「日本財団DOALOS奨学生総会」
―50ヶ国参加―
日本財団は創設以来、人類をはじめ、生きとし生きる全ての生物は母なる海より誕生したもので、この海の活用・保全に重大な関心を持ち続けてきた。
北極海航路の開発、超伝導船、メガフロートの開発等々、さまざまな活動を行ってきたが、日本の生命線といわれるマラッカ・シンガポール海峡の安全航行のために尽力して40年以上が経過した。
その中で、とかく国際的には無理解であった海洋に関する様々な人材養成事業は、日本財団の独壇場といっても過言ではない。
特に海野光行が計画した国連の海洋法課(DOALOS)へ、途上国の人材養成のために派遣した日本財団DOALOS奨学生の評価は高く、既に各国の高級官僚として国際社会の第一線で活躍している人材も多い。この度、50ヶ国から80名の同窓生が東京に集結。初めての同窓会を開催した。
下記のスピーチに私の海に対する思いが込められていますので、是非、ご笑読下さい。
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日本財団DOALOS奨学金プログラム同窓会
(原文・英語)
2014年11月28日
於:日本財団
これまで何世紀にもわたって、私たちは無邪気にも世界の海は無限であると信じてきました。人間活動の急速な拡大と発展はまさに今日まで海の恵みを好きなだけ利用することができてきたからこそ成し遂げられました。
しかし、世界人口が70億人を超えた今、人間活動が地球に与える影響の大きさは過去に類を見ない規模となり、もはや、海が元々持っている強大な回復力をもってしても吸収することが限界に達しつつあります。人類が海を使い切ってしまうという事態も現実味を帯びてきております。
気候変動、海洋の酸性化あるいは海洋汚染。これらは今すぐにでも対処せねばならない海洋をめぐる地球規模の問題のごく一部です。
私たちの海洋への過剰な依存がこのまま続けば、私たちの子供や孫の時代には海は現在のように豊かな状態ではなくなっているでしょう。一度荒れてしまった海を再び豊かな状態に戻すには長い年月がかかり、場合によっては二度と戻らないかもしれません。
人類は、今すぐ海洋をめぐる様々な問題の解決に全力を尽くさねばなりません。しかし、一つ一つの問題が複雑で、また問題同士が絡み合ってしまっているなか、一つの国、一つの機関、一つの分野だけの努力によって解決できることには限りがあります。
日本財団は、海洋の問題に効果的に取り組むためには、人類が海洋に対して負っている共有の責任を受け入れることと、人類は皆相互に結びついており、ひとりひとりが課題解決の礎であるということを認識することが大切であると考えています。次世代に海を持続可能な形で引き継ぐためには、今日、私たちの世代が、未来への責任を引き受けるとともに、これまでの取り組みからの教訓を活かさねばならないでしょう。
私たちは、国、機関そして分野を超えた連携を加速させるため、世界的かつ分野横断的なビジョンをもって、既存の枠組みを超えた包括的なネットワークを構築することができる人材を育成することが重要であると考えています。
日本財団の人材育成プログラムの第一の目的は、人々の意識と行動を変えるためにリーダーシップを発揮することができる次世代の海のプロフェッショナルを生み出し、育成することです。それと並行し、海洋の問題に従事する人たちが、それぞれの立場を超えて協力・協働するためのネットワークを作ることを第二の目的としております。これまで、約130ヶ国の1,000人以上の様々な分野の海洋の専門家を育成しネットワークを構築してきましたが、このようなネットワークにおいて生み出されるアイデアが、政策と科学的知見とを結び付け、その結果、豊かで持続可能な海洋のための真に効果的な国際的枠組みや規則につながっていくことを望んでいます。
フェローの皆様、私たちは、あなたがたこそがこうしたネットワークや解決策を生み出す能力をもった人材であると考えています。私たちがあなたがたに期待していることが何であるか、常に頭の片隅に置き、今後も世界の海のために精力的に働いて頂ければと思います。
全員で記念撮影
本総会の機会を存分に活用し、皆様がネットワークを強化して、具体的な協力・協働の第一歩として下さい。例えば、今回お呼びしている先生方、あるいは他のフェローと活発に議論をし、その成果を国連事務総長への提言としてまとめることもできるかもしれません。日本財団は、今回の総会が、世界の海のための様々な活動の第一歩となることを望んでおりますし、また、皆様とこれから共に活動していくことを楽しみにしております。