「新聞報道から」その76
―たばこ喫煙問題 喫煙は議員の特権か―
9月19日付北海道新聞は、北海道道議員の新庁舎内での喫煙が大問題になっていると報じている。
又、改正健康増進法で屋内禁煙が定められたが、これには抜け道があり、立法機関である国会議員や地方議員はその敷地内では禁煙ではないと、西日本新聞の論説副委員長はその矛盾を指摘している。
地方の県庁の内には議会が同居しているケースも多く、行政府の職員のフロアーは禁煙で議会のフロアーはOKということなのだろうか。
ただ、喫煙場所を設置する必要があると主張する国家議員の中には、多くの喫煙者がいることは以前指摘したことがある。
これは庶民感覚と異なる議員の特権?の一つかもしれない。
以下は西日本新聞論説副委員長・久保田正広氏の記事です。
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喫煙は議員の特権か?
新聞のベタ記事。紙面の隅っこに1段で載る短い記事だが、新聞社や編集者のこだわりが反映される場合もある。他紙を読み、本紙も掲載したかったと思うネタも。最近では9月1日付朝刊の「議員会館での喫煙陳謝」がそう。
本紙は使わなかった共同通信の配信記事によれば、立憲民主党(当時は合流前)の枝野幸男代表が記者会見で、受動喫煙対策として禁止されている衆院議員会館の自室内で喫煙していたことを明かし、その上で「認識が甘かった」と述べたという。
改正健康増進法が4月に全面施行され、屋内は広く禁煙に。議員会館は各階の喫煙室以外は喫煙できない。
配信記事には見逃せない記述があった。枝野氏の「恐らくそういう議員が多いので、党内に(禁煙を)周知したい」との発言。どうやら枝野氏個人の不始末ではないのだ。これを受け、受動喫煙防止に取り組む超党派の議員連盟が衆参両院議長に実態調査を求める事態になっている。
たばこ問題に熱心な国会議員によると、健康増進法の改正の際、喫煙派の一部国会議員の圧力で「国会や地方議会といった立法機関を行政機関と同じように敷地内禁煙にできなかった」。ここに、そもそもの問題があるという。
国会議員の議員会館での喫煙を調べた北海道新聞の8月の記事には、とんでもない証言が載っている。
会館の自室には大っぴらに灰皿を置けないため空き缶で代用したり、「臭わないから」と加熱式たばこを吸ったりする議員もいる、とか。議員の秘書らが受動喫煙の被害を受けており、ある秘書の「目の前で堂々と吸われると注意もできない」という憤りの声も紹介している。
法律というルールを定める議員が、ルールを守れないどころか、それを特権化している。これは許し難い。喫煙派の読者の皆さんにも賛同いただけるのではなかろうか。
両院議長には速やかに対応してほしいが、禁煙対策の推進に強く反対する議員は与野党にまたがる。とりわけ与党が長い自民党には、たばこ関連業界から政治献金を受けている議員も多いという。
そこで、思わぬ形で政界のたばこ問題をあぶり出してくれた枝野氏に提案である。
財務省が所管し、たばこ産業の発展と国の財源確保を目指すという、世界でも珍しいたばこ事業法の廃止だ。その上で厚生労働省所管の「たばこ規制法」を制定し、喫煙の害から国民の健康を守る方向に国策を転換する。自民党には無理な公約と思うが、どうだろう。(論説副委員長)
※2020年10月2日付「西日本新聞」です。