―温暖化「島嶼国の叫び」を世界に― [2026年06月29日(Mon)]
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―温暖化「島嶼国の叫び」を世界に― 産経新聞【正論】 2026年6月12日 急速な温暖化で海にも海水温の上昇やサンゴの白化など、さまざまな異変が起きている。最も深刻な影響を受けているのが、温室効果ガスの排出量が世界の1%にも満たない小島嶼(とうしょ)国だ。 停滞する温暖化防止を加速させるためにも小島嶼国の訴え・叫びを国際社会が共有することが何よりも必要。そんな考えで日本財団は6月3、4両日、東京都内で世界島嶼国海洋会議を開催した。 温暖化に関連して、小島嶼国に特化した国際会議が民間主導で開催されるのは異例のケース。外務省とユネスコ政府間海洋学委員会(IOC/UNESCO)の協力(共催)も得た。 ≪天皇陛下ご臨席≫ 太平洋、インド洋、カリブ海など世界の小島嶼国35カ国の首脳や閣僚、さらに20を超す国連機関や研究機関の関係者ら約300人が出席する会議となった。 初日の開会式には天皇陛下と訪日中のノルウェーのホーコン皇太子もご臨席いただき、天皇陛下から「国際協調によって地球規模の課題の解決につなげようとしていることに敬意を表します」との、お言葉を賜った。 高市早苗首相からは「会議を主導した日本財団に敬意を表します」との激励もいただき、身に余る光栄に責任の重さを改めて痛感した。 小島嶼国は太平洋などに点在する島国で、国連による公式な定義は「小島嶼開発途上国(SIDS)」。37の国連加盟国と20の自治領、非独立地域からなる。国連環境計画(UNEP)が2025年に発表した報告書によると、24年に世界で排出された温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)換算で577億トン、うち小島嶼国からの発生は全体の1%に満たない。 しかし、激甚化する大型暴風雨など気候変動の悪影響を最も大きく受ける。南太平洋に位置するツバルのように温暖化による海面上昇で満潮時の水没危機に直面する国も出ている。 小島嶼国連合(AOSIS)の議長で、海洋会議の共同議長を務めたパラオのウィップス大統領は「海は今、私たちの地域社会が適応できる速度よりも速く変化している」、「現在の海洋ガバナンス(統治)は最も脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々に対して十分機能していない」と国際社会の取り組みに不満を述べた。 ≪危機の最前線≫ 気候変動を巡る国際会議は近年、何度か開催されている。しかし、「先進国と途上国の対立」や「各国の利害関係」などが複雑に絡み、“待ったなし”の状況にある温室効果ガスの削減も思うように進んでいない。最前線で海と危機に向き合う島嶼国の訴えを国際社会は真剣に受け止め、共有する必要がある。 広大な排他的経済水域(EEZ)、国連での投票権もあって、島嶼国の結束は国際社会を動かす力に成長しつつある。日本では太平洋島嶼国中心のイメージが強かった島嶼国問題を世界に広げるため、今回は世界の島嶼国に広く参加を呼び掛けた。 日本財団は1988年に「太平洋島嶼国会議」を開催して以降、一貫して海の課題に取り組み、158カ国で2000人を超す海の専門家を育ててきた。そのネットワークが世界の海底地形図作成や、いまだ90%が発見されていない海洋生物の新種発見など多くのプロジェクトを可能にしている。 今後は島嶼国が国際社会とのつながりを強化し、地域、世代を超えて、未来を切り拓(ひら)いていく必要がある。そのためにも、まずは小島嶼国の将来を担う人材育成を急ぎたく考える。 今後、気候問題のハブ機能を持つ組織を東京に設けるほか、5年後に2回目の世界島嶼国海洋会議を開催。当面10年間に1億米ドル(約160億円)の支援を予定している。 会議を共催したIOC/UNESCOは海洋科学や海洋観測などの調査・研究を国際的に推進する国連唯一の専門機関。海の保全と利用を両立させるため「持続可能な海洋計画と管理(SOPM)」の普及に努めている。共に手を携え、150を超える加盟国の協力も得たいと考えている。 ≪健全な海を引き継ぐ責任≫ 高市首相からは「異常気象や海面上昇に苦しむ国や地域への支援に取り組む」との力強い表明もあった。わが国は1万4000を超す島からなる島嶼国家、その先頭に立つ責任がある。そうした取り組みが、落ち込みが目立つ国際社会での発言力を取り戻す力にもなる。 日本人は古来、すべての命を育む海を「母」に例え、敬い、慈しんできた。温暖化の防止は、海の保全と持続可能な利用が両立して初めて、現実的な実現可能性が見えてくる。 海の未来なくして人類の未来はない。現在を生きるわれわれには、1000年、2000年後の子孫に健全な海を引き継ぐ責任がある。そんな思いを込め、「民」の立場で海洋問題に向き合っていく決意を新たにしている。(ささかわ ようへい) |






