「はじめてのハンセン病全国会議」 ―インドネシア― [2026年08月10日(Mon)]
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「はじめてのハンセン病全国会議」 ―インドネシア― 7月8日から三日間、インドネシアで初めてのハンセン病全国会議が開催されました。私の下記のスピーチにもある通り、今年1月、プラボウォ大統領の私邸に招かれた際、ハンセン病全国会議の必要性とその意義を説明した結果、今回の開催に至りました。 インドネシアは広大な国土を有する多島国家であり、保健省だけでは全国各地に十分な指導や管理を行き届かせることは不可能です。そのような中、ブディ保健大臣は、インドネシアで初めて医療関係者ではなく、金融分野の出身者として保健大臣に就任されました。彼のアイディアと行動力は目を見張るものがあり、保健省の予算不足を補うため、自らの足で資金集めに奔走する情熱を持っておられます。 各国保健省のハンセン病の統計を見ると、この約10年間、患者数は横ばいです。患者数が増加すれば政治家からの批判の対象となることもあるからでしょう。しかし、ブディ保健大臣は、患者数が増加することはハンセン病制圧活動が活発に行われている証拠であると考え、患者数が大きく増加した地域には賞金を出すことにされました。 まさに逆転の発想であり、来年度は隠れた患者が発見され、患者数は最低でも現在の3倍になると予想されます。インドネシアからWHOに対して、ハンセン病の特効薬であるMDTの供給要請が現在の3倍に増えれば、インドネシアで何が起こったのかと驚かれることでしょう。 この成果を踏まえ、世界各国のハンセン病制圧活動もインドネシアを参考に、活発化させたいと考えています。また、このブディ保健大臣をサポートするため、今後は2ヶ月に1回、年間最低6回はインドネシアを訪れ、全国各地の島々で積極的に活動し、世界的に停滞するハンセン病制圧活動に活を入れたいと今から楽しみにしているところです。 なお、今回の全国会議には、内務大臣の指導の下、全国の州知事、市長も参加され、決意表明には皆さんが署名されました。 以下は、7月10日のハンセン病全国会議冒頭での私のスピーチです。 ******************* ムハンマド・ティト・カルナヴィアン・内務大臣、プラティクノ人材育成・文化担当調整大臣、・ブディ・グナディ・サディキン保健大臣、ご列席の皆さん。本年1月、大統領のご自宅にお招きいただいた際、私からハンセン病制圧の全国会議の開催をご提案申し上げたところ、大統領はその場で力強く賛同してくださいました。そのご決断に心より敬意を表しますと同時に、大統領の卓越した指導力により、今回インドネシアで初めてとなるハンセン病全国会議が開催されたことを大変嬉しく思います。 私は50年以上にわたり、世界127か国の現場でハンセン病、そしてハンセン病に伴う差別の撤廃に取り組んでまいりました。皆さんご承知の通り、ハンセン病は単なる感染症ではなく、厳しい差別を伴う病気であります。私はしばしばハンセン病との闘いをモーターサイクルに例えます。前輪は病気を治すこと、後輪は差別をなくすことです。この二つがうまく噛み合わなければ、ハンセン病の問題は解決しません。 まず、前輪である病気を治すことについて申し上げます。私はハンセン病を「沈黙の病気」と呼んでいます。初期には熱や痛みなどの症状がほとんどなく、さらに差別への不安から、なかなか患者自ら病院へ行かないという特徴があります。そのため、地域の保健関係者が積極的に各家庭を訪問し、スキンチェックによって患者を見つけることが何より重要です。ハンセン病の治療薬であるMDTはインドネシア全国で無料で提供されており、早期発見・早期治療こそが最も重要です。コロナ以降各国で患者数は着実に増加している一方、積極的な患者発見に踏み切れないなか、隠れた患者も増加しているという状況が続いてきました。誤解を恐れずに申し上げれば、インドネシアはインド、ブラジルに次いで患者数の多い国であり、この3か国で世界の規患の約8割を占めています。しかし、こうした難しい状況の中、インドネシア保健省はブディ大臣の指導により、ハンセン病は今や早期発見・早期治療で治る病気であることから、患者が一時的に増加することは活動が活発な証拠であり、評価すべきものであるという考え方を明確に示されました。この発想の転換は世界のハンセン病対策において極めて革新的で、今後世界のモデルになるでしょう。 しかしながら、先に申し上げた通り、ハンセン病には社会に深く沈殿した厳しい差別が伴っているということも忘れてはなりません。私は2010年に国連総会におけるハンセン病患者、回復者及びその家族に対する差別撤廃決議の全会一致採択にも尽力いたしましたが、残念ながら私の力不足もあり、ハンセン病に対する根強い差別は依然として世界中で残っております。こうした偏見と差別との闘いにおいては、宗教、学校教育、メディアなど様々な分野が力を合わせ、社会全体で正しい知識を広げていくことが必要不可欠です。だからこそ、私は今回の全国会議を高く評価しております。ハンセン病回復者は勿論のこと保健分野だけでなく、多様な関係者が一堂に会し、ハンセン病を国家全体の課題として議論する場となりました。また、広大なインドネシアでは、中央政府だけでなく、州知事や県知事、市長をはじめとする地方のリーダーの協力が不可欠です。その皆さんが全国から集い、この課題を共有されたことは、本会議の大きな成果であり、プラボウォ大統領の卓越した指導力に改めて敬意を表します。 これから、分野を横断したナショナルタスクフォースが発足すると伺っております。是非ともこのタスクフォースが本日の成果を具体的な行動へと結び付けていくことを期待しております。笹川保健財団も、長期的なパートナーとして必要な支援と協力を惜しまないことをお約束いたします。お集まりの皆さん、ハンセン病のない世界の実現は決して見果てぬ夢ではありません。皆さん、共に力を合わせて不可能を可能にして参りましょう。ありがとうございました。 |






