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resize.png日本財団はハンセン病の差別撤廃を訴える応援メッセージサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設。皆様からのメッセージを随時募集・配信しています。
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12月2日(金) [2016年12月02日(Fri)]

12月2日(金)

9:35 財団着

10:00 上瀧和則 日本モーターボート選手会会長

16.12.02 選手会より寄付金.JPG
日本モーターボート選手会の上瀧会長より
「社会貢献ボートレース基金」として15,000,000円
女子レーサー一同より「災害復興支援特別基金(熊本地震支援)」として225,000円
ご寄付頂きました。
命を懸けて闘っている選手のみなさん、ありがとうございます!

 
12:00 鳥井啓一 日本財団参与

14:30 マシュウー・ウィンターズ イリノイ大学政治学部准教授(笹川奨学生)

image1.jpeg
マシュウー・ウィンターズ准教授

「ハンセン病制圧活動記」その38―バチカンでのハンセン病国際シンポジウム― [2016年12月02日(Fri)]

「ハンセン病制圧活動記」その38
―バチカンでのハンセン病国際シンポジウム―


松丘保養園機関誌『甲田の裾』
2016年3号

WHOハンセン病制圧特別大使
笹川陽平


 6月7日から6月13日までバチカン市国を訪れました。今回の目的はハンセン病の国際シンポジウムに参加するためです。「ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重と総合的なケアに向けて」と題した本シンポジウムは、ローマ教皇庁保健従事者評議会、善きサマリア人財団と日本財団が主催で開催しました。キリスト教の総本山であるバチカン市国で、世界中のハンセン病回復者と宗教指導者が一堂に会して、宗教とハンセン病との関わりについて議論を交わすことは初めてのことです。 

写真@.jpg
シンポジウムに参加したハンセン病回復者の方々と


この会議は、2013年にフランシスコ教皇が、教皇庁の出世主義を「ハンセン病のように悪しきこと」という差別的な比喩として使われたことに対し、私からこのような表現を教皇様がされることは一般の人々のハンセン病に対する誤解を助長する恐れがあるため、再びないようお願いの書簡を送ったことがきっかけでした。ハンセン病についての社会の誤解を解き、患者、回復者、その家族に対する差別をなくすことを目的とした社会啓発のための国際会議が必要であると考え、教皇庁と日本財団で共同開催することを提案して実現したものです。

 シンポジウムは6月9日、10日の2日間にわたって開催され、45カ国からハンセン病回復者をはじめ、宗教指導者、国連人権理事会諮問委員、医療関係者、NGO関係者、回復者、市民ら約250人が参加しました。

写真A.jpg
45カ国約250人が参加したシンポジウム


宗教指導者からはローマ・カトリック教会、ユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教の代表からハンセン病の宗教的解釈と救済の事例が紹介されました。中でもイスラム指導者の「慈悲を持って病人に接することがイスラムの教えであり、家族のつながりを切ってはならない、病人を癒さなければならないことはコーランに書いてある」とのスピーチは特に印象深く、改めて宗教の果たす役割に期待したいと感じました。

また、日本、インド、ブラジル、ガーナ、中国、韓国、フィリピン、コロンビアから回復者が登壇し、ライフヒストリーと差別解消に対する取り組みが共有されました。長島愛生園の石田雅男氏は「10歳で発症し、長島愛生園に入所した。プロミンの出現によってハンセン病は治る病気となり、人権意識がよみがえった。その後、仲間と一緒に『らい予防法』の廃止運動に関わってきた」と戦後まもなくの様子を振り返り「現在、日本のハンセン病資料館を記憶遺産への登録を目指して取り組んでいる。大変な仕事だが、残酷で悲惨な歴史を繰り返してはいけないという思いがある限り、自分たちの使命だと思っている」と現在の活動と目標を力強く語りました。石田さんの生き様や取り組みは、不当な差別や習慣が残っている国の回復者にとって大いに勇気付けられるものであったと思います。

写真B.jpg
自らのライフヒストリーを語る石田氏


シンポジウム2日目の最後には、議論や発言を元に纏められた「結論と提言」が発表されました。社会に残る偏見・差別により、いまだにハンセン病患者、回復者とその家族の人権が十分に確保されていないことが指摘され、偏見・差別の解消に向けて、宗教界も重要な役割を果たしていくべきと明記されました。また、偏見を助長するような用語、特に「leper」の使用は避けるべきとの提言がなされました。

翌日6月11日は、回復者と国連人権理事会諮問委員とのセッションが行われました。これは、各国におけるハンセン病差別の状況を共有し「ハンセン病差別撤廃のための原則およびガイドライン(P&G)」がどの程度普及しているかを国連人権理事会諮問委員が確認する場として設けられ、回復者の声が直接人権専門家に届く有意義なセッションとなりました。また後半は各国の回復者よりそれぞれの課題や取り組みが紹介されました。コロンビアの発表者の「政府の対策は進んでいない。差別解消のためには自分たちが中心になって行動を起こさなければならない」との言葉は、その他の回復者を奮起させたようでした。

6月12日の日曜日はサン・ピエトロ寺院広場で「いつくしみの特別聖年」の教皇行事として開催された「病者と障がい者のための聖年」特別ミサに参加させて頂きました。世界中からおよそ7万人の障がい者、医療関係者、福祉関係者、キリスト教信者、一般参加者が集まり、フランシスコ教皇の話に熱心に耳を傾けていました。この日は朝から小雨が降っていましたが、ミサが始まる前に雨がピタッとやみ、空が明るくなってきたのを見たとき、私はこのミサもシンポジウムも神様に祝福されている証をみたような感動を覚えました。

ミサの中でフランシスコ教皇から「『病者と障がい者のための聖年』の一環としてローマでこのほど、ハンセン病を患った人々の治療のための国際会議が開かれた。感謝の念をもって開催者と参加者を歓迎し、この病気との闘いにおいて、実り多き取り組みが成されるよう切望する」とのメッセージがあり、会場から大きな拍手がおこりました。中でも、カトリック信者の多い南米やフィリピンの回復者の感動は一際大きいようでした。全世界で約12億人の信者を有するローマ・カトリックの総本山であるバチカンからハンセン病の差別撤廃のメッセージが発信されることで、社会に大きな影響を及ぼすことが期待されます。

写真C.jpg
ミサに先立った8日に教皇にお会いする機会を得ました


これまでに何度かお話したかもしれませんが、私はハンセン病の問題の取り組みをモーター・サイクルの例えを使います。前輪は医療面の問題、後輪は社会面の問題、そのふたつが同じ速度で回転しなければ、問題の解決は困難です。医療面の問題については、多剤併用療法(MDT)の導入により、これまで世界中でおよそ1600万人の患者が治療されてきました。しかし、社会面の問題、すなわち偏見や差別は根強く残り、患者や回復者、またその家族を深く苦しめています。宗教はこれまで多くの人に思いやりの心や勇気を与え、苦しみを癒す役割を果たしてきました。宗教指導者、回復者、そして私たちが問題を共有し、共に活動を行うことで、患者や回復者の苦しみを軽減し、彼らが自らの尊厳を回復することを支援することができると信じております。

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