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「首相の「武士道精神」に期待する」 [2026年03月09日(Mon)]

―首相の「武士道精神」に期待する―


産経新聞【正論】
2026年3月3日


過日、外国人の友人から2月の衆議院選挙での自民党大勝について問われ、「高市早苗首相は『与党(自民党、日本維新の会)が過半数を割ったら即刻退陣する』と退路を断って衆院解散に踏み切った。その潔さに有権者が好感を持ったのが一番の勝因」と“解説”した。

筆者が知る限り、敗れた場合の退陣を明言して選挙に臨んだ宰相はいない。それを踏まえ「これこそが武士道精神。首相は女性でありながら自らこの精神を行動で示した」と加えると、友人は甚(いた)く納得し驚きを隠さなかった。


≪「新黒船時代」≫
2月18日には「一強」ともいえる強固な基盤を背景に第2次高市内閣が発足。同20日の施政方針演説で首相は「日本列島を強く、豊かにするのが私の使命」とした上で、「日本と日本人の底力を活(い)かし、力強い経済政策と外交・安全保障政策を推し進める」と決意を述べた。

施政方針演説は約1万3000字。「日本の総合的な国力を徹底的に強くしていく」、「平和と繁栄を創る『責任ある日本外交』」、「望ましい安全保障環境を自ら創出」、「強い地域経済の構築」、「日本経済と地方経済の潜在力を解き放つ」など、力強い言葉を並べた。

その上で「挑戦しない国に未来はない」、「守るだけの政治に『希望』は生まれない」、「『未来は明るい』と自信を持って言える国を創り上げていく」と最後を締めくくった。

日本は昭和43年から、ほぼ40年間、米国に次ぐ世界2位の経済大国として最盛期には世界の国内総生産(GDP)の約17%を占めた。しかし令和5年には4.0%、世界4位に後退し、経済国家としての存在感も大きく低下している。

一方で戦後80年間続いた国際秩序はロシアのウクライナ侵攻などで無極化が一段と進む。ロシア、中国、北朝鮮の核保有国に囲まれた日本の安全保障環境は厳しさを増し、ペリーが率いるアメリカ艦隊(黒船)が開国を迫った幕末になぞらえ、「新黒船時代」と指摘する声もある。


≪強いリーダーを待望≫
高市政権は、国の将来に対する不安が高まり、強いリーダーの出現を待望する世相の中で誕生した。ブレない姿勢が若年層を中心にした高い支持率、衆院選の圧勝に繋(つな)がり、その後も70%前後の高い支持率を維持している。

強い政権基盤を背景に、公約した政策をどう実現していくか、手腕が問われるのはこれからである。本丸にあるのが「責任ある積極財政」。首相は物価高対策として、2年間限定で食料品の消費税をゼロにすると公約している。

それに伴う税収減約5兆円をどう捻出するか、まだ見えていない。首相は戦略的な財政出動を行い、政府債務残高の伸び率を成長率の範囲内に抑え、対GDP比を安定的に引き下げていく方針を示している。その成果に期待したいと思う。

今回の選挙ではもう一つ、政治家が考える以上に有権者が「政治をはっきり見つめている」現実を、あらためて実感した。立憲民主党と公明党が合流した「中道改革連合」の惨敗がそれだ。

関係者は、衆院選公示わずか5日前の合流で党の知名度が広がらなかった、などと弁明しているが、新党として、どのような国づくりを目指すのか、はっきりさせないまま選挙に臨んだ姿に、国民が甘さ、無責任さを感じ取ったのが敗因と考える。

高市首相は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を目指す」とも述べている。どの政権であっても、国民の厚い信頼、支持があって初めて安定し、力を発揮することができる。

高市首相の台湾有事をめぐる発言をきっかけに冷え込んだ中国との関係も対立解消には時間がかかる。首相の師である故安倍晋三元首相は、政権を安定させた上で「戦略的互恵関係」を呼びかけ、対話の窓口を開いた。

日本外交を再生させるカギは何よりも政権の安定である。国内基盤が弱い政権は国際社会で相手にされない。高市首相は日米同盟を基軸に価値観を共有する同志国との多角的な安全保障協力を進め「世界から頼りにされる日本」を目指すとしている。これも政権の安定があって初めて可能になる。

≪政権の安定こそ≫
「今日より明日はよくなる」と実感できれば、国民の支持は高まり、政権は安定する。それが実現されたとき、この国が国際社会で発言力を高め、落ち込んだ存在感を回復する道も拓(ひら)けてくる。

わが国初の女性首相の誕生に世界は驚き、今後どのようにこの国を引っ張って行くか、見守っている。

長く続いた政治の低迷を脱するには、「決められない政治」と決別する勇気と覚悟、行動力が必要である。初の女性首相に、その力が十分あると信じて、しばし政権の動き、国民の反応を見守りたく考える。(ささかわ ようへい)
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