海洋教育強化 今こそ必要
2017年7月14日
読売新聞【論点】
海洋基本法が制定されて10年が過ぎた。「海洋に関する国民の理解の増進」をうたう基本法の趣旨とは裏腹に、近年、次代を担う若者の海に対する関心が希薄になっている気がする。
日本財団が17日の「海の日」を前に行ったインターネット調査(有効回答数1万1600)でも、「海にとても親しみを感じる」との項目に対し、40歳代以上は肯定的回答が多数を占めたが、10〜30歳代は逆に否定的回答が上回り、若者の海離れをうかがわせる結果となった。
海は今、酸性化・温暖化や漁業資源の枯渇、プラスチックごみによる環境悪化が急速に進んでいる。海に守られ発展してきた日本は今こそ、先頭に立って海を守る責任がある。
そのためには、若者に対し、領土・領海や海洋資源に対する国の主権などへの理解を深める海洋教育の強化が欠かせない。5年前、全国の小中学校を対象に東京大学と日本財団などが行ったアンケート調査では、課外活動などで海洋教育に前向きに取り組む学校は20%にとどまったものの、80%を超す学校が「海洋教育は重要」と答え、海洋に関する教科書の記述を「十分」とする回答は5%にとどまった。
文部科学省が今年3月に告示した小中学校の次期学習指導要領では、領土・領海に関する記述の充実が盛り込まれた半面、海洋教育の強化については不十分だった。中央教育審議会の審議では、海洋教育の充実を図る必要性が指摘されている。複雑・多様な海の問題を児童・生徒が理解するには、やはり海洋教育の強化が大切だ。
安倍首相は昨年の海の日の国民向けメッセージで、「2025年までに全ての市町村で海洋教育が実践されることを目指す」と述べた。学習指導要領の改定を受け、来年春にまとまる第3期海洋基本計画では、海洋教育強化の具体策をぜひ示してほしい。
海の日に関しても一言。1995年、国民の祝日に定められて以来、2002年まで7月20日に固定された。しかし翌年から、ハッピーマンデー制度で7月の第3月曜日になった。
連休を増やすのが狙いだったが、直後に学校の夏休みを控える時期でもあり、さほどの意味があるとは思えない。国民の祝日となった「山の日」は8月11日に固定された。ともに海、山の「恩恵に感謝する」祝日の趣旨に照らしても、海の日を固定しないのはバランスを欠く。海洋国家日本の象徴である海の日が、早急に当初の7月20日に固定されるよう望む。
海の危機に関しては、国連が6月に初の海洋会議を開催するなど、国際社会の関心も高まっている。海洋問題は、日本外交が存在感を発揮できる格好の分野でもある。国民の関心が高まれば、わが国周辺海域に豊富に存在する天然ガスの一種「メタンハイドレート」の活用など、フロンティア(未開拓の新分野)の可能性も広がる。官民挙げて海洋国家にふさわしい海洋教育強化が前向きに検討されるよう、改めて訴えたい。