「中国の小話」その41
―中国人と酒―
中国人から酒を飲む機会を奪うと、行政、経済はおろか、極端な場合、社会全体が機能不全に陥るのではないかと思うほど酒席は潤滑油の役割を果たしている。情報を得ることが最重要事項の中国にあって、酒が入るとつい口が軽くなり、相手の人柄や本音は勿論、様々な情報を得られるからである。
訪中の時は私が首席代表を務めるが、酒席代表は尾形武寿理事長である。人民解放軍と自衛隊との交流を笹川日中友好基金が主催していた頃、中国の青島(チンタオ)の海軍高級幹部との夕食会では、何と! 70度の酒で乾杯、乾杯となった。しかし、私は中国での酒席は『戦い』だと思っているので、決して酔うことはない。その時は作戦上、青島海軍基地の最高幹部を標的に、日本側出席者が集中的に乾杯を求めたので、ダウン寸前、武官に支えられて退出してしまった。
最近はこのような醜い飲み方は減ったようだが、酒席がないと何も始まらない社会であることに変わりはない。ただ、このところ習近平の腐敗追放運動の余波で、高級料理店は開店休業の状態が続き、この自粛は末端の人々にまで影響しているという。
そこでこんな酒にまつわる小話が出来たのであろう。
指導部の幹部が酒を飲まなければ、友人はできない。
中堅幹部が酒を飲まなければ、情報を入手できない。
末端にいる幹部が酒を飲まなければ、昇進の望みはない。
規律検察委員会の幹部が酒を飲まなければ、摘発の手がかりが見つからない。
一般市民が酒を飲まなければ、楽しみがない。
男女が酒を飲まなければ、チャンスが生まれない。
―飲み方で人の業種を見破る!―
酒を水のように飲む人は、建設委員会の役人。
酒を一人当たり一本飲む人は、財政部門の役人。
勧めなくても進んで飲む人は、裁判所の役人。
一口で飲み干す人は、公安機関の役人。
一本の八割を飲んでも酔わない人は、国税部門の役人。
白酒、ビール、ワインをごっちゃで飲める人は、組織のトップ。