「ロヒンギャ難民支援」
―教育施設に2億3千万円―
ミャンマーから脱出したロヒンギャ難民の大多数はバングラデシュのコックスバザール地区で生活している。
私はかって、ヨルダンに逃れたシリアからの難民キャンプ、スリランカにおけるシンハリとタミールの民族紛争で発生した難民キャンプ、東チモールの難民キャンプ等を訪問したことがある。
これらの難民キャンプの中は整然としていて、なかには、教会、銀行、病院、学校のあるところもあった。東チモールでは国連諸機関に勤務する現地職員が、住宅建設費の補助を受けながらキャンプから出ない理由を聞いたところ、テント生活ではあるが、食料、医療は無料で、子どもの教育までしてくれるので貯金が増えるからといわれて苦笑したことがあった。
しかし、ロヒンギャ難民が生活するコックスバザールは劣悪の環境で、限られた土地に70万人とも100万人ともいわれる人々が雑然とした環境の中でひしめきあって生活しており、思わず目を背けるほどの情況であった。
丘の上に並ぶ難民キャンプ
このロヒンギャ問題に多くのイスラム系の外交官や指導者が声高に批判し、私のオフィスにも支援要請に10ヶ国以上がおいでになったが、「日本財団の資金には限りがあります。イスラムの国は石油をはじめ地下資源もあり豊かです。是非ロヒンギャ救援のために資金を出してください。私たちも最善の努力をします」と返答すると、二度と訪ねてくる人はいなかった。
現在も冷暖房のある部屋から間欠的にロヒンギャ問題に対して批難声明を出す政治指導者もおられるが、是非、コックスバザールの現場に案内してあげたいものだ。しかし、実際に悲惨な情況を目にしても、相変わらず正義のマイクロフォンで発言するだけかもしれない。既に事件発生より6年も経過しているにもかかわらずです。
バングラデシュは貧しい国家にもかかわらず、十分な対応ではないが、包容力のある態度で受入れてくれている。報道によると、国際社会のロヒンギャ支援金は今年の目標の18%程度まで落ち込んでいるらしい。
ところで現地視察後、ロヒンギャ難民キャンプにおける青年のための職業訓練と子どもの教育支援を行うべくバングラ政府に了解を求めたところ、恒久的な建物は難民の長期滞在を認めることになるから駄目とのことで、写真のような簡易な二階建てでも当初は不可とのことだったが、後に建設用の土地不足から二階建てもOKとなり、様々な困難の中、バングラデシュの社会貢献財団BRACの協力を得て、2020年より3年間の時間を必要としたがこの6月に完成した。
建設した2階建て学習施設
建設した学校の中の様子。
ミャンマーに帰国(帰還)することを前提に
英語科以外は全てビルマ語で授業が行われている
建設した学校内での保護者との意見交換会
事業費2億3千万円、203棟の学習施設に手洗い場、トイレを設置。年間約1万6千人の子どもたちの教育機会を確保できた。
近々、バングラデシュで全国ハンセン病制圧会議が予定されているので難民キャンプも訪問し、抜本的対策の可能性を模索したいと考えている。