「世界最大デザイン賞」受賞
―日本財団の公共トイレ―
世界三大デザイン賞は、1953年にドイツで設立された。
「iF DESIGN」とドイツの「Red Dot Award」、それに「International Design Excellence Awards」のことだそうだ。
この度、日本財団の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環として、佐藤カズークリエーターの渋谷7号通り公園トイレが、音声認識技術を採用してドアの開閉から便器の操作だけでなく、音声で音楽をかけることもでき、クリーンで楽しい時間を楽しめる場所となっており、「iF DESIGN」の審査委員会は「世界的な新型コロナの流行により、人々は非接触型を求めるようになった。このトイレのデザインは美観、アクセビリティ、衛生のバランスを保ちながら、洗練された使いやすさを実現した」ト評価している。
(この稿は主に知財ニュースを参考にしました)
佐藤カズ一氏が受賞した作品
※以下は建設総合ポータルサイトに掲載された記事です。
1. THE TOKYO TOILETとは「THE TOKYO TOILET」は,渋谷区内17カ所のトイレを,性別,年齢,障害を問わず,誰もが快適に利用できる公共トイレに生まれ変わらせ,多様性を受け入れる社会の実現を目指す,日本財団のプロジェクトです。
建築家の安藤忠雄氏,伊東豊雄氏,坂茂氏,槇文彦氏に加えて,佐藤可士和氏,NIGO

氏らデザイナーなど16人のクリエイターに参画いただき,優れたデザイン・クリエイティブの力で,インクルーシブな社会のあり方を広く提案・発信していきます。
また,訪れた人々に気持ちよく利用していただけるよう,従来に比べ清掃をはじめとしたトイレの維持管理を強化します。
2.「おもてなし」の象徴としてのトイレトイレは,日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴。
しかし,多くの公共トイレは,4Kと呼ばれる「暗い,汚い,臭い,怖い」のイメージに加えて,障害がある,お子様連れであるなど,それぞれの事情から,利用者が限られている状態になっています。
本プロジェクトでは,今までの公共トイレのイメージを刷新し,性別,年齢,障害を問わず,誰もが快適に利用できるように改修しています。
トイレはそれぞれ個性豊かなデザインで,共通して,ウォシュレットの完備,車いすでの利用,オストメイト用の設備,性別を問わないユニバーサルトイレを設置しています。
また公共トイレは,長く使い続けていただくものです。
ハード面だけでなく,清掃をはじめとしたトイレの維持管理を強化しています。
これにより,訪れた人々に気持ちよくトイレを利用していただき,さらに利用者が次の人のためを思う「おもてなし」の心の醸成も目指していきます。
3.竣工済みトイレ一覧2021年8月時点で,12カ所の公共トイレが竣工し,一般利用を開始しています。
それぞれのトイレは,各クリエイターに利用者層や周辺環境なども考慮してデザインしていただきました。
例えば,安藤忠雄氏のデザインした「神宮通公園トイレ」には,「雨が降ったら,庇の下に逃げ込める,雨やどりができるトイレ」として,トイレの本来の機能だけでなく,困ったときに駆け込めるみんなの場所になるように,という想いが込められています。
夜間の公園の暗さに不安を覚える人の多かった「西原一丁目公園トイレ」では,坂倉竹之助氏が,「行燈(あんどん)」をテーマに,公園内を優しく照らすトイレをデザインし,地元の住民にも喜ばれています。
坂茂氏は,公共トイレを利用する際の2つの不安「中に誰もいないか,中がきれいかどうか」を確認できるよう,透明なトイレを提案(代々木深町小公園・はるのおがわコミュニティパークトイレ)。
鍵を締めると透明な壁面が不透明になる仕組みで大きな話題になりました。
4.維持管理と今後についてTHE TOKYO TOILETでは,トイレを毎日清潔な状態に維持し続けるため,メンテナンスの維持・強化に取り組んでいます。
渋谷区では従来,1日1回の清掃(利用頻度の高い場所は1日2回)を実施していましたが,現在は原則1日3回の乾式清掃(利用頻度の少ない場所は2回),また月1回の湿式清掃,年1回の特別清掃(外壁,屋根清掃等)を行っています。
清掃のほかには,専門的・科学的な見地からアドバイスを受けるため,第三者チェック機関として,トイレ診断士のチェックを月1回,特別診断を年1回取り入れています。
清掃・診断報告書には,設備点検や清掃状況の報告と併せてトイレの利用状況や快適状況を点数付けし,日ごと,月ごとの変化を記録し,分析を行っています。
その追跡可能なデータにより,日本財団,渋谷区,一般財団法人渋谷区観光協会の三者で月に1度開催している維持管理協議会で課題分析,改善施策の効果をより厳密に議論できるようになりました。
今後も利用状況を鑑みながら,清掃回数を減らすなど費用削減に努め,同時に利用者が次の利用者のことを思う「おもてなし」の心を醸成するため,さまざまなイベントを企画し,公共トイレにおける維持管理方法の最適化を図っていきます。
また,清掃員の方が誇りを持って,モチベーションを高く保ち,仕事に取り組んでいただけるように,ファッションデザイナーのNIGO氏にユニフォームの監修を依頼しました。
素材や通気性など機能面にもこだわっています。
そのユニフォームを着用し清掃していると,お礼を言われることや,夏の暑い日に差し入れをいただくなど,清掃員の方のモチベーション向上にもつながっていると考えています。
ユニフォームを着用しての清掃の様子
5.最後にTHE TOKYO TOILETプロジェクトでは,公共トイレから渋谷を,そして,東京,日本をもっと魅力的な場所にしたいと考えています。
日本のトイレは海外から見ると,美しいとされていますが,残念ながら多くの公共トイレはそうではありません。
できれば入りたくない公共トイレを,行きたくなったら利用してみたいトイレにするべく,クリエイターがそれぞれ公共トイレに対する課題や考えを巡らせ,さまざまなコンセプトでデザインしていだたきました(各トイレの詳細やコンセプトにつきましては,THE TOKYO TOILETホームページ(※注)をご覧ください)。
このプロジェクトの最終目標は,機能性やデザイン性に優れたトイレを設置することではありません。
これらの公共トイレが5年後,10年後も誰もが気持ちよく安心して利用できるトイレの状態を維持していくことです。
プロジェクト公表後,「THE TOKYO TOILET」モデルを参考にしたいなど,国内外から多くの問合せをいただいています。
今後,全国にTHE TOKYO TOILETのような公共トイレが設置されることによって,多様性を受け入れる社会となること,そして一人ひとりが,次の人のことを思ってトイレを利用する「おもてなし」の心を持つことにより,公共トイレがいつまでも綺麗で快適な場所となることを願っています。