「インドのハンセン病差別法」
2003年、私は初めてジュネーブの国連人権理事会(当時は委員会)を訪ね、ハンセン病のスティグマや差別撤廃を訴えた。2010年12月にはニューヨークの国連総会で「ハンセン病患者、回復者及びその家族に対する差別撤廃」の決議案が加盟国192ヶ国(2010年12月時点)全ての賛成で「原則とガイドライン」と共に決議されたことはすでに報告した通りである。
ただこの決議案に拘束力はなく、このまま放置すれば忘れ去られてしまう恐れがあるが、私のハンセン病とその差別への闘いにとって有力な道具となるものではある。
私はこの決議案を世界の人々に理解してもらうために啓発活動を活発に展開しようと考え、今年1月にはブラジルで、10月にはニューデリーで、世界の人権専門家やハンセン病回復者も含め「ハンセン病と人権国際会議」を開催した。
この会議の中でインドの専門家より、ハンセン病に対する差別法についての説明があった。既に私はこれら法律を撤廃すべく活動中ではあるが、読者の参考までに下記に連記した。なお、この会議はエジプト、エチオピア、スイス(ジュネーブ)と世界五大陸で啓発のための国際会議を継続して開催します。
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インドハンセン病差別法
1. ムスリム結婚・離縁法(1939):配偶者が2年間精神病の場合、またはハンセン病か悪性の性病の場合離婚が保証される。
2. 産業争議法(1947):継続的な病弱を理由に労働者の雇用を停止することができる。
3. オリッサ地方自治体法(1950)及びオリッサ村議会法(1964):選挙の当選者がもし精神異常者かハンセン病患者、結核患者である場合、当選資格は無効となる。議員がもし精神異常者かハンセン病患者、結核患者となった場合、その職を失うものとする。
4. 特別結婚法(1954):もし配偶者が3年以上ハンセン病に罹っていたら離婚が保証される。
5. ヒンズー結婚法(1955):もし配偶者が3年以上無菌性で治癒不可能なハンセン病に罹っていたら離婚が保証される。また、1年以上伝染力のあるハンセン病に罹っていたら法的別居が保証される。
6. ヒンズー養子縁組・扶助法(1956):ヒンズー教徒の妻は、もし夫が伝染力のあるハンセン病に罹っていたら、権利を放棄することなしに夫と別居する権利が与えられる。
7. 生命保険会社法(1956):ハンセン病患者・回復者に対して高額な保険料率の請求を認めている。
8. ラジャスタン地方自治体法(1959)及びラジャスタン村議会法(1994):ハンセン病患者は選挙に立候補する権利がないとしている。
9. インド離婚法(1869):配偶者が感染力のある治癒不可能なハンセン病に過去2年以上罹っている場合、その結婚は解消することができる。
10. インド鉄道法(1989):鉄道当局は伝染性または感染性の病気に罹っている人を乗せることを拒否することができる。(ハンセン病を除外する記載がない)
11. インド・リハビリテーション法(1992)及びマディヤ・プラデシュ村議会法及びアンドラ・プラデシュ村議会法(1993):「障害者」の定義の中で、ハンセン病による障害についてカバーしていない。
12. チャティスガール村議会法(1993):感染症を持つハンセン病患者が村議会議員になることを禁止。
13. 障害者法(1995):「障害」の定義にハンセン病「回復者」を含んでいるが、まだ治癒されていない患者が含まれていない。また「障害」の定義が医療的障害のみを言及し、スティグマによる社会経済的な困難については認めていない。
14. 少年司法(2000):ハンセン病を伝染性で遺伝的にリスクのある病気と分類している。これによりハンセン病に罹った子供が特別照会サービスを通して隔離して扱われる根拠となる。
15. ボンベイ物乞い予防法(1959):物乞い(ハンセン病患者、回復者が多い)が発見された場合、警察によって逮捕され1回目は記録され、2回目は1年以上3年未満の期間、認証施設(拘置及びトレーニングと雇用のための施設)に拘束される。一度施設に拘束されたことのある乞食が再度発見された場合10年間認証施設に拘束される。これは殺人刑の刑期10年に等しい。