「アジアの沿岸警備隊奨学生」
―政策研究学院大学修了―
日本財団では、毎年、アジア諸国で沿岸警備に従事する幹部候補生を、政策研究学院大学で英語による一年間の研究を実施している。今年はコロナの問題もあり、フィリピン、スリランカ、タイ、そして日本から2名参加の7名であった。
2015年度から開始したこの海上保安政策プログラムは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、スリランカ、インド、タイ、日本から47名が修了して第一線で活躍すると共に、ネットワークを構築して素晴らしい情報共有の場となっている。
以下は私の挨拶です。(8月30日)
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皆さん1年間ご苦労様でした。修了を心から祝福致します、本当におめでとうございます。日本の海上保安庁長官をはじめ皆さんのご配慮により、研修も十二分に行き届いたものであったと確信しております。
今日は短い時間でしたが、菅義偉・日本国総理大臣にお目にかかることができました。これも海上保安庁のご尽力があってのことでした。世界で一番忙しい国家元首は日本の首相でありまして、150日間も連続で勤務し、先日久しぶりに休暇をとったというほどです。非常に短時間ではありましたが、総理も皆さんのお立場をご理解されているので、お会いすることができたと思います。これも皆さんにとって、学問の終了と同時にお祝いをすべき事柄と考えております。
日本財団は50年以上にわたり世界の海洋問題についてあらゆる角度から活動をしてきました。当時、海洋は特別な人以外関心が十分ではありませんでしたが、今では様々な問題が指摘されてきています。例えば、気候変動や皆さんの仕事である海上を取り巻く犯罪問題、また地球の7割を占める海の70%は公海で、ここで起こる諸問題をどのように対処していくのかというのは大きな課題です。
また日本財団は、50年間で150ヶ国、1500名に及ぶ海洋の専門家の養成をしてきました。例えば、スウェーデンにある世界海事大学、マルタにある国際海事法研究所、そして船員教育であればカーディフ大学国際船員研究センターで人材育成を実施して参りました。これらの卒業生の皆さんと日本財団は人的なネットワークを構築しております。
17世紀のオランダの海洋学者グロティウスが、海洋の自由論・無限論を提唱し、学問としても確立されてきました。その為、未だに海を利用する様々なセクターの皆さんに、海は自由で無限なものであるという潜在的な意識が残っているのは事実であります。しかしながら、海を活用する多くの人にとって、まず法律を守ることが大切です。そして、その法律を順守させること、即ち、健康な海洋が存在するために最も基本的な分野において、皆さんのご活躍が必要です。既に犯罪も国際化されており、多国間の協力を必要とする問題が沢山あることは、皆さんご承知の通りです。その為には、海洋という舞台で仕事をする皆さんが、多国間で連携しネットワークを構築していくことが重要であると認識しています。国家同士の問題以前に、お互いが知っているか知っていないか、自由に話せる仲間がいるかいないかは、問題解決に大変重要であると私は経験上感じています。
皆さん1年間共に学ばれたので、お互いの友情の継続を期待すると同時に、多くの卒業生、そしてこれから皆さんの後に続いて学習する人達との間に信頼できるネットワークを国を超えて構築し、その為には日本財団も力を発揮していきたいと思っています。
コロナの影響で外国訪問がかなわないのは残念ではありますが、私は従来、年間20回くらいは海外出張をしてきました。皆さんのお国を訪問した際は、皆さんとお会いするのを習慣にしていますので、近い将来皆さんの国で皆さんの働いている姿を拝見するのを楽しみにしています。
改めて、修了に心からおめでとうと申し上げると同時に、これから皆さんが各国に戻り活躍することを期待しています。海上保安庁の皆さんにおかれましては、長官の指揮のもと、奨学生の皆さんのために尽力いただき、本日無事卒業をむかえたということで、ご助力に心より感謝を申し上げます。改めて皆さんに心からおめでとうと申し上げます。
海上保安政策プログラム第6期生と菅義偉総理を表敬