味がない」この一言でした。たしかに、相談を受けた側は「何とかしてあげたい!」っていう焦りの気持ちから、すぐ「解決策」を出したくなってしまうのですが、当事者からしたら「解決してほしい」というより、「今のしんどさをわかってほしい」「一緒にいてほしい」っていう気持ちのほうが強いんですね?
僕)そうですね。十人十色ではあるものの「共感」や「受容」を求める方のほうが多い印象です。もちろん「いま解決しないと明日には死ぬしかない!」と訴えてくる方もいらっしゃると思います。そういう場合に大切にしたい心構えとしては、「ゲートキーパーが自分ひとりで相談者の悩みを解決しようと焦ったり、自分ひとりで相談を受けた者としての責任を全うしなきゃ」と思わないことです。けっこう重要なポイントです。ゲートキーパーは受けた悩みごとを抱え込んでしまいがちですから。
そうではなくて、ゲートキーパー側も専門家だったり地域の民生委員に相談したりして良いということ。むしろ、どんどん相談して、自分の周りにサポーターを増やしていく心構えを忘れてはならないと思います。
質問者)そうなんですね!深刻な悩み相談を受けた側(=ゲートキーパー)は、相談を受けた以上はこの人を自殺から守り切るのが自分の役目だ、と思いがちだなと私も思っていました。ゲートキーパー側も自分の周囲にサポートしてくれる人たちを、なるべく多く置いて味方につけておく重要性を知りました。あと、「こういう相談窓口があるよ。よかったら私も一緒についてってあげようか?」これはアドバイスではなく情報提供なんですね。寄り添いの姿勢もプラスされていて、本当に大事なんだと思います。言葉としてはシンプルだけど、「一人にしないよ」というメッセージがそこに込められていて、すごく温かいです。
僕)またひとつ学びが増えたようで何よりです。これから自殺問題そして自殺予防について学んでいくほど「知りたい!」「なぜ?」と思えることが出てくるだろうと思います。僕がそうでしたから。そうした時には遠慮なくメッセージをください。
質問者)はい!これから、難しくない感じの易しい書籍を探してみて自殺問題と自殺予防について基礎知識を増やしていこうと思います。ありがとうございました。またよろしくお願いします。
以上
自殺未遂当事者の会-芯-
事務局長 内田貴之