「ウクライナ支援と派遣大学生」
―大学生の感じた領土と戦争―
日本財団のウクライナ避難民支援は、当初1,000名と予想して準備を進めてきたが、予想外に希望者が多く、本来の財団の活動費をやりくりして2,000名の受け入れを発表した。
・生活費の支援 60億円(1人100万円/年 ×3年間 ×2,000名)
・航空運賃の支援 3億円(15万円 ×2,000名)
・住環境整備支援 7.5億円(50万円 ×1,500戸)
・受け入れNPO支援 15億円
合計85億5,000万円の予算を計上したが、今年中に2,000名に達する予定である。日本財団が実施したアンケートによると、約25%が定住の意向であり、65%が長期の日本滞在を希望していることが分かった。そのため、これからは避難してきた人の生活就業支援に力点を移す必要性を感じている。日本財団では常に連絡を取り合い、避難民の方々の心配事や悩みに心を配り、安心して生活が送れるように担当職員が懸命に努力している毎日である。
今後、日本は急速な少子化と実労働者の減少、高齢化社会の到来の中で、20〜30年後には外国人の働き手なくしては国家自体が急速に弱体化することは避けられず、外国人の優秀な働き手を求めざるを得ない時代の到来となるでしょう。今回の当財団のウクライナ避難民受け入れの経験を一つのモデルとし、外国人の受け入れと日本社会での活躍の為の制度検討を至急願いたいものである。
ところで、国際感覚と戦争の事態を大学生に知ってもらいたいと、多くの優秀な大学生の中から10倍以上の競争を経て選ばれた101名を、7回にわたりポーランド、ウクライナの国境に派遣してもらった。
以下は産経ニュース、12月11日の記事です。
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戦禍から逃れたウクライナの避難民を支援しようと、5月末からボランティアとして日本の大学生計101人が欧州に派遣された。ロシアの軍事侵攻から間もなく10カ月。戦闘の長期化に伴い、いまも各地では避難生活を送る女性や子供も多い。「日本でもウクライナへの関心が薄れつつあるが、今も混乱の中で困っている人たちが大勢いる」。今秋に活動に参加した大学生は、帰国後も防寒着を送る活動に取り組み、広く支援の必要性を訴えている。

ウクライナ周辺国でのボランティア経験を語る京都大4年の永井風花さん
=京都市左京区
今も避難民が到着10月中旬、ポーランド東部のメディカ。国境沿いの検問所では、ウクライナからのバスが次々と到着していた。パスポート検査(入国審査)を受けるために、車内から姿を見せる避難民の多くが女性や子供、高齢者。疲れや今後の不安からか、常に重苦しい空気が漂っていた。
「侵攻から8カ月たっても慣れ親しんだ土地を離れ避難する人の多さに驚いた」。10月4日から約2週間にわたり、オーストリアとポーランドで活動した京都大4年の永井風花さん(22)は振り返る。深夜でも途切れることなくバスが到着する検問所で、水や食べ物を提供する活動に従事した。
メディカ近くで鉄道の要衝でもある都市、プシェミシルでも駅で誘導や荷物の運搬に当たった。祖国から逃れる人、祖国へ戻る人−とさまざまな理由を抱えるウクライナ人で駅構内は混雑。「大量の荷物を持ち、疲れた様子の人やイライラしている人もいたが、優しく接することで落ち着いてくれた」と語る。
101人の学生を派遣将来的に国際支援に携わりたいとの目標を持つ永井さんは連日報じられるウクライナ情勢に心を痛め、今回の活動を志望。英語の試験や面接など倍率10倍以上の狭き門を突破し参加した。

祖国から逃れる人、祖国へと戻る人など、多くのウクライナ人で混雑するプシェミシルの駅
(日本財団ボランティアセンター提供)

多くのウクライナ人で混雑するプシェミシルの駅
(日本財団ボランティアセンター提供)
同情して暗い表情になるのではなく、前向きになってもらうようにと明るく笑顔で避難民と接することを心掛けたほか、片言だったがウクライナ語も覚えた。
それでも、夜中に避難し、不安そうな表情を浮かべる幼い子供たちや、涙ながらに感謝を伝えてくる人々の姿に胸が痛んだ。「取り乱すような人は見なかったが、心の中でそれぞれのつらさと葛藤していたはず」と思いを寄せる。
2月末の軍事侵攻後、最大1500万人ものウクライナ人が国外に避難。その多くを受け入れた欧州各国ではボランティアらが避難民受け入れに奔走した。
永井さんら日本人学生を派遣した日本財団ボランティアセンター(東京)は、これまで東日本大震災や西日本豪雨などに学生を派遣。今回初めて、ウクライナ周辺国への派遣に踏み切った。5月末から7回にわたり、京大のほか、東京大や立命館大などの学生計101人が参加。活動中は学生の主体性を尊重し、あえて細かい指示を出さなかったという。担当者は「派遣で学んだことを次のステップに生かしてほしい」と期待する。
日本帰国後も支援 戦況は膠着(こうちゃく)状態が続く中、本格的な冬を迎えたウクライナ国内は厳しい冬を迎えている。
永井さんは10月20日の帰国後、ウクライナ国内での避難生活を支援しようと、欧州でともに活動した仲間約20人と学生団体「Student Charity for Ukraine」を設立。メンバーの所属する大学で子供用から大人用までさまざまなサイズのセーターやコートなどの防寒着565着を集め、ウクライナ国内で避難生活をする人々に送った。団体は来年1月上旬に再び防寒着を現地に送る予定で、輸送費としての協力金を募っている。
自分に軍事侵攻を終わらせる力はないが、少しでも誰かの役に立ちたい−。現地で感じた強い思いが、背中を押している。
(太田優)