「受動喫煙防止法」その1
―反対が多い自民党重鎮―
受動喫煙の防止に向けて厚生労働省が進めている法律整備が、自民党などの反対で壁に突き当たっている。受動喫煙に関しては2014年時点で49カ国が病院や飲食店などを「屋内全面禁煙」とするなど世界的な対策が進んでいるのに対し、わが国は2003年施行の健康増進法が施設管理者に受動喫煙対策を課しているものの、あくまで努力義務に留まり、WHO(世界保健機関)から「世界最低レベル」との指摘を受けている。
WHOなどによると、受動喫煙により世界では年間60万人、日本では1万5000人が死亡しているとされ、IOC(国際オリンピック委員会)もWHOと共同で「たばこのないオリンピック」を推進しており、日本は2020年の東京五輪・パラリンピックの招致に成功した時点で、受動喫煙対策の徹底を国際的に公約したことになる。
このため厚労省では、小中学校や医療機関を最も厳しい「敷地内禁煙」、福祉施設や官公庁を「屋内禁煙」、飲食店やホテルに関しては「原則建物内禁煙」とし煙が外に出るのを防ぐ喫煙室の設置を認め、悪質な違反に関しては罰金を課す方向で健康増進法の改正作業を進めてきた。
これに対し自民党の「たばこ議員連盟」(会長:野田毅前党税制調査会長)は、3月7日に臨時総会を開き、「たばこは禁止薬物ではなく、合法的な嗜好品だ」、「小さな店で喫煙室を設けるのは不可能で、廃業に追い込まれる」などとして、ほとんどの施設で喫煙専用室の設置を認める「分煙案」を打ち出し、屋内禁煙を柱とする厚労省案と対立したまま法案提出の目途は立っていない。
「たばこ議員連盟」には自民党の衆参両院議員280人が名を連ねる。たばこ関連の国会議員の集まりとしては「東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟」(会長:尾辻秀久元厚生労働相)、自民党の「受動喫煙防止議員連盟」(会長:山東昭子元参院副議長)があるが、たばこ議連の圧倒的な数の前に、多勢に無勢で勝負にならない。
当の国会は今、衆参両院の予算委員会とも森友学園問題一色である。予算委員会は本来、内閣が提出した予算案を審議するする場だが、実際は国民の暮らしに関連する全てのテーマが審議の対象となり、本会議に次ぐ花形委員会としてNHKの中継もある。
森友問題の不可解な経過からも、国会でも真相が解明される必要があるが、国民の生活を左右する来年度予算案の審議がおろそかにされてはならない。同時に受動喫煙問題は国民の健康に直接、関係するテーマであり、受動喫煙防止に向けた法の整備は急務である。
新聞各社の社説も、以下の見出しのように飲食店など小規模店舗の扱いに多少の温度差があるものの受動喫煙の防止を強化する点で、ほぼ足並みが揃っている。
2016年10月16日 朝日「受動喫煙防止 屋内全面禁煙をもっと」
2016年10月23日 読売「国際水準の対策を目指そう」
2017年2月20日 朝日「受動喫煙防止 命を守る視点を第一に」
2017年2月22日 毎日「受動喫煙、屋内全面禁止を原則に」
2017年3月6日 産経「厳格な分煙に歩みを進めよ」
少し古いが、ここに2014年2月20日現在の自民党たばこ議員連盟の名簿がある。法案に反対する“喫煙派”の中核組織でもあるようで、名簿を見る限り、そうそうたる顔触れである。名前が記載されいるものの、内心は絶対反対ではない先生方もおられると思うが、以下、あえて主な先生方のお名前を記載させていただく。減私奉公、国家・国民のために議案提出に協力していただきたく考える。
自由民主党たばこ議院連盟役員名簿
(2014年2月20日現在)
会長 野田 毅 熊本2区 当選15回
顧問 麻生 太郎 福岡8区 当選12回
高村 正彦 山口1区 当選12回
谷垣 禎一 京都5区 当選12回
伊吹 文明 京都1区 当選11回
大島 理森 青森3区 当選11回
額賀 福志郎 茨城2区 当選11回
副会長 石破 茂 鳥取1区 当選10回
石原 伸晃 東京8区 当選9回
山口 俊一 徳島2区 当選9回
岸田 文雄 広島1区 当選8回
塩谷 立 静岡8区 当選8回
高市 早苗 奈良2区 当選7回
幹事長 山田 俊男 参議院比例 当選2回
幹事長代理 金子 恭之 熊本5区 当選6回
長島 忠美 新潟5区 当選4回
幹事 竹下 亘 島根2区 当選6回
谷 公一 兵庫5区 当選5回
大塚 高司 大阪3区 当選3回
塚田 一郎 参議院新潟 当選2回
中川 雅治 参議院東京 当選3回
事務局長 坂本 哲志 熊本3区 当選5回