「中国の人工知能」
―既に日本を凌駕―
アメリカのハドソン研究所・中国戦略センターのマイケル・ピルズベリー所長の著書「中国『100年マラソン』の全貌」は衝撃的な内容である。
ピルズベリーはこの中で、中国は建国(1949年)から100年になる2049年には中国主導の世界秩序、即ち世界の覇権国家になるべく着実にプランを実行してきており、アメリカは長い間、中国に騙され続けてきたという。アメリカの対中政策決定者は、1972年のニクソン訪中以降、「脆弱な中国を助けてやれば、中国はやがて民主的で平和的な大国になる」、「決して世界支配の野望を持つことはない」と信じ込んでいたが、こうした仮説はすべて間違っていた、というのだ。
ショックだったのは、レーガン元大統領、中曽根元首相の“ロン・ヤス関係”をメディアがもてはやしていた時期にも、アメリカが中国に軍事機密はもちろん、あらゆる分野の専門家の養成に密かに協力していたとされている点である。このあたりに貧しかった中国が文化大革命終結(1976年)からたった42年で高度経済成長を達成し得た答えのひとつがあるような気がする。習近平国家主席が打ち出した一帯一路政策が世界の覇権国になるのを狙いとしているのは間違いあるまい。
中国の米国留学生は今や50万人に上るともいわれ、最先端技術の取得に懸命である。1月14日付けの日経新聞によれば、電気自動車(EV)のモーター研究論文は今やアメリカと並び、国際会議の発表者数はアメリカ1011人に対し中国は950人と拮抗している。
日本は3位につけているものの258人と大きく水をあけられ、同紙は「技術力、日中逆転も」の見出しで、今後、急速な普及が見込まれるEVの競争軸となる蓄電池について「中国が主役に躍り出るかもしれない」と指摘している。
アメリカのシンクタンクCNASのエルサ・カニア氏は論文で、中国の人工知能(AI)の軍事利用は急速にアメリカに追いつきつつあると指摘。当の中国は「新世代AI開発計画」を発表し、2030年までにAIで世界をリードする野心的計画を持っているという。
翻って日本を見ると、国会は森友学園、加計学園問題に自衛隊イラク派遣時の日報問題も加わり疑惑解明に向けた集中審議一色に染まっている。政府の説明と食い違う文書が次々に見つかり、日報問題はシビリアンコントロールにも影響する事項だけに徹底議論は当然としても、一方で国際情勢は日々、激しく動き財政再建など喫緊の国内課題も山積している。
世界の中の日本であり、日本だけが世界の動きと無縁などということは有り得ない。4月27日には北朝鮮と韓国の首脳会談、5月中には米朝首脳会談が予想され、場合によっては日米同盟の在り方が問われ、日朝国交正常化問題が出てくる可能性もある。
「ウサギとカメ」の昔話ではないが、国会がカメのような状態であってはいけない。モリ・カケ問題も含め、もっと幅広く、バランスの取れた審議をしてほしい。それが筆者の願う国会の姿であり、国民の多くも同じ目線で今の国会を見ている気がする。