「誰もが働ける社会に向けて」
―日本財団が提言を発表―
ひきこもりなど障害者手帳を持たない多様な就労困難者の就労支援を目指す国会議員有志(呼掛け人:野田聖子衆院議員)の初の勉強会が3月18日、衆院第一議員会館で開かれ筆者も出席、新たな支援法の制定などを求める提言書を手渡した。
現在、ひきこもりやニート、難病患者など働きづらさを抱える就労困難者は約1500万人に上るとされ、うち270万人は適切な支援や環境を整備することで就労が可能といった専門家の試算もある。
2013年に施行された障害者総合支援法で対応するには制度上の限界もあり、日本財団では18年、「WORK! DIVERSITY(包摂的就労)」を立ち上げ、22年から千葉県、岐阜市、福岡県、豊田市、宮城県、名古屋市で就労困難者を支援するモデル事業を開始。翌年、「WORK!DIVERSITY政策実現会議」(座長:柴崎正直岐阜市長)を立ち上げ、宮本太郎中央大法学部教授らの協力で提言書づくりを進めてきた。
現在、関連する法律としては生活困窮状態からの早期自立を目指す生活困窮者自立支援法がある。しかし@あくまで任意の事業のため就労準備支援を行っていない自治体があるA事業者が認定就労訓練を行う場合、訓練費の支給がなく事業が広がりを欠く―などの問題がある。
このため提言書ではこうした点を指摘した上で、就労準備支援事業や就業訓練事業を必須事業とするなど制度の見直しを求めている。これに対し野田議員は「人口が減少する時代に見合った新しい仕組みを作っていく方向で頑張りたい」とあいさつ、筆者も障害者支援など日本財団のこれまでの取り組みを紹介した上で、「就労困難者を社会の中にきちっと位置付ける取り組みが必要だ」と訴えた。
勉強会ではモデル事業の実施団体「サステイナブル・サポート」(岐阜市)から、これまでの取り組みが報告され、引きこもりを経験した男性は「社会との“つながり感”が持てず、親にも理解されなかった。しかし支援を受ける中で『そういうことなら自分も参加できる』といった実感を持てたことで、立ち直ることができた」と語った。
急速な少子化に伴い社会の支え手が不足する時代を迎え、これまで社会に支えられる立場にあった就労困難者を、社会を支える側に変える試みは共生社会を実現する上でも重要。今後の発展を注目したいと考えている。

WORK! DIVERSITY の実現に向けての提言書を野田聖子衆議院議員に手交する