「安倍元総理の死」
―世界から弔意のメッセージ―
安倍晋三元総理大臣の国葬が9月27日、日本武道館で行われることが決定されました。
7月10日の日曜日の午後、私は弔問のため、はじめて安倍元総理の自宅を訪れました。世界のリーダーには珍しくマンションにお住まいで、多分、世界のリーダーの中で最も質素な生活をなさっていたのではと拝察しました。安倍元総理は布団の上にごく自然な形で横たわっておられ、苦しみに耐えた苦悶の表情ではなく、全てを超越した安らかな美しいお顔で、仏さまが静かに眠っておられるようなお姿でした。
枕頭に座して暫く頭(こうべ)を垂れ、お別れの合掌をさせて戴きました。「美しい国」日本を愛し、毅然と政治信念を語り、時に親しみのある笑顔を見せられました。内政、外交に大きな成果を挙げられたつい先日までのお元気な姿を想い起し、残念、無念、悲しみ、憤り・・・さまざまな想いが去来しました。
地球儀を俯瞰(ふかん)する外交で世界に知られ、存在感の大きかった安倍元総理の死は、日本のみならず世界が偉大なリーダーを失ったことになります。250を超える国や地域、国際機関からの弔意からも、その功績は理解できます。
以下は7月10日のNHKニュースから拝借致しました。
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安倍元総理大臣は8日に奈良市で参議院選挙の応援演説をしていたさなかに銃で撃たれて亡くなり、9日午後、東京 渋谷区の自宅に無言の帰宅をしました。
10日も午前中から多くの弔問客が訪れていて、自民党の茂木幹事長や麻生副総裁、公明党の山口代表ら両党の幹部が死を悼みました。
また、日本財団の笹川会長や経団連の榊原名誉会長など生前安倍氏と親交のあった関係者も訪れていました。
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以下はインドを代表するシンクタンクが開催した安倍元総理の追悼式典へ寄せた私のメッセージです。
2022年7月22日
笹川陽平 日本財団会長
於:ビデオ・メッセージ
アナンタ・アスペン・センターの皆さま、志半ばで凶弾に倒れた安倍晋三元総理の追悼式典を開催下さり、心より感謝と御礼を申し上げます。早速、安倍昭恵元総理令夫人にお伝え致します。安倍元総理は国際的にも高い評価を受けていた日本を代表する偉大な政治家でありました。250を超える国や地域、国際機関のリーダーから弔意のメッセージが届いていることからも、安倍元総理を失ったことは世界的にも大きな損失でありました。
特に外交面においては、安全保障を通じた国際社会の安定と繁栄を目指し「自由で開かれたインド太平洋」構想を打ち出しました。この政策にはインド、アメリカをはじめ、多くの国々の賛同があり、これから具体的な取り組みを推し進めていこうとした矢先に、図らずも落命された安倍元総理の無念さは察して余りあるものがあります。
日印関係について申し上げれば、インド政府が国として喪に服したこと、そしてモディ首相からの弔意は日本でも大きく報道されました。モディ首相と安倍元総理の親密な関係こそが貿易や安全保障を含め両国の友好関係をさらに発展させたことは皆さんご承知の通りです。安倍元総理のもとには、数多くの国々の首脳が訪問されましたが、富士山麓にある彼の簡素な別荘に招待されたのはモディ首相だけであります。このことからも、両名の親密さ、そして日本がいかにインドを大切な友好国として考えているかはお分かりいただけると思います。
我々は安倍元総理の遺志を引継ぎ、日印関係の更なる発展、並びに地域の安定と繁栄そして平和の為に努力して参りましょう。それこそが、安倍元総理の御霊への何よりの供養となるのではないでしょうか。