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【私の毎日】6月7日(水) [2023年06月07日(Wed)]

6月7日(水)

13:00 財団着
    財団内打合せ

終日 原稿書き、寄付金への礼状書き

「海洋生物新発見へ」―世界的プロジェクト・スタート一 [2023年06月07日(Wed)]

「海洋生物新発見へ」
―世界的プロジェクト・スタート一


坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」ではないが、人間は星空を眺める習慣から宇宙への好奇心が強く、今や月や火星の地形図もあり、火星旅行さえ研究が進んでいるという。

一方、水の惑星と言われ、地球の7割を占める海についての調査研究は大幅に遅れている。海の環境保全なくして人類の生存はあり得ないにも関わらずである。

日本財団では、長く「海」に関心を持つ人材養成を世界規模で行うだけでなく、石油の99%を中近東に依存する日本にとって、狭隘(きょうあい)なマラッカ・シンガポール海峡の航行安全に40年にわたり協力してきた。また、万一の海難事故に備えるためのオイルフェンスの配置や、シンガポール、マレーシア、インドネシアの3ヶ国に、マラッカ・シンガポール海峡安全航行のための機構設置に協力したこともある。

現在は海底地形図の作成に全力を上げている。活動前はたった6%であったが、世界の研究者の協力を得て27%まで進んだ。地球から海水がない地形はどんな姿なのか、読者の皆さん、想像して欲しい。全貌が明らかになることは大きな楽しみである。

前置きが長くなったが、日本財団では英国のNekton財団と協力して、海中の未発見の生物探査事業「Ocean Census」を開始するにあたり、4月27日にロンドンにおいて記者会見を行った。

世界の分類学者カール・フォン・リンネは、動物、植物、鉱物の分類を学問的に行い、「分類学の父」と呼ばれている。日本でも牧野富太郎博士は「日本の植物学の父」と呼ばれ、植物分類学を確立させた。残念ながら、海洋生物については未だ分類は存在しない。一般論として、海洋生物の約10%しか判明していないという。近代科学の長足の進歩・発達の中で、いわば未知の分野であるといっても過言ではないだろう。

計画では、一年に少なくとも5,000近くの新種を発見する予定で、先般も海洋研究開発機構(JAMSTEC)が深海2000m近くで発見したヨコヅナイワシは世界的ニュースとして拡散された。

ヨコヅナイワシ.png
JAMSTECが発見したヨコヅナイワシ(写真:JAMSTEC)


本計画には、既に各国の海洋研究所などの参加要請もあり、日本財団はNekton財団と共にプラットフォームになり、その分類はオックスフォード大学に担当してもらう予定である。

以下はOcean Census事業開始式典での私の挨拶です。

*************

林肇・駐英日本国大使、ルパート・グレイ・Nekton財団会長、お集りの皆さん。本日Nekton財団と共に海洋の生態系を解き明かし、海洋環境を守るという壮大で夢とロマンに溢れた事業の船出を迎えられたことを嬉しく思います。

日本財団は次世代に豊かな海を引き継ぐため、創設以来、海の未来を切り開く多様な取り組みに力を入れて参りました。その取り組みには150ヶ国から1600名を超える海の専門家の育成や未知なる北極海航路の開拓、海底地形図の作成、無人運航船の開発など、沢山の心躍る事業が含まれています。私自身、幼い頃にジュール・ヴェルヌの「海底二万マイル」を読んだ時、夢とロマンあふれる海に心を奪われました。海底の大冒険、巨大タコとの闘い、見たこともない食べ物・・・など、どれも新鮮な衝撃でした。中でも様々な海洋生物との遭遇は、幼い私にとって未知なる海へ強い好奇心を抱く大きなきっかけとなりました。こうした「未知なる海のことをもっと知りたい」「海の謎を解き明かしていきたい」という気持ちは、84歳の青年となった今、一層強くなっています。

しかしながら、既に火星の地形は100%把握しているほど近年の科学技術は驚くべきスピードで進歩しているにも関わらず、「母なる海」のことはほとんど分かっていないのが現状ではないでしょうか。特に、海洋生物については全体の10%程度しか把握していないと言われています。こうした海に潜む様々な未知なる生物を発見することがOcean Census事業であります。

こちらの映像をご覧ください。その昔、クラーケンと呼ばれた海の怪物がいたことは皆さんご承知の通りですが、クラーケンの正体はダイオウイカであるという説もあります。こちらの映像は深海1000mに潜む体長10m近いダイオウイカで、日本のNHKが撮影に成功しました。こちらは、海洋研究機構が撮影したヨコヅナイワシの映像です。ヨコヅナイワシは数年前に日本で発見された新種で、深海2000mに生息する深海のハンターです。次にご紹介するのは、コナス・マグナスというカタツムリで、固体自体は300年近く前に発見されています。しかし近年の研究で、コナス・マグナスの毒が鎮痛剤としてモルヒネよりも1000%強力な成分であることが分かりました。このように、これまで空想に過ぎなかった生物が発見され、また、既に発見されていた生物においても我々人類の生活を一層豊かにする可能性を秘めた新しい生態や特長が判明しています。

Ocean Census事業においてもこうした胸躍る素晴らしい発見があることを心から期待しております。また本事業には、数多くの未知の海洋生物を探査するのみならず、探査によって集められた膨大なデータを解析・管理し、こうした情報を世界中に発信していくという特徴があり、ひいては生物多様性並びに海洋環境の保全にも繋げていきたいと考えております。

御高承の通り、地球の7割を占めるのが海洋です。また、国は200近くに分かれていても、海洋は1つで繋がっており、人類共有の財産です。人類が共栄していくための最も基本的な要素が海洋であると考えれば、海の謎を解き明かしていく本事業が、我々人類の更なる発展のきっかけとなることを願ってやみません。そして、このように壮大で夢とロマンに溢れた事業は、日本財団そしてNekton財団だけでは成しえません。是非とも世界各地で活躍する海洋研究所をはじめ、お集まりの皆さんと連携しながら、海の謎を解き明かしていきたいと思います。本日は改めて皆さまと事業の船出を祝えることを嬉しく思います。
ありがとうございました。

*************

(注) 既に今回はじめて北極海の探査に入った研究グループは、数日で下記のような奇妙な生物を発見しました。(写真提供: AKMA/UiT)

奇妙な生き物@.jpg


奇妙な生き物A.jpg


奇妙な生き物B.jpg


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