「東京パラリンピック 開幕まで半年」
―共生社会へ全面協力―
2021年2月24日付
「毎日新聞」インタビュー
東京パラリンピックの開催を巡り、年間20億円以上の資金援助など競技団体を積極的に支えているのが、競艇の収益金や寄付金で運営する社会貢献団体の日本財団だ。笹川陽平会長(82)がインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染状況は収束せず大会の開催是非が問われている現状を語った。
【聞き手・岩壁峻】
――東京五輪・パラリンピックの開催について率直な考えを。
◆予定通りの日程で開催すべきだ。場合によっては無観客もやむを得ないと思う。競技会場を満員にすることは当初の目標だったが、どのような形であっても、平時ではない時に「平和の祭典」を開催したという実績は、五輪・パラリンピックの新たな歴史として刻まれるのではないか。コロナ禍は、いわばウイルスによる平和への挑戦。必要に応じて、我々も困難に立ち向かうお手伝いをするつもりだ。日本財団では介護施設などの職員約50万人を対象にPCR検査を無償で行うことにしており、五輪・パラリンピック期間中の出場選手への検査も要望があれば検討する。
――パラスポーツ支援の根底にあるものは何でしょうか。
◆日本財団としてはパラスポーツの支援を突然始めたわけではない。1962年の設立当初から障害者の社会参画を事業の大きな柱としており、パラスポーツはその一環だ。東京パラリンピックの理念である「共生社会の実現」は我々にとっても重要なテーマ。耳の不自由な人に向けては「手話は一つの言語」という視点に立って手話教育の指導者育成を手がけている。また東南アジアではここ数十年、義肢装具士の養成を行っている。パラスポーツ支援は当然の流れだった。
――2015年には日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)を設立し、競技団体への支援にさらに注力しています。
◆きっかけは史上最高のパラリンピックと評される12年ロンドン大会だ。大会関係者に会い、「パラリンピックの成功なくして大会の成功なし」という言葉を聞いた。13年の東京大会招致成功直後のパラスポーツ界は、競技団体の事務局が幹部の自宅に置かれるなど手弁当での運営例が多かった。「国の助成金を得るにふさわしい団体になるためには、足元を固める必要がある」と感じ、東京・赤坂の日本財団ビルにパラサポを設けて共同オフィスを設置した。パラサポ設立から5年以上が経過した。何より各競技団体の職員が一堂に会することで「横」の連携が活発になってきた。
――パラスポーツをはじめとした障害者支援の今後の展望は。
◆19年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した、ビジネスでの障害者の共生を推進するネットワーク「The Valuable 500」を支援している。世界の有力企業500社が障害者雇用や障害のある消費者に向けた製品・サービスの開発などに取り組み、約40社の日本企業も加盟する。障害者雇用の促進は、共生社会に直結する。障害を持ちながら自らの限界を超えようとするパラアスリートは共生社会のシンボルだ。だからこそ選手たちの活動を支える拠点となるパラサポは、東京大会後も恒常的に活動を続けていく。