「『食の外交官』報酬1.5倍に」
―日本大使料理人―
外国にある日本大使館の料理人は、明治以来、大使の報酬の中から個人契約として料理人を同行させる形で、現在まで続いてきた。せっかく若い料理人が覚悟を決めて大使に同行しても、大使に帰国命令が出れば帰国せざるを得なかった。また、大使が新たに料理人を探すのは、特に赴任先がアフリカや中南米では至難なことで、仕方なくタイやスリランカの料理人を同行させていた。決してタイやスリランカの料理人の腕が悪いわけではなく、立派な人も多い。しかし、外交の先兵である日本大使館の料理人は、やはり日本人が望ましいということに変わりはない。
このたび、ようやく外務省は明治以来の伝統を改め、大使と料理人が私的に雇用契約を結ぶ「古めかしい」形態を廃止し、報酬も1.5倍に引き上げることにした。これが来年1月から適用される見通しだ。遅まきながら、この改定を評価したい。和食は世界中で人気であり、その国の政治家や各界の名士が訪れる大使館での和食の提供は、最も大切な外交活動の一つであることに変わりはない。
かつて民主党政権時代、「ワインは1本1000円程度で良い」との馬鹿げた方針が出されたことがあった。大使館の食事は外交の最も重要な舞台でもある。大使館に招待された客は、ワインを見て「私の評価はこの程度のものか」と思ったに違いない。そこで筆者は、日本製ワインの採用を勧めた。白ワインは国際的にも評価されていたが、外国人にとって日本の赤ワインは存在すら知られていないことも多かった。しかし、日本の赤ワインはイギリスや香港で優秀賞もとっており、活用すべしと関係者に話したところ、実現に至った。二、三の大使館では、日本の赤ワインをきっかけに20〜30分も話題が盛り上がり、盛会になったとの話も耳にしたが、残念ながら優良な赤ワインは数量が限られており、価格が高いことも課題のようだ。今後、生産量が増加し、日本の和食文化とともに日本のワインが外貨獲得の一助となることを期待したいものです。