「新聞報道から」その106
―産経抄―
現在の政治、なかんずく野党のていたらくの反映ではないか。8日の日経新聞朝刊を開くと、7日の国会で行われた新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言再発令に関する政府と与野党の質疑は、取り上げられていなかった。紙面は、コロナ関連記事であふれていたにもかかわらずである。
質疑には野党第一党、立憲民主党の枝野幸男代表も立ったが、同紙は特にニュース価値はないと判断したのだろう。注目されなかったという点では、政府側の説明もしかり。国会は言論の府などといわれるものの、刮目(かつもく)するほどの議論はめったにない。
現在の国会論戦に、物足りなさを感じる人は少なくない。「相撲に例えると、効果のないツッパリや小股すくいのような技ばかりが目立ち…」。日本財団の笹川陽平会長は6日、ブログに国会中継を見ての感想をこう記した。
拓大海外事情研究所の丹羽文生教授は、日本戦略研究フォーラム季報の新年号で、何でも反対の野党を論難していた。「日本の国会における最大の不幸は、『責任野党』が存在していないことである」。立憲民主党は「社会党に先祖返りしつつある」とも。
年末には東京都内の読者から抄子に、厳しい国際情勢の中で、政府の醜聞追及に明け暮れる野党への嘆きの手紙が届いた。「どうでもいいことを針小棒大にふくらませ、カネ、タイコで大騒ぎして彼らは何を得たいのでしょう」。
宮沢賢治の90年以上前の詩『政治家』が頭に浮かんだ。「あっちもこちも ひとさわぎおこして いっぱい呑みたいやつらばかりだ」。賢治は、そんな政治家らの末路を「ひとりで腐って ひとりで雨に流される」と描くが、どうしてしぶとく、今も国会の雨どいをつまらせ停滞させている。
※2021年1月9日付「産経新聞」です。