「電話が読める?」
―日本財団電話リレーサービス―
電話は私たちの生活に欠かせないものですが、音声を使用することから、聞こえない人や聞こえにくい人にとっては利用が難しく、長い間大きな壁となってきた。
日本財団の関係団体である日本財団電話リレーサービスは、2021年より公的サービスとして「電話リレーサービス」を提供している。このサービスは、聞こえない人と聞こえる人との会話を通訳オペレーターが「手話」または「文字」と「音声」を通訳することにより、電話で即時双方向につながることができるものだ。しかし、難聴の人や、手話や文字チャットの使用が難しい人にとっては、十分なサービスではありませんでした。
この度、日本財団電話リレーサービスが、公共インフラとして新たに「ヨメテル」という文字表示電話アプリの提供を開始した。電話で相手先の話す言葉が自動で文字化され、スマホの画面に表示されるので、相手の声が聞きとりにくい人もスムーズに会話が出来るようになります。
以下1月23日付毎日新聞に記事が掲載されましたのでご紹介します。
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聞こえづらいあなたに
リアルタイム文字化電話「ヨメテル」、1月23日開始

ヨメテルを利用して電話をかけると、アプリ画面には相手先に流れたガイダンスも文字で表示される=東京都港区で2025年1月21日午前11時59分、藤渕志保撮影(画像の一部を加工しています)
電話の声が聞き取りにくい――。そんな悩みに対応した文字表示電話サービス「ヨメテル」の提供が、23日から始まる。相手の話す言葉を即座に文字化し、スマートフォンの画面に表示。それを読んで話すことで自然な会話ができる。聴覚障害や加齢により聞こえづらい人は人口の1割以上とも推計され、高齢化でさらに増える見通しだ。利用拡大が急がれるが、普及には幅広い理解が欠かせない。
冒頭にアナウンス「電話リレーサービスのヨメテルです。あなたの声を文字にして、相手に表示します。はっきりとお話しください」
スマホアプリ「ヨメテル」を利用してかかってきた電話を取ると、冒頭にこのアナウンスが流れる。あとは普通に会話するだけ。受け手側はアプリも不要だ。
アプリをインストールしているスマホの画面には、自分から電話をかけた場合も、相手から受けた場合も、相手の話す言葉がリアルタイムで文字化される。相手の音声も流れる。
聞こえる人も知って
文字表示電話サービス「ヨメテル」の仕組み
総務相が指定するサービス提供機関の日本財団電話リレーサービス(東京都千代田区)によると、試用期間中は不審電話と誤認されて電話を切られるケースもあったという。
担当者は「聞こえにくさを自覚する多くの人に利用してほしい。そのためにも通話の相手先の理解が不可欠。聞こえる人も『関係ない』と思わず、サービスの存在を知ってほしい。アナウンスを聞いて切らないで」と訴える。
ヨメテルは、聞こえづらいけれど発話には支障がない人や、自分の声で直接相手と話したい人を主な利用者として想定している。
発話にも困難がある人向けには、通訳オペレーターを介して通話する「電話リレーサービス」が既にある。利用者は手話か文字で会話するが、文字でやりとりする場合は自分の発言を逐一打ち込む必要があり、使いにくいとの声があった。
通常の会話スピードに対応
ヨメテルのアプリ(左上アイコン)をダウンロードして利用登録すると、アプリから相手の電話番号に電話をかけたり、受けた電話の内容を文字化したりできる=東京都港区で2025年1月21日午前11時11分、藤渕志保撮影
ヨメテルは、その手間を自動文字起こし機能で解消。同時性の高いグーグルの音声認識AI(人工知能)を採用することで、通常の会話のスピードにもスムーズについていけるようにしたという。
利用は24時間365日いつでも可能だ。文字起こしの方法は、音声認識AIまたは文字オペレーター(人)のいずれかを、通話ごとに選べる。緊急通報の場合は文字オペレーターが対応する。文字の履歴は残らない。料金は、月額料無料プランと、通話料が1分につき約10円安くなる有料プラン(税抜き月162円)がある。
利用には、ヨメテルのアプリをダウンロードしたうえで、運転免許証やマイナンバーカードなどによる本人確認が必要だ。
対象者は自己申告制で、電話で相手の声が聞き取りにくい▽医療機関で難聴と診断された▽身体障害者手帳を持っている――のいずれかに該当していることが条件。登録すると「050」で始まるヨメテル専用の電話番号が発行される。
椿鬼奴さん「助かる」
文字表示電話サービス「ヨメテル」の提供開始をアピールするお笑い芸人の椿鬼奴さん(中央)ら=東京都港区で2025年1月21日午前11時28分、藤渕志保撮影
21日に東京都内であったヨメテルの発表会には、聞こえづらさを感じているというお笑い芸人の椿鬼奴さんが登場した。
椿さんは突発性難聴の発症を機に右耳の聴力が低下し、ほとんど左耳だけで聞いている状況だという。「人混みや屋外、騒がしい居酒屋などが苦手。目の前の人の声も分からないことがある。特に仕事の電話では何度も聞き返すと相手に悪いと思ってしまう」と日常の不便を語った。
発表会でヨメテルを試した椿さんは「文字でも内容を確認できると、行き違いや誤解が少なくなると思う。何度も聞き返すのは気が引けるので助かる」と話した。聞こえないことや難聴は見た目では分かりにくい。そのため困り事を伝えるのも大変で認知されづらいといい、「加齢で聞き取り力が弱くなっている同世代の友人も多い。病名がなくても潜在的な聞こえづらさを抱えている人はいるはず。ストレスを感じる前に(ヨメテルを)使えれば」と利用を呼びかけた。【藤渕志保】