「看護師に夢を」―海外留学制度― [2023年09月15日(Fri)]
「看護師に夢を」 ―海外留学制度― 日本財団は世界中で人材育成事業を展開しています。著名な世界69大学の修士・博士課程の卒業生は既に16,000人を超え、それぞれの国は勿論のこと、世界中で各界で活躍されておられます。 中国の笹川医学奨学生は35年間で2,200人を超え、中国医学界の一大勢力になっており、先般人民大会堂で35周年式典を行ったことは既に報告しました。また北京大学国際関係学院は中国の人文科学界ではトップの存在で、卒業生は学者や国務院をはじめ優秀な官僚として、また、メディアや起業家としても活躍されています。 海洋分野では、世界海事大学、ニューハンプシャー大学の沿岸・海洋マッピングセンター、国際海事法研究所、国際海洋法裁判所、国連海事・海洋法課(UN DOALOS)など、これまで世界154国から1,721人の留学生を派遣してきました。最近では世界的に遅れをとる海洋開発分野の人材育成のため、スコットランド、ノルウェー、オランダやアメリカにも我が国の若手人材を派遣しています。 聴覚、視覚障がい者の留学制度も実施しています。 ベトナム、カンボジア、ミャンマーでの小学校建設は1,000校を超えました。 その他、義手義足の学校をカンボジア、スリランカ、ミャンマー、インドネシア、フィリピンにも建設し、努力を続けているところです。 前置きが長くなりましたが、先般笹川平和財団では、将来の国際社会で活躍する人材を求めて、4年間の留学費である学費、生活費、航空運賃全てを負担、一人約4年間で約5,500万円を支援する奨学制度をスタートさせました。それと同時に笹川保健財団では、世界有数の看護師数を誇る日本から世界で活躍できる人材育成のために、アメリカの優れた看護系の大学への留学制度を設置しました。既にコロンビア大学、エモリー大学、ハーバード大学、ジョンズホプキンス大学、カルフォルニア大学に修士や博士を目指す5人の方が決定し、更に多くの看護師さんが当方の定めたアメリカの10大学を目指して挑戦する準備を進めております。 医師法での看護師は医師の補助員と定められていますが、それを脱皮し、私の主張する看護診療士制度を創設の上、過疎地における高齢者のための在宅看護サービスの指導者になってもらいたいものです。 以下は壮行会での私の挨拶です。 **************** 2023年7月18日(火) 日本財団会長 笹川陽平 私は人材育成が大事だと、これまで世界中で人材育成事業を実施して参りました。例えば、世界69の大学の修士・博士課程の学生に対する奨学金事業は既に35年継続しており、これまで16,000人のフェローを輩出し、皆さん活躍されています。 しかし残念ながら、国際社会の中での日本の地盤沈下、存在感は急速に落ちています。これまで私たちは主に外国人を支援してきました。明治以来、日本は資源も乏しくあるのは人材と考え、人材育成に力を入れてきました。しかし現在の我々はこの点が十分ではありません。そのため私の最後の仕事は世界を舞台に活躍してくれる日本の人材を育成することと考えており、喜多会長と考えが一致しました。 看護師の皆さんは日夜努力されています。しかし、今一つ、或いは語弊があるかもしれませんが、看護師の社会的地位をもっと向上させる必要があると考えています。現在そして近い将来を考えても、日本の保健医療は看護師なしには成り立たちません。日本は世界に誇る国民皆保険がありながら、看護師が活躍する場が少なく残念だと感じています。こうした意識から皆さんのお力になれないかと考えてこの奨学金制度を設けました。海外に行って今一度汗を流して勉強しようという方が沢山いらっしゃると知り、大変心強く思っています。 勿論日本の中でもやらなければならないことが沢山あります。先般、産経新聞の正論にも投稿致しましたが、例えば診療看護師制度(NP)といった制度です。こうした制度は日本に必要不可欠だと思いますが、現状はうまくいっていません。私も制度創設に向けて闘って参ります。しかし皆さんには、これからの日本の看護師界のみならず、できれば世界を舞台にして働き、活躍できる人材になっていただきたいと思っています。 いまふと思い出しましたが、私が結婚した時に中曽根康弘・元総理がスピーチをして下さり「書」も下さいました。そこには「風雪は人を磨く」と書かれていました。ご存じの通り、辛いこと、困難なことにぶつかり、それを乗り越えた時に人間は一回りも二回りも強くなるということです。徳川家康ではありませんが、悩まない人などおらず、人生は悩みと苦しみの連続です。こうしたことを乗り越えることで人間は成長します。そういう悩みや苦しみを乗り越えることが自分自身を作っていくのだと、物事を肯定的に捉えていく必要があると思います。 海外に行って勉強しようという優秀な皆さんですからそれほど困難に感じることはないかもしれませんが、世界には多種多様な価値観があり、外国での生活には様々な困難が待っているかもしれません。しかし国際化の時代で活躍するには、出来るだけ多くの友人を作っていただくことが大事であると思います。世界は肩書だけで生きていけるわけではありません。より多くの人を知っていることが信頼の1つの大切な基準になります。友人、知人を数多くつくることも海外での大事な仕事の一つです。こうした人脈は将来、必ず生きてきます。皆さんには、勉強はもとより、大志をもって世界に羽ばたく人になっていただきたいというのが私や喜多会長の願いです。 どうぞ元気に留学いただきたいと思いますし、まだ留学先が決定していない人もいると伺っていますので、そうした人も初志貫徹でご自分の希望がかなえられるよう努力していただき、努力が実った時は一回りも二回りも大きく成長していると思います。飛行機がない時代は死ぬかもしれないとの思いで出発前に水盃を交わしたものでした。今や時代も変わってそうした悲壮感はありませんが、1つだけ覚えておいていただきたいことがあります。それは、この奨学金は皆さん個人のための奨学金ではないということです。皆さんには将来指導者となって多くの人を指導して欲しいという願いを込めて提供するということを忘れないでください。押しつけがましいことは言いませんが、将来皆さんには世界に羽ばたいていただき、指導者の一人になって欲しいという夢を我々が持っていることを記憶に留めてください。ありがとうございました。 |