「長嶋茂雄氏ご逝去」
―歴史に残る大報道―
「ミスタープロ野球」といわれた長嶋茂雄氏(89歳)が6月3日ご逝去された。
筆者は原則テレビは視聴しないので映像報道の内容は不明だが、日刊五大紙は空前絶後の大報道となった。「巨人は嫌いでも長嶋茂雄は好き」と朝日の天声人語は書いていた。国民的英雄であると同時に、天性の明るさ、その発するオーラと人柄は、数々の野球記録を含め、すべての日本人に愛された稀有の人であった。
朝日、産経、毎日、読売、日経の五大紙は、すべてが一面で報道するだけでなく、各社の「社説」や「コラム」も揃い踏みであった。
朝日新聞:「時代を照らし続けた太陽」と一面に掲げ、13・23ページを全面、さらに17・22ページでも詳細を掲載。
産経新聞:「ミスタープロ野球−ONコンビ巨人V9−」と一面に打ち出し、12・19ページを全面、3・5・9・13ページにも関連記事を配置。
毎日新聞:一面を「ミスタープロ野球−巨人V9 ONでけん引−」とし、13・14・20ページを全面、15・21ページにも関連報道。
読売新聞:長嶋茂雄さん死去」の大見出しとともに、「ミスタープロ野球『ON砲』巨人V9」と特集。15・24・25ページを全面特集とし、3・16・17・20・21ページでも詳細記事を掲載。
日本経済新聞:一面で「長嶋茂雄さん死去−元巨人監督、ミスタープロ野球−」と報じ、「韓国大統領に李在明氏」の記事に続いて掲載。33・35ページでは全面特集。
筆者の知る限り、民間人に対する報道としては、戦後唯一且つ最大のものであったと思う。悲しみの中ではありますが、長嶋氏の人気の秘密には、なんともいえぬユーモアもあったのではないでしょうか。以下はその一例です。
最も有名な話:立教大学時代の英語の授業で、「I live in Tokyo(私は東京に住んでいます)」を過去形に直しなさいという設問に、長嶋さんは「I lived in Edo(私は江戸に住んでいました)」と答えたそうです。
ハワイ旅行:川上哲治さん、王貞治さん、長嶋さんがともに食事をしていた際、牛肉か鶏肉かを選ぶよう求められ、川上さんが「チキン」と答え、王さんが「Me too」と言ったところ、長嶋さんが「Me three」と続けたといわれています。
ファンと:「私は長嶋さんと同じ歳で、誕生日も一緒なんですよ」と言われ、「あ、そうですか? で、何歳ですか?」と返したそうです。
北野武さんの話:「長嶋さんをゴルフに誘い、ゴルフ場で会ったら『あれ武さんも今日ゴルフなの?』」
徳光アナウンサーの話:「長嶋さんをおいしい蕎麦屋にお誘いし、事前に蕎麦屋の主人にも連絡。主人が張り切って準備していたところ、長嶋さんが『僕はかつ丼で』」
遅刻したときの理由:「電車が行き先間違えちゃって」
監督時代の語録:「打つと見せかけてヒッティングだ」「開幕10試合を7勝4敗でいきたい」「ハワイの子どもはみんな英語がうまいねぇ」「松井君、もう少しオーロラが出て欲しい」
ユーモアというより、いつも本気で真面目に話しているのがかえって面白い。これを「天然ボケ」と呼ぶのは誠に失礼ですが、長嶋氏はまさに「愛される人」であり、「日本の長嶋さん」でした。心よりご冥福をお祈りいたします。