「創立記念日」
―挨拶−
私の話は常に即興で、原稿がありませんので整合性のない筋道になる欠点があります。ただ、仕事に対する熱い情熱だけは汲み取って頂ければと思い、決して誉められた内容ではありませんが、記録のためにアップしました。
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2024年10月1日(火)
於:日本財団ビル2階
おはようございます。今日は少し違った観点で話をしたいと思います。実は近年休日が沢山増えており、ご承知の通り一年の約3分の1が休日です。加えて有給休暇もありますので、1年間で約140日休みがあります。この時間をどのように過ごすかが人生にとって重要ではないでしょうか。勿論ご家庭のある方はお子様の養育や家庭のこともあると思いますが、私の長い人生を振り返りますと、この休暇をうまく活用するのが大切だと思います。趣味をお持ちの方もいらっしゃるのでそれはそれで結構なことですし、家庭で過ごす時間をいかに上手に使うかということが、財団で働くうえで重要になってきます。財団の中には山登りの会、様々な趣味が一致する人が活動していると聞いており、大変結構なことだと思います。趣味の世界に生きる、例えばスポーツであったり旅行であったり、そうした充実度が財団での活動を充実させると思いますし、精神的にリラックスした時間があったことで意欲的に仕事ができるようになります。こうした休日の過ごし方いかんによって会社の仕事も捗るのではないでしょうか。と申しますのも、財団で働くことは、それぞれの生きてきた環境、社会環境が違う人が集まる中で、皆さんの考え、行動が一致することはありません。いわば、他人の集まりです。従って、人間関係で精神的にダメージ、悩み事が出てくるのは当たり前のことです。仕事をするうえで悩みがないことはあり得ません。すべての人と意見が一致することはなく、互いの相違をいかに縮めていくかが大切で、それには休日の過ごし方によってリフレッシュして、精神的な余裕を持つことが仕事の上でプラスになります。私は月曜日が楽しみで仕様がありませんでした。「また今日から仕事ができる」と充実した月曜日でしたが、中にはそうでない方もいらっしゃいます。なんとなく家で休日にテレビを見てスマホを見ているだけでは月曜日が辛くなるのではないかと思います。どうぞ休日をいかに有効に使うかについて今一度皆さんにお考えいただき、またそれを実行してほしいと思います。
日本財団は何遍も申し上げるように、世界で最もユニークに社会貢献活動をする組織であります。皆さんお気づきと思いますが、ホールディングスのような組織形態をもった財団は世界に類を見ません。ご承知の通り、ハフマンさんが英文で関連団体の一覧を作ってくださいましたが、こうした従前には日本国内は勿論のこと世界になかった組織を自ら作ってきた歴史があります。例えば、運動生理学を選手の中に取り入れていくということは30年前は考えられなかったことですが、いまや大谷選手の活躍の通りスポーツは科学であります。こうしたことを研究し実践していくために笹川スポーツ財団を作りました。また保健衛生の分野では笹川保健財団、少壮学者支援のための日本科学協会、障害者スポーツには日本財団パラスポーツセンター、広く国際活動するための笹川平和財団、シンクタンクの東京財団政策研究所などがあります。一般的なホールディングスは各会社からの配当金を吸い上げるものですが、我々は日本財団から資金を提供し、また自らが日本はもとより世界をつなぐ仕事をしています。こうした仕事が出来るのは世界で日本財団だけです。是非とも日本財団での仕事のみならず、こうした関係団体との協力を強化する必要もあります。関係団体とは、役員レベルの交流活動や共同事業を既に開始をしております。皆さんにおかれても、組織間の人間関係の確立、情報の共有を深めていただければ幸いです。
皆さんに前回もお願いしましたが、若い方々には鳥海さんが書いてくださった「日本財団はいったい何をしているのか」を読んでいただきたいと思います。近々9冊目が刊行されますが、これを絶対に皆さんに読んでほしいと思います。これは生きた教科書です。なんとなく上司に言われたことをやっているだけでは十分ではありません。何遍も皆さんに申し上げていますが、私はダーウィンの進化論の信者であり、どんな強力な組織、優秀な頭脳が集まった集団であっても、時代の変化をしっかり見極めて対応する能力がなければ必ず衰退します。ですから、我々の組織は、未来志向で常に変化、変化、また変化をしていかなければなりません。皆さんにお願いしたいのは、未来志向のためには過去をしっかり知らなければなりませんので、この本だけは今年中に全て読んでいただき「こうした基礎のもとに発展してきたのだ。では次に何をすべきなのか」ということを考えていただくことを期待したいと思います。
学校で学問として習ったことは、語学は勿論大きく役に立っていると思いますが、その他はあまり実社会では役に立ちません。なんとなく仕事をするのではなく、常に好奇心を持っているか否かが人生の分かれ道になると思っています。物理的な年齢で年を取っているか若いかは関係ありません。若い人でも精神的年寄りは沢山います。それは常に好奇心を持って生活をしているかしないかの差です。年齢を重ねても精神的に若い人もいますし、若くても好奇心が無くなってしまってなんとなく日々を生きている、という人は既に老人の域に達しています。日本財団に勤める皆さんにはこうしたことがなく、好奇心に満ちあふれ、議論をし、未来志向の財団として世界に冠たる日本財団はどうあるべきかを常に考えて働いていただいていると思っています。昨日の続きの今日ではなく「明日に向かって何をするか」。これが社会貢献をする日本財団であり世界に冠たるユニークな組織体なのですから、皆さんに大いに期待をしております。
やることは沢山あります。「やはり日本財団の職員は一味も二味も違うな」と言われるようになってください。好奇心をもって社会を見て、社会課題を見つけ出し、社会課題の解決を成功させるモデルを作ることで、これを国家や行政が真似をする。日本財団が成功例をつくることで、国が政策として真似をしていく、つまり国や行政の最先端を日本財団が活動する、こうした事例は既に沢山あります。これが日本財団の大きな存在意義と理解しています。自分たちがここに入るときの夢をぜひ実現いただきたいと思います。初心を思い出し「なぜここに入ったのか」、それを日本財団で実現してください。そのためには人間関係でややこしいことも出てきます。どこの組織でもあります。それは耐えていかなければなりません。その中で精神的な強靭さを身につけることで、柔軟な対応ができる人間になってきます。耐えることによって、竹ではありませんが、困難を乗り越えることで節が出来、成長します。良いことばかりでは成長しません。辛いことや嫌なことを乗り越えてこそ「成長した」と実感があるわけで、そうしたことを自らに言い聞かせて頂くことが重要と思います。
未来志向で、日本財団は世界の社会貢献財団のリーダーシップを持った組織であることを心の中で誇りに思いながら才能を発揮いただき、好奇心を忘れずに活動してください。ありがとう!