「日本研究者養成」
―アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(IUC)―
海外における日本研究者が著しく減少傾向にある。一方、中国語及び中国研究者は国家政策の後押しもあり、世界的に激増している。国力の差は如何ともしがたいが、アメリカのある大学では日本の歴史を中国人教授が教えている例もあった。その教授のもとで学んだ学生が日本に対してどのような歴史観を持つかは想像に難くなく、憂慮すべきことです。
日本財団は限られた範囲ではありますが、世界における日本理解の促進のために懸命に世界中で活動を行っています。なかでも「日本を知る200冊の図書寄贈プロジェクト(READ JAPAN PROJECT)」は、すでに154ヶ国1,619機関に図書が届けられ、今も継続している人気のプロジェクトです。これは姉妹財団である東京財団の努力によるものです。
さらに、イギリスの著名13大学やスカンジナビア5ヶ国9大学に日本講座を開設・継続し、トルコのチャナッカレ大学やルーマニアのブカレスト大学を含む6ヶ国11大学では日本語教育プログラムを展開しています。
表題のアメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(IUC)は、1963年の設立以来、上級日本語教育を行う世界有数の教育機関です。横浜に拠点を置き、日本研究者のために10ヶ月間の専門的な日本語集中講座を実施しており、ここで学ぶ学生は将来、大学教授や日本語出版物の翻訳家などとして活躍が期待される侑主な人材です。
これまでにIUCにおける日本財団フェローは246名にのぼり、アメリカやカナダを中心に活躍しています。今年度は、以下の20名が来日されました。各フェローの氏名と略歴、ならびに10月1日に行われた奨学金授与式での簡単な私の挨拶を掲載します。
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アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(IUC)
2025-26日本財団フェロー
Darius Barnes デーリアス・バーンズ [アメリカ]イリノイ大学アーバナシャンペイン校大学院博士課程〈2028年博士号取得予定〉
研究テーマ:1982〜91年の政治的、社会的、文化的激動の時代におけるフジテレビの番組編成
Keegan Callerame キゲン・カレラミ [アメリカ]ハワイ大学マノア校大学院博士課程〈2029年博士号取得予定〉
研究テーマ: ニーチェと日本仏教を元にした現在哲学向けの倫理学
Sophie Eichelberger ソフィー・アイクラバーガー [アメリカ]ペンシルベニア大学大学院博士課程〈2028年博士号取得予定〉
研究テーマ: 近世日本における女性のファッションと自己認識の関係
Zifan Yang ジファン・ヤン [カナダ]スタンフォード大学大学院博士課程〈2029年博士号取得予定〉
研究テーマ: 心の理論と文学
Qing Zhang チン・ジャン [アメリカ]イェール大学大学院博士課程〈2028年博士号取得予定〉
研究テーマ: 戦後日中関係と森村誠一の遺産
Olivia Dobbs オリビア・ドブズ [アメリカ]イェール大学大学院修士課程〈2027年修士号取得予定〉
研究テーマ: 日本の産業遺産と負の遺産
Adam Klein アダム・クライン [アメリカ]スタンフォード大学大学院修士課程修了〈2025年修士号取得〉
研究テーマ: 詩と環境との関係
Addison Kwasigroch アディソン・クァズィグロ [アメリカ]セントルイス・ワシントン大学大学院修士課程修了〈2025年修士号取得〉
研究テーマ: 作家佐多稲子の戦前作品
Nicholas Malik ニコラス・マリク [アメリカ]ワシントン大学大学院修士課程〈2026年修士号取得予定〉
研究テーマ: 松本清張の小説における地方の描写
Tyler McMillin タイラー・マクミラン [アメリカ]ハワイ大学マノア校大学院修士課程修了〈2025年修士号取得〉
研究テーマ: 夏目漱石の作品に於ける耽美的傾向と日本の耽美主義文学の歴史
Julie Morris ジュリー・モリス [アメリカ]カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院修士課程修了〈2023年修士号取得〉
研究テーマ: 今様と『梁塵秘抄』―欧米アカデミアにおけるジェンダー論的後白河院観の再考
Stefanos Rodinos ステファノス・ロディノス [キプロス・アメリカ]ケンブリッジ大学大学院修士課程修了〈2022年修士号取得〉
研究テーマ: 純粋数学の圏論を用いた日本語と他言語間の翻訳について
Gillian Sawyer ジリアン・ソーヤー [アメリカ]ハワイ大学マノア校大学院修士課程修了〈2025年修士号取得〉
研究テーマ: 沖縄の危機言語の復興について
Emi Watanabe エミ・ワタナベ [アメリカ・日本]テュレーン大学大学院修士課程修了〈2015年修士号取得〉
研究テーマ: 日本における防災と災害対策
Ryan Zhao ライアン・チョウ [カナダ]ブリティッシュ・コロンビア大学大学院修士課程〈2027年修士号取得予定〉
研究テーマ: 村松梢風の上海旅行記『魔都』を通した日本人の日本観と国際社会でのその立場の理解について
Jeffrey Chen ジェフリー・チェン [アメリカ]センター大学卒業〈2020年学士号取得〉
研究テーマ: 日米同盟における沖縄の戦略的な役割と日本の安全保障戦略が地域経済に及ぼす影響
Samantha Doyle-Jacobson サマンサ・ドイルジェイコブソン [アメリカ]カリフォルニア大学バークレー校卒業〈2023年学士号取得〉
研究テーマ: 日米関係と核実験の影響
Christopher Ellars クリストファー・エラーズ [アメリカ]ボストン大学卒業〈2025年学士号取得〉
研究テーマ: 日本の伝統芸能と西洋のオペラとの関係
Paige Lockwood ペイジ・ロックウッド [アメリカ]セントルイス・ワシントン大学卒業〈2021年学士号取得〉
研究テーマ: 外国人観光客の受入れが日本の食文化や少数民族の観光産業への関与に及ぼす影響
Jason Wang ジェイソン・ワン [アメリカ]イェール大学卒業〈2025年学士号取得〉
研究テーマ: 翻訳・ゲームデザイン
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アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(IUC)
2025年度奨学金授与式
皆さん、ようこそ日本におこしくださいました。心待ちにしておりました。長い間、バートン先生ご指導のもと、多くの方々が日本での大変充実したプログラムを経験し、その成果をもって大学にもどり、それぞれの専門分野に沿って活躍されていることを、大変嬉しく思っています。
『文明の衝突』という本を読まれた方もいると思います。この小さな島国でありながら、世界八大文明の一つとして評価を受けている伝統ある国です。皆さんの中にも伝統に惹かれて日本に興味をお持ちになった方もいるのではないかと思います。
今回は短い滞在期間かもしれませんが、バートン先生を中心とした優れた教育内容を通じて、日本の各地域に根差す伝統・文化にも触れていただければと思います。例えば、日本は鉄道が発達しており、それぞれの駅には各地域特有のお菓子や工芸品があります。小さな国でありながら、駅ごとに独自の特色があるのは世界でも稀なことです。日本は、江戸時代までは約300の地域に分かれ、それぞれに独特の文化や暮らしが存在していました。そのため、今なお地域ごとに違った文化が息づいています。私自身、86年も日本に住んでいながら、日本についての理解はまだ足りないと感じています。
だからこそ、皆さんが日本を学ぼうという姿勢をお持ちであることを大変嬉しく思いますし、皆さんによって様々なことが発信されていくことは、私たちにとっても非常にありがたいことです。私たちの方が皆さんの来日に感謝しなければなりません。短い期間ではありますが、どうぞ充実した生活を過ごしてください。日本財団には様々なプログラムがあり、これまで世界各国で約4万人を超える奨学生を支援してまいりました。単に学業の資金を提供するだけでなく、卒業後も末永く日本財団と交流を続けていただきたいというのが私たちの願いです。ネットワークもございますので、どうぞ生涯にわたり日本財団の仲間の一員になっていただければと、心から願っております。日本での滞在が有意義なものになりますよう期待しております。