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1月18日(水) [2017年01月18日(Wed)]

1月18日(水)

7:25 財団着

13:00 免震工事打合せ

13:30 谷喜久郎 新東通信会長

14:00 大谷雅実 海上技術安全研究所所長

14:30 国際フェローシップ 来年度の募集事業打合せ
 

「アメリカ出張」 [2017年01月18日(Wed)]

「アメリカ出張」


明日1月19日より、アメリカ・ワシントンDCに出張、第45代ドナルド・ジョン・トランプ大統領就任式に出席します。

帰国は22日です。


「福島放射線と健康問題」その2―現実化しつつある5年前の杞憂― [2017年01月18日(Wed)]

「福島放射線と健康問題」その2
―現実化しつつある5年前の杞憂―


前回のブログでも触れたが、私は東日本大震災が起きた2011年末、産経新聞の「正論」欄で、1ミリシーベルト以上を除染の対象とした国の方針について「実現可能な数字なのか」と疑問を投げ掛けた経過がある。

さしたる反響を呼ばなかったのは、放射能に対する恐怖が極限に達した当時の状況の中で止むを得ない面もあったが、実はこの問題、福島原発事故から5年以上経過した現在も8万人を超す被災者が帰還できず、復興が大きく遅れる一因になっている。

昨年2月には、丸川珠代環境大臣(当時)が講演先で「1ミリシーベルトは誤り」、「民主党の政策の失敗」と発言したのに対し、1ミリシーベルト決定当時、民主党政権で環境大臣だった細野豪志衆院議員(民進党)が後日、衆院予算委員会で激しく抗議するなど、政治判断の当否・責任をめぐる論争もいまだに続いている。

決定に先立ち当時の内閣府の有識者会議には、「当面20ミリシーベルトを目標に除染を進め、長期的に1ミリシーベルトを目指す」とする雰囲気が強かった。国際放射線防護委員会(ICRP)が、一般人が平常時に受ける放射線量の限度を、自然放射能や医療での被ばくを除いて1ミリシーベルトとする一方、事故発生など緊急時の目安を「年間20〜100ミリシーベルト」としたのを受けた考えとみられるが、1ミリシーベルトを強く求める福島県内の市町村議会など地元の反対で結局1ミリシーベルトになった。

放射能に対する住民の恐怖は当然で、その声に政治が押し切られたのも当時の混乱からすれば、理解できないわけではない。残念なのは、当のICRPのメンバーもその年(2011年)9月に福島で行われた第1回の国際専門家会議に参加、「チェルノブイリに比べ福島の被ばく線量は低く、このレベルでリスクはない」、「1ミリシーベルトの除染は無意味」といった指摘をしていたのに、こうした見解が広く共有されなかった点だ。

除染作業は表土や樹木を集めて捨て、家屋を洗い流して進められる。膨大な堆積物の中間貯蔵施設の整備も遅れてり、世界平均で2.4ミリシーベルト、日本平均で2.1ミリシーベルトに上るとされる自然放射能の存在を考えると、1ミリシーベルトの除染が完了する目途は全く見えてこない。

膨大な除染対策費が一部の建設業者を潤すことはあっても、福島県や福島の農産物に対する偏見・差別はなくならず、被災者の帰還は遅れ、避難先での災害関連死もさらに増える。「正論」での指摘が現実となりつつある現実を憂慮する。

除染の基準は見直すべきである。今からでも遅くはないはずだ。それが政治の責任と思う。参考までに当時の拙稿を掲載し、ご批判を仰ぎたい。

**************


2011年12月19日掲載
【正論】日本財団会長・笹川陽平 
1ミリシーベルトは実現可能な数字なのか

2011年11月29日
産経新聞 東京朝刊

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 「福島の状況はチェルノブイリに比べ限定的で被曝(ひばく)線量も低く、怖がる必要は全くない」、「福島の子供たちの甲状腺での線量は低く、このレベルで何らかのリスクがあったケースはない」−。日本財団がこの9月、福島県立医科大で開催した「放射線と健康リスク」に関する国際会議に出席した内外第一線の専門家は、2時間を超す長時間記者会見でこう言い切った。

 ◆チェルノブイリとは違う
 2日間にわたる会議では、全県民を対象に福島県が実施する健康調査の重要性や政府と地方自治体、国際機関などによるタスクフォースの設置など8項目を内容とする「結論と提言」をまとめ、会議を後援した政府にも提出した。

 日本財団では1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の後、20万人を超す子供の国際調査を10年以上支援。会議は、この中で培われた世界保健機関(WHO)や国際原子力機関(IAEA)、国際放射線防護委員会(ICRP)など専門機関とのネットワークを利用して実現し、両事故の違いが会議の焦点のひとつとなった。

 チェルノブイリ事故では大爆発した炉が2週間にわたって燃え続け、ロシア、ウクライナ、ベラルーシを中心に広大な地域に放射性物質が飛び散った。自身も被災者であるウクライナ医学アカデミーのチュマック博士は「福島の状況はチェルノブイリとかなり違う」とした上で、避難を余儀なくされた場合の悲惨さとストレスを指摘、「住民が福島を離れるのは害の方が大きい」と語るなど、冒頭の見解が大勢を占めた。

 ◆遠のく故郷に戻る道
 前置きが長くなったが、私はかねて、正反対と言っていいほどに開きがある難解な原発論議の現状が国民の不安を助長し、国や行政の選択肢を狭める結果になるのを危惧してきた。環境省が先に打ち出した除染の基本方針を見ると、この懸念が現実になった気がする。環境省はこの中で、年間の被曝線量が20ミリシーベルトを超える地域を「特別除染地域」に指定し国が除染を行う一方、20ミリシーベルト以下〜1ミリシーベルト以上の地域は自治体が除染を行い国が財政支援する、とした。当初、5ミリシーベルト以上を下限としていたが、自治体や住民の反対で1ミリシーベルト以上に広げたという。

 果たして1ミリシーベルトが実現可能な数字だろうか。国が除染の対象とした以上、誰もがこの数字を安全性の基準と見る。作業が遅れれば不安が広がり、環境省がいくら年20ミリシーベルト以下の地域の避難は不要と呼び掛けても被災者が故郷に戻る道は遠のく。

 除染が不要と言っているのではない。しかし、除染にはただでさえ気が遠くなるような時間がかかる。チェルノブイリの除染作業は2065年の完了を目標に現在も続けられている。5ミリシーベルト以下から1ミリシーベルト以下にしたことで、福島県内に限られた対象地域は周辺の栃木や茨城、群馬、千葉にも広がる。莫大(ばくだい)な費用を見通すのも難しく、作業を担う自治体や住民の負担も重くなる。

 福島大が東電福島第1原発の周辺8町村の全世帯を対象に行ったアンケートで、回答を寄せた人の4分の1以上、34歳以下では過半数が「自宅に戻らない」と答え、その理由(複数回答)として8割以上が「除染が困難」を挙げるなど、住民が除染の難しさを先取りしている面もある。

 ◆福島で住民と向き合え
 加えて、年1ミリシーベルトとなると世界平均で年2.4ミリシーベルトとされる自然放射線との兼ね合いも出てくる。国際会議でもICRPのゴンザレス副委員長はインドをはじめ世界各地に高い放射線を発する地域がある点を指摘、「年20ミリシーベルトは危険な数字ではない」と語った。

 今は平時ではない。依然、非常事態が続いている。1ミリシーベルトは平時の目標値であり得ても、非常時の選択としてはあまりに実現困難な数字ではないのか。当初の5ミリシーベルトならともかく、1ミリシーベルトに広げたことで、復興への道のりが見えなくなったような気さえする。英紙フィナンシャル・タイムズも11月10日付の特集で、仏核物理学者の見解として、住民が避難すべき基準を年10ミリシーベルト以上とするとともに1ミリシーベルトを「非現実的」と指摘した。

 世界では多くの国が今後も原発を必要とし、老朽化が目立つ施設も多い。広島、長崎の原爆に加え、原発事故も経験した日本がこの危機をどう乗り越えるか、世界は注目している。その経験と教訓は世界の共有財産ともなる。

 事態を前進させるには、学者・専門家が広島、長崎やチェルノブイリのデータを基に「信頼のおける統一見解」を示すことで、国民の不安を少しでも緩和するしかない。会議では「自分たち科学者は住民が分かるようなコミュニケーションがうまくない」との反省の言葉も出た。専門家は今こそ被災地に入り分かりやすい言葉で住民の疑問に直接答えるべきである。

 住民が不安から故郷を離れるのは原発事故の最大の悲劇である。福島県民の絆を保つためにも国、自治体、専門家は一致して協力する必要がある。
(ささかわ ようへい)

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