「エコノミストと日本財団提携」
―海洋問題の解決へ向けて―
以下は3月3日、世界に発信したエコノミストと日本財団の海洋問題に関する提携のプレスリリースです。また、3月1日に行われた世界海洋サミットでの筆者の短いコメントも合わせて掲載しました。
世界からの参加登録者数は7556人で、活発な議論が展開され、海洋問題の重要性が広く世界に認識され始めたことを実感すると共に、日本財団への期待の大きさに、新めて責任の重大さを認識させられた国際会議となりました。
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ザ・エコノミスト・グループと日本財団は、2021年3月3日、第8回ワールド・オーシャン・サミットにおいて、新たなイニシアチブ「Back to Blue(バック・トゥ・ブルー)」の創設を発表しました。
Back to Blueでは、まずは海洋生物や生態系、ひいては人間の健康にも被害を及ぼしている海洋プラスチック、化学汚染といった目に見えない海洋汚染に焦点を当て、2024年までの3年間、深刻化する海洋課題に共同で取り組みます。Back to Blueが行った世界海洋アンケート調査でも、世界の二大関心事はプラスチック汚染(回答者の59.6%)と化学物質汚染(39.1%)、次いで気候変動(31.1%)であることが明らかとなり、これら調査を参考にしながら、現在具体的な実施策を構築しています。
ザ・エコノミスト・グループは「ワールド・オーシャン・イニシアチブ」および「ワールド・オーシャン・サミット」の開催を通じ海洋が直面する最大の課題について、数多くの世界規模のディスカッションをけん引してきました。日本財団は、海洋専門家の人材育成とネットワーク構築、分野横断的な研究支援など幅広いプログラムを通じ、海洋科学と海洋環境の保全の分野で世界をリードしてきました。このように異なる角度から世界の海のために取り組んできた二つの組織が「エビデンスを軸にした海洋課題の解決」を基盤に、健全な海洋環境に向けた勢いを促進させるためのプラットフォーム「Back to Blue」を立ち上げたのです。
ワールド・オーシャン・サミットにて開催されたBack to Blue創設式にて日本財団会長、笹川陽平は次のように警告しました。「私たちは身近に起きる陸上の問題については良く理解しています(中略)しかし、地球表面の70%を占める海洋が抱える多面的な問題となると、その理解は十分に進んでいないように思います。これは国境を越えた全人類の安全保障の問題なのです。」
ザ・エコノミスト・グループの会長デイトン卿も呼応し、次のように述べました。「ザ・エコノミスト・グループも海への情熱を育んできました。2012 年に初めてワールド・オーシャン・サミットを開催しましたが、それ以前にも、海が抱える問題、人間の活動が海洋環境に深刻な影響を与えていることなどを誌面で論じてきました。それから10年ほど経った今、私たちはこれまで以上に、健全な海洋環境と力強い経済が伴う海洋というヴィジョンに取り組んでいく所存です。この広大な海が存続できなくなるといった選択肢は存在しないのです。」
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以下、筆者の世界海洋サミットでの短いコメントです。
デイトン卿、World Ocean Summit Virtual Weekにご参加の皆さま、こんにちは。
地球の七割をしめる「母なる海」は、現在静かな悲鳴をあげています。
私にはその悲鳴がいかに深刻であるか理解できます。
本イベントにご参加の皆さまにも、この悲鳴は聞こえているでしょう。
陸上で起こる様々な問題については、多くの人が情報得て、問題点も理解し、解決に向かって突き進んでいます。しかし、地球の七割をしめる海の諸問題に対しては、人々の理解は進んでいないように思います。これは国境を超えた全人類の安全保障の問題ではないでしょうか。
私は今のままでは、はたしてこれから人類が500年、1000年先の未来に生存できているのか、大変心配しております。
私は30年前から、海洋の持続的な環境保全なくしては人類の生存はありえない、と考え様々な取組を行ってきました。その取り組みは、150ヶ国から1,500名以上の海の専門人材の育成、世界最大級といえる海洋研究機関・海洋科学者のネットワークの構築、海ゴミや海洋資源管理に関する取り組み、法の遵守に基づく海洋秩序の確保に向けた連携、など多岐にわたります。
このたびは、このように長年海に携わってきた日本財団が、世界的なネットワークと独自の視点・分析を有するエコノミストと連携することになりました。エコノミストと日本財団は昨年7月に海洋の諸問題を議論するウェビナー「ブルー・リカバリー・シリーズ」を開催いたしました。そしてこの度、“Back to Blue Initiative”を共に立ち上げることを大変うれしく思います。私たちが協働することで、持続可能な海の実現に向けて確実によい変化を興せると確信しています。
今こそ人類の未来の為に海洋の諸問題を共に考え行動していこうではありませんか。そして今こそ共に、碧き海を取り戻し、千年先の未来へ引き継いでいきましょう。