• もっと見る
« 2025年05月 | Main | 2025年07月»
leprosy.jp
resize.png日本財団はハンセン病の差別撤廃を訴える応援メッセージサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設。皆様からのメッセージを随時募集・配信しています。
Google
<< 2025年06月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
プロフィール

笹川 陽平さんの画像
笹川 陽平
プロフィール
ブログ
カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
リンク集
https://blog.canpan.info/sasakawa/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/sasakawa/index2_0.xml

【私の毎日】6月16日(月) [2025年06月16日(Mon)]

6月16日(月)

6:30 財団着

8:30 財団内打合せ

9:30 内藤忠顕 日本郵船特別顧問

10:00〜12:00 日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム総会

12:00 山田吉彦 東海大学教授

13:30 出産祝い金渡し

13:45 赤阪清隆 ニッポンドットコム理事長

14:00  Dr. Emadul Islam  笹川平和財団上席研究員

15:00 スピーチ打合せ

15:30 財団内打合せ

終日 原稿書き、寄付金への礼状書き

「未来を拓く人材を育てる」―ザルツブルク・グローバル― [2025年06月16日(Mon)]

「未来を拓く人材を育てる」
―ザルツブルク・グローバル―


先日、日本財団と長年にわたり協力関係を築いてきたザルツブルク・グローバル(Salzburg Global)のマーティン・ヴァイス会長(元駐米国オーストリア大使)とベンジャミン・グラン副会長が来日された。

0616@2.png
ザルツブルク・グローバル マーティン・ヴァイス会長と


Salzburg Globalは、オーストリア・ザルツブルクにある、映画「サウンド・オブ・ミュージック」のロケ地にもなった歴史あるレオポルドスクロン宮殿で、世界の多様な課題に向き合うリーダーたちが、対話を通じて学び合い、つながる場である。第二次世界大戦直後の1947年、戦争で傷ついたヨーロッパの再生と国際協調を願う若者たちによって設立されたこの組織は、国や分野を超えた知の交流の拠点として、今日までに世界130カ国以上から約4万人のフェローを迎えてきた。

0616A.jpg
レオポルドスクロン宮殿


日本財団は、こうしたSalzburg Globalの理念に共鳴し、1987年、1994年の2回にわたり総額300万ドルの「笹川基金」を設置、これまでに1,000人を超える途上国出身のフェローをザルツブルクに送り出してきた。人材育成は時間をかけて育まれるものである。多くの組織が5年、10年で支援先を切り替えるなか、我々は35年以上にわたり、地道な支援を続けてきた。

「次世代を支える中堅実務家ネットワークの構築」:ふたつの取り組み
基金を通じた途上国からのフェロー支援とは別に、日本財団は2019年にアジアの紛争解決、日本とインドのテクノロジー協力をテーマに、二つの新たな取り組みを始めた。

いずれのプログラムも、毎回45名のフェローをザルツブルクに集め、アイディアの創出、グループ作り、事業計画づくりに加えて、資金調達や資金提供者へのアプローチについても実践的なサポートを実施。5年間で総額550万ドル(約8億6千万円)以上を拠出し、これまでに415名が参加、生まれた事業案は50件を超える。アジアの安定と平和をテーマとしたプログラムには、初年度30名の募集枠に対して1,500名もの応募が寄せられ、ザルツブルクが手がける数あるプログラムの中でも、とりわけ高い競争率を誇った。

「アジアの紛争解決:世界の知見を活かし、アジアの課題をアジアの力で解決」
このプログラムは、宗教や民族をめぐる対立、地域紛争、民主主義の課題などに取り組む、アジア各国の中堅リーダーたちの育成を目的としている。インドネシアから参加したフェローの一人は、次のように話す。

「平和構築には市民社会だけでなく、行政や政治の場と連携する視点が重要だと実感した。制度がすべての人に届くには、多様な立場の協働が必要だ」
さらに、フェロー同士の交流を通じて得た気づきについても、こう述べている。
「他のアジア諸国のリーダーたちと意見を交わす中で、自分たちの取り組みがより広い文脈と結びついていることに気づいた。これは組織にとっても、自分自身にとっても大きな意味がある」

0616B.jpg
「『サウンド・オブ・ミュージック』の名シーンを思わせる湖畔の風景


「日本・インド:テクノロジー・ネットワーク:テクノロジーを活用した社会課題解決への取り組み」
もう一つは、日本とインドのテクノロジー分野の人材をつなぐプログラムである。テクノロジーを活かして、障害やジェンダー、地域間格差、高齢化などに関する社会課題に取り組む日印の若者たちが集った。

孤独を感じがちな育児中の親が集まれるカフェを運営している日本人のフェローは、プログラムへの参加を振り返ってこう語る。「日本での支援のやり方に限界を感じていたとき、インドのフェローたちとの対話の中で、自分の活動がもっと広がる可能性に気づけた」
彼女は現在、カフェで聞き取った声をAIで分析し、社会に届ける取り組みを始めている。

「テクノロジーが、社会の声を可視化し、共有する手段になる。それを実感できたのが、このプログラムだった」
日本とインド、それぞれに異なる文化や価値観を持つメンバーが、互いの背景に耳を傾けながら、共通する課題や目指す未来を探っていく。違いを乗り越えるというよりも、違いを踏まえて共に創る−−そんな対話の積み重ねが、このプログラムのあちこちに息づいていた。

0616C.png
歴史あるレオポルツクロン宮殿の一室で議論を交わすフェロー達


人材育成は、継続してこそ
ザルツブルクのプログラムでは、30代から40代の、いわゆる中堅実務家を主な対象としている。日本財団はこれまでも、学部生や大学院生への奨学金支援を通じて、多くの若い人材を世界中に送り出してきた。このプログラムは、そうした卒業生の中でも、社会で10年ほど経験を積んだ世代に焦点を当てたもので、さらなる活躍の場となった。

日本財団の奨学金事業を経た卒業生たちが、年齢や国籍、背景の異なる仲間とともに、厳しい選考をくぐり抜けてザルツブルクに集い、語り合い、学び合いながら、それぞれの地域で実践を重ねている。

人を育てるには、時間も、熱意も、そして少しずつ積み重ねていく投資も必要だ。社会を動かしていくのは、制度や仕組みだけではなく、そこに関わる人の思いや行動である。日本財団はこれからも、こうした息の長い人材育成を通じて、社会課題の現場に立つキーパーソンたちを支えていきたいと考えている。
| 次へ