「若手日系人中心に初の世界的規模調査」
―74%に強い日系人意識―
日本人の海外移民は明治元年(1868年)に153人がハワイへ集団移住したのが始まりといわれる。以後、約1世紀半、海外日系人協会によると、海外で暮らす日系人は1世から7世、8世まで約380万人(2017年現在)に上る。世代を重ねれば日系人としての意識も薄まるのではないかー。そんな思いで、世界各国でオンラインアンケートなどを進めた結果、18〜35歳の若手日系人では74%が日系人としての意識、「頑張る」、「尊敬」、「感謝」といった日本的価値観を強く持っていることが分った。
調査は全米日系人博物館(ロサンゼルス)と共同で実施。日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語を使ったオンラインアンケートのほか、北米、南米など11カ国計12都市でグループディスカッションを行い、最終的に36カ国約3800人から回答を得た。内訳は18〜35歳の若手日系人が69%の約2620人、36〜50歳が16%約610人、51〜65歳が9%約340人、66歳以上が6%約230人。
まず「日系人としてのアイデンティティーを感じている程度」。若手日系人の74%は「強い」と回答、残りは「平均的」が19%、「低い」が7%。アジアや南米では「強い」が80%を超えている。重要な価値観は「頑張る」が80%超でトップ。以下「尊敬」、「感謝」、「もったいない」、「正直」が続き、日本的価値観を持つことに誇りを持ち、地元コミュニティーだけでなく次世代にも継承したい、との声も出ている。
「日本とのつながり」に関しては、若手日系人の48%が「強い」と回答、66才以上の41%を上回り、アジアでは母国とのつながりと同数の73%が強いつながりを感じている。東京五輪・パラリンピックに関しても69%が「とても誇りに思う」と答え、ここでもアジア地域は81%の高い数字となっている。
自身が所属する国や市町村の日系コミュニティーとの関係では、若手日本人の46%が強いつながりを感じる一方、58%は「将来が心配」と回答、66歳以上の68%よりは低いものの、アジアや南米地域では将来を不安視する声が75〜74%に達している。
このほか日本語能力は、若手が「少し」、「多少」、「流暢に」を合せ64%。年配層の70%よりやや低いものの73%が日本語学習に強い意欲を持ち、国を越えた日系人とのつながりを求める声も90%に上っている。
日本財団では1970年代から日系人の支援事業に幅広く取り組んできた。厳しい環境の中で「今」を切り拓いてきた日系人を少しでもサポートするのは当然で、彼らが住む母国との2国間関係を発展させる上でも重要との考えだ。世界規模で初めて実施した今回の調査では多くの「新たな発見」もあった。
移民の形も時代とともに変わり、グローバル化が進む近年は新たな環境を求め家族単位で海外に移住する新日系人も増えつつある。調査結果を踏まえ、世界の日系コミュニティーをつなぐオンライン・プラットフォームの構築など、新たな取り組みを進めて行きたく考えている。