「ちょっといい話」その74
―防災対策―
阪神淡路大震災(1995年)発生から22年目に当たる1月17日の新聞、テレビは、その後の東日本大震災、熊本地震の教訓を含め、防災の在り方を中心に様々な報道をした。
日本は世界に冠たる災害大国である。専門家によると、ロンドンやパリ、ニューヨークは地盤が安定した大岩盤の上にあり、まず地震の心配はないという。これに対し日本は狭い国土に地震を引き起こすプレートが4本もひしめき合い、しばしば大地震に見舞われてきた。
縦長の狭い国土は山から海岸までの距離が極端に短く、台風の通り道にも当たる。台風期や梅雨期に豪雨が集中し、河川の氾濫や土砂崩れも頻繁に起こる。戦前までは木造建築も多く、しばしば大火災も発生した。文字通り世界一の災害大国であり、日本人にとって治山治水を含めた防災対策は太古から最重要課題の一つであった。
「災害は忘れた頃にやってくる」。先人の苦い経験から出たこの言葉は、現代に生きる我々も心しなければならない教訓である。
前置きが長くなったが、東日本大震災の発生時、孤立している高齢者や障害者ら災害弱者といわれる方々の支援に向けて、各自治体に情報提供を依頼したことがある。驚いたことに個人情報保護法に抵触するとして断ってきた自治体もいくつかあった。人の命にかかわる緊急時なのに法律を優先するというのである。驚きである。
災害対策基本法は、市町村に災害弱者の名簿作成を義務付け、名簿を外部に事前提供する場合は、本人の同意を得るか、事前にそれを可能にする条例を制定するよう市町村に求めている。
1月17日付の世界日報によると、兵庫県はこれを受け県条例の一部を改正する「ひょうご防災減災推進条例案」を県議会に提出するという。県条例を改正することで、県内市町村にも、災害発生時に自力避難が難しい高齢者ら災害弱者の名簿を事前に地域の自治会などに提供できるよう条例の制定や改正を促すのが狙いのようだ。
現実に災害が発生すれば被災地は大混乱に陥る。災害対策基本法にあるように、災害が発生してから本人の同意を取るのは非現実的であり、それでは迅速な救助や支援はできない。条例制定は確かに半歩前進だが、私に言わせれば、災害対策基本法を改正して、緊急時における個人情報保護法との関係をはっきりさせておくのが最も現実的と思う。
具体案は専門家の検討に委ねるとして、緊急時には災害対策を個人情報の保護に優先することができる、といった趣旨を明記すれば、首長も全体状況を判断して臨機応変に対応することが可能となる。大型災害が相次いでおり、現場の実態を踏まえ、より現実に合った法整備を進めていただきたい。ひとたび災害が発生すれば、現場の先頭に立つのは市町村の首長である。首長が少しでも動き易いよう関係法を整備することが、首長の負担を軽くし、災害対策の強化にもつながる。
その意味で世界日報のニュースは、多くの災害報道の中でも秀逸であった。他のメディアにも、もっと大きな全国ニュースとして取り上げてほしかった気がする。