「タイ・ミャンマーの国境」
今年の6月、ミャンマー少数民族福祉向上大使の辞令を受けてから再三再四、タイのチェンマイでミャンマーの少数民族武装勢力との会談を精力的に続けている。内容は、困窮する少数民族の実態把握と、日本財団が進めている人道活動に基づく緊急支援物資(主に米と医薬品)の配布方法等に関してである。
ご承知の通り、タイはミャンマーと長い国境線で隣接しており、多くの難民を受け入れ、国境の往来も自由度が高く、寛容な対応をしてきたタイ政府のミャンマー少数民族への取り扱いについては大いに評価されるべきである。
先般、メソッドにあるミャンマーの難民に対する医療サービスを無料で行っていることで有名なメータオ・クリニック視察の合間に国境見学に訪れた。
タイのメソッドとミャンマーのカレン州ミャワディーは、幅約100メートルの川で対峙している。国境には立派な道路があり国境警察が監視しているが、両国の住民は正式なこの道路を使用せず、川船で自由に往来していた。この場所だけで日に5000人の往来があり、片道約50円で乗船できる。国境警備隊が見て見ぬ振りをしているのは袖の下があるからだと案内人は説明してくれたが、なんとものどかな風景である。
川の向こうはミャンマー。有刺鉄線と川の間は緩衝地帯
通常、国境線は川の中央線だと思うのだが、ここの国境ではタイ側の堤のところに鉄条網があり、ミャンマーの住民が小店を開いていかがわしい雑誌や「大人のおもちゃ」、バイアグラは4粒約250円で売られており、お客は鉄条網越しに商品を受けとっていた。
タイ側の緩衝地帯に店を出すミャンマー人から物を買うタイ人
この川とタイ側の堤の間の緩衝地帯をNOMAN’S LAND(誰の土地でもない)と呼ぶそうで、無法地帯となっており、犯罪人が逃げ込んでもタイ、ミャンマーの警察は捜査しないそうである。
背丈ほどの葦(あし)が密集する茂みの中を覗くと、低いバラック小屋が点在し、洗濯物が屋根に干してあり、厳しい生活が垣間見られた。