「和平調停センター」 ―記者会見― [2026年04月10日(Fri)]
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「和平調停センター」 ―記者会見― 4月1日(水)午後4時より、笹川平和財団で「和平調停センター」設立の記者会見を行いました。以下は、筆者の挨拶及び質疑応答での説明です。 ******************* 本日はお足元の悪い中お集まりいただき、誠にありがとうございます。本日の記者会見は、和平調停センターの設立についてです。本センターは笹川平和財団の中に設立されます。 なぜ今、この和平調停が必要なのかという点ですが、私は2013年からミャンマー国民和解担当日本政府代表を務めており、これまで13年間で約160回、ジャングルの中に入り活動してきました。20に及ぶ少数民族と政府との対立という非常に複雑な状況の中で、80年近く続く紛争の調停に取り組んできましたが、現状はまだ道半ばにも至っていないというのが実情です。また、私はこれまで世界127カ国を訪問し、海外出張は延べ600回以上にのぼります。こうした経験の中で、世界各地でさまざまな形態の紛争が起きていることは、皆様ご承知の通りです。表向きには各国首脳による会議の場が注目されますが、その裏側では、和平調停の専門家が事前に調整を行っているケースが多く見受けられます。例えば近年では、サウジアラビアとイランの和解について、表面的には中国が仲介したとされていますが、実際にはオマーンが調停を行っています。各国にはこうした調停を専門とする人材が存在しています。 紛争解決において最も単純な方法は武力によるものですが、武力を用いず、あるいは武力が行使されている状況であっても、それを止めて調停することによって、市民の犠牲を最小限に抑えることが可能になります。そのためには、専門的な人材が不可欠です。すでにスイス、ノルウェー、フィンランド、トルコ、オマーン、カタールなどでは、調停を行うことが国家の役割として制度的に組み込まれています。さらに中国においても国際調停機構が設立され、ミャンマーやタイ、カンボジアの紛争に関与し始めています。日本の国際貢献としては、JICAや青年海外協力隊が高く評価されており、国際的にも素晴らしい活動として認められています。しかし、紛争解決の分野においては、情報収集や調停を専門に担う組織がこれまで存在していませんでした。この分野において日本の存在感を示すことは、平和外交において非常に重要です。そのため、笹川平和財団という民間の立場で取り組むことに大きな意義があります。政府レベルでは立場や肩書きにより発言に制約が生じ、形式的な議論になりがちですが、民間であれば率直な意見交換が可能であり、場合によっては相手の生活の深い部分にまで踏み込んで信頼関係を築くこともできます。国際的には調停専門家のネットワークが存在しますが、日本からの参加者は非常に限られており、今回センター長に就任する堀場明子を除けば、ほとんど参加していないのが現状です。堀場は世界各地を飛び回り、この分野で活動してきましたが、日本として組織的に取り組む必要があります。 今回のセンター設立にあたっては、もう一つ重要な点があります。それは地域研究者の活用です。かつて外務省出身でタイ大使を務められた岡崎久彦氏から、「日本は地域研究者をもっと重視すべきであり、彼らが持つ情報や人的ネットワークは極めて重要である」という指摘を受けました。この考えを踏まえ、センターでは地域研究者の方々に年に数回現地に赴いていただき、報告書を提出してもらうことで、各国の詳細な情報収集と分析を行っていきます。こうした情報は現代において極めて重要な資源です。複雑化する国際情勢の中で正確な情報を得るためには、民間ならではの柔軟な手法が不可欠です。そのために和平調停センターを設立し、所長には堀場明子が就任します。また、後方におります森祐次がアドバイザーとして参画します。森は私とともにミャンマーで160回にわたり活動してきた人物であり、カンボジアをはじめ東南アジアや中央アジアにも精通した専門家です。本センターは小さくスタートしますが、日本として初めて本格的な国際調停の拠点が整備されることになります。今後は情報収集と人的ネットワークの構築を進めていきます。これは政府の肩書き外交では実現が難しく、民間だからこそ担うべき重要な役割です。以上の趣旨をご理解いただき、今回のセンター設立についてご支援を賜れば幸いです。 ******************* 質問@ 先ほどまでいろいろとお話を伺い、大変良い取り組みだと感じながら拝聴していました。そこで具体的に、今後どの地域に取り組んでいくのかという点についてお伺いしたいです。現在はアジアを中心に取り組まれるとのお話がありましたが、アジアの中でもミャンマーをはじめ、フィリピンなど、さまざまな地域で紛争や課題が存在しています。こうした中で、今後の具体的な対象地域について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。また、特にミャンマーにおける和平の取り組みについては、このセンターが担当することになるのか、その点も併せてお聞かせ願いたいです。 回答@ ミャンマーの問題については、すでに日本財団が現地事務所を有しており、主に人道支援活動を中心に、現在も地震や水害への対応などを行っています。そのため、ミャンマーについては引き続き日本財団が担当することとし、それ以外の地域については本センターが担うことになります。 例えば、タイ南部の問題については、すでに10年以上にわたり取り組んでおり、主に堀場が中心となって関与してきた分野であり、私たちとしても非常に重視しています。 また、中東ではカタールやオマーンが非常に優れた仲介外交を展開しています。彼らの特徴は、表に出ないという点にあります。表向きには大国が前面に出てきますが、実際の調整や下働きは彼らが担っているのが現状です。 彼らは、先ほど堀場からも説明があった通り、日本に対して「なぜ我々のところに来ないのか」と指摘しています。というのも、彼らは西アジアという概念を持っており、例えばアジア大会にはヨルダンまで含まれています。ヨルダンのハッサン・ビン・タラール王子も「自分たちは西アジアであり、日本は東南アジアだけでなく西アジアも含めてアジア全体として向き合うべきではないか」と述べており、大変示唆に富む意見だと受け止めています。 こうした背景を踏まえ、私たちはすでにカタールやオマーンにも入り、人的ネットワークを構築しています。さらに、先般タリバンの幹部を日本に招聘しましたが、その際にも肩書きに依存しない外交の重要性を強く認識しました。 かつては、私たちがこのような活動を行うと、当局から「民間が外交を行うべきではない」と厳しく指摘されたこともありました。しかし、現在はそのような時代ではなく、外務省も同様の認識を共有していると理解しています。 広く情報を収集するためには、肩書きではなく、人間同士の長期的な信頼関係が不可欠です。そうした関係の中でこそ、非公式ではあっても極めて重要な情報が得られます。それを適切に活用することが重要であると考えています。 ただし、こうした情報を公にし、「どのような情報を得たか」「どのような交渉成果があったか」を軽々しく発信することは、信頼関係を損なうことになります。そのため、誠に申し訳ないことではありますが、私はこれまでミャンマーに160回以上入っているにもかかわらず、詳細については一切お答えしていません。 それは、長年にわたり関係を築いてきた20の少数民族武装勢力の方々やその家族から、「笹川は決して話さない人だ」という信頼を得ることが、極めて重要だからです。一方で、肩書きに基づく外交では、どうしてもメディアに対して説明責任が求められます。しかし、その過程で機微な情報を明らかにしてしまえば、信頼関係は崩れてしまいます。こうした理由から、紛争解決の分野において民間が果たす役割は、近年ますます重要になっていると考えています。 質問A 発言の機会をいただき、誠に感謝します。まず初めに、尊敬する笹川陽平様におかれましては、先週、我が国の誇るノーベル賞受賞者であるムハマド・ユヌス教授をお迎えいただき、誠に感謝します。ユヌス教授は最近日本を訪問し、大変実り多い滞在となり、非常に満足して帰国しました。この訪問により、日本とバングラデシュの関係がさらに強化されたものと確信しています。 また、笹川陽平様は国際的にも高く評価されている著名な人道主義者であり、平和の提唱者です。特に南アジア地域、あるいは先ほどのご説明にあったように西アジアも含めた広い地域において、大きな存在感を示しておられます。とりわけミャンマーやバングラデシュにおいて、そのご活動はよく知られています。 さて、このたび笹川平和財団が対話と和平プロセスを支援する日本の拠点として「和平調停支援センター」を設立されたことに対し、心よりお祝い申し上げます。そのうえで、バングラデシュとミャンマーの国境問題について一言申し上げたいと思います。 バングラデシュとミャンマーの国境における緊張は、ミャンマーの内戦の影響が越境していることに起因しています。迫撃砲の砲弾がバングラデシュ領内に着弾する事例があり、また約110万人のロヒンギャ難民を抱える深刻な問題も続いています。さらに、ミャンマー軍による国境侵犯、アラカン軍とミャンマー軍政との戦闘、ベンガル湾における断続的な海上衝突など、緊張は多岐にわたっています。 こうした中で、バングラデシュは一貫して戦略的自制を保ち、外交的手段を重視しつつ、ミャンマーに対して国内紛争の終結を求めてきました。この状況は地域の安全保障に大きな影響を与えています。本日、このような和平調停支援センターが笹川平和財団によって設立されたことに、大変勇気づけられています。そして、これまでと同様に、本財団がこの分野において前向きな成果をもたらしてくださることを期待しています。 そこでお伺いしたいのですが、バングラデシュとしては、この取り組みからどのような具体的成果や貢献を期待できるのでしょうか。 回答A ご質問感謝します。バングラデシュがロヒンギャ難民を多数受け入れ、大変厳しい状況にあることについては、私自身も現地を何度も訪れており、十分に認識しています。また、現地にはすでに小学校を50校以上建設しています。 一方で、人口は年間約3万7千人ずつ増加しており、非常に深刻な状況にあります。私たちはロヒンギャ・ムスリムの方々に家族計画を導入できるよう努力していますが、保守的な価値観もあり、なかなか難しいのが現状です。 こうした人口増加に加え、すでに犯罪の発生も見られるなど、状況は一層厳しさを増しています。そのため、単に食事を提供するだけでなく、若い人たちに将来の職業を身につけてもらうための環境づくりが重要だと考えています。 こうした観点から、バサンチャール島において優れた施設を整備しました。当初は、西欧社会から「台風の通り道に避難施設を設けるのはいかがなものか」といった強い批判を受けましたが、私が現地を訪問した際の映像が欧米に伝わり、難民のための新しい都市が整備されていることが理解された結果、批判は収まりました。 現在は新政権が発足しているので、今後どのように難民対策を進めていくのか、その方針を十分に確認したうえで、私たちとしても新たな協力を進めていきたいと考えています。 ただし、現時点で難民の方々が直ちにミャンマーへ帰還することは、極めて困難な状況にあることはご承知の通りです。バングラデシュが置かれている困難な状況に加え、ウクライナ情勢やその他の紛争の影響により、ロヒンギャ問題への国際的な関心が薄れつつあることについては、大変懸念しています。 この点については、インドネシアのプラボウォ大統領や、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相も強い懸念を示しています。マレーシアにはすでに20万人を超えるロヒンギャ難民が流入していますが、その支援資金の多くはカタールによって提供されています。このように、難民支援を含めて、カタールやオマーンなどが地道な活動を続けていることについて、私たちはより深く理解し、適切に評価していく必要があると考えています。 |






