「スリランカの政治情勢」
―人民解放戦線政権へ―
2月3日から8日までスリランカを訪問し、精力的に各大臣と会談。
日本財団は、1983年から2009年の内戦で廃墟になった北部ジャフナにおける100校の学校建設や、シンハリ・タミル両民族の負傷者のための義手義足学校の建設、食糧支援などを行ってきた。建設した学校の老朽化に伴う改築及び今年中のハンセン病全国大会の実施については、保健大臣と意見が一致し、大統領も同大会の開会式への出席を了解された。

ディサナヤカ大統領にバラを贈呈(花言葉 愛と情熱)
ところでスリランカは2022年、中国からの多額の債務もあり、債務不履行(デフォルト)に陥ったが、日本政府の努力もあり、国際通貨基金(IMF)からの支援を得て財政健全化へ進み始めたところである。
2022年の深刻な経済危機の際、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は国外脱出。ラニル・ウィクラマシンハ首相が大統領代行に就任。その後選挙で勝利し、大統領となった。
その後、議員数たった3名の人民解放戦線(JVP)(共産主義・マルクス・レーニン主義)の党首、アヌラ・クマラ・ディサナヤカ氏が大統領選挙で意外にも当選。翌日、議会を解散し、JVPは左派政党連合・国民の力(NPP)として11月14日の議会総選挙で225議席中三分の二を上回る159議席を獲得する圧勝であった。
ディサナヤカ新大統領は「新しいクリーンな政治文化の確立」を政策の中心において活動を開始された。今のところ国民の期待は高く、経済界も好意的ではあるが様子見の状態のようです。
スリランカの債務は、中国46億6880万ドル、日本23億5910万ドル、インド13億6640万ドルの3ヶ国で約75%を超えています。
問題は、共産主義・マルクス・レーニン主義のディサナヤカ大統領が今後中国寄りの政策を実行するのか、隣国のインドとの関係をどうするのか、という点です。親日国スリランカの今後の動向は、地政学的に安倍元首相が提唱した「インド太平洋の安全保障」を考える上でも注目せざるを得ません。
スリランカの最近の政治情勢はまだ広く知られていませんが、表面上の大統領を中心とした政治体制とは別に、中国と同じように党内に政治局が存在しているようです。将来この政治局と内閣との間に意見の不一致が露出すると、一気に政情不安になる可能性もあるのではと老婆心ながら若干の心配をしております。
蛇足ですが、従来、スリランカでは50人を超える閣僚(大臣)が存在しましたが、新政権では簡素化のため、多くの閣僚が兼務しています。参考までに、私が会談した閣僚の兼務を記載しました。
1.アヌラ・クマーラ・ディサナヤケ
(1)大統領
(2)国防大臣
(3)財務・計画経済開発大臣
2.ハリニ・ニレカ・アマラスリヤ
(1)首相
(2)教育・高等教育・職業教育大臣
3.ヴィジタ・ヘラス
(1)外務・外国雇用・観光大臣
4. サロジャ・サヴィスリ・ポラウラジャ
(1)女性・子供問題大臣
5. ナリンダ・ジャヤティッサ
(1)保健・マスメディア大臣