「ウッズホール海洋研究所」 ―100周年記念メダル受賞― [2025年11月05日(Wed)]
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「ウッズホール海洋研究所」 ―100周年記念メダル受賞― ウッズホール海洋研究所は、アメリカ・ボストン郊外に位置する海洋研究機関で、広大な敷地には77棟の建物が立ち並び、1000人以上を超える研究員が所属しています。物理海洋学、化学海洋学、地質海洋学、生物海洋学、工学など、海洋に関するあらゆる分野の研究を行っており、年間予算は約3億3000万ドル(1ドル=150円換算で約500億円)にのぼります。まさに世界一の海洋研究所です。 1977年にはガラパゴス沖の海底で世界ではじめて深海熱水噴出孔を発見。また、沈没した豪華客船タイタニック号の発見でも注目されました。 創設は1930年で、2030年には創立100周年を迎えます。今年は創立95年であり、100周年まで5年もあるにも関わらず、なぜか10月16日に100周年記念メダル授与式が行われ、モナコのレーニエ大公とともに、不肖筆者も受賞者の一人として選ばれました。以下、授与式でのスピーチ(原文英語)を掲載します。 ******************* 「センテニアル・メダル」受賞式 ピーター・メノカル・WHOI所長、ダイアン・フォスター・WHOI部長、ラリー・フィッシュ・WHOI理事、お集まりの皆さん。まずもって、95年にわたり、海洋科学の最前線で世界を牽引し、深海探査から気候変動の解明、そして海洋生物の研究に至るまで、人類と海との関わりを大きく前進させてきましたウッズホール海洋研究所に敬意を表します。その卓越した功績で、国際社会に計り知れない貢献をもたらしてきウッズホール海洋研究所から、2030年の創立100年を記念したまさに未来志向の「センテニアル・メダル」という栄誉を賜ったことは、私にとりまして大きな光栄であり、心より深く感謝申し上げます。 ともすると我々人類は、陸上のことや宇宙のことには大変な関心を持って開発を進めてきましたが、地球の7割を占め、生命を支えている海の重要性については残念ながらあまり注目していませんでした。日本におきましては、この偉大なる海ことを『母なる海』と呼んでおります。こうしたなか、日本財団は「海洋の存在なくして人類の存在なし」という考えのもと、海洋の重要性のみならず、その悲鳴に耳を傾け、海を守る取り組みを50年以上続けております。本日は少しだけその活動について紹介したいと思います。 我々は多様な海洋問題に対処しうる人材を185ヶ国から1900名以上育成してきましたし、海をより理解するべく、全世界の海底地形を2030年までに100%解明する事業であるSeabed2030、10%しか解明されていないと言われる海洋生物の新種発見事業であるオーシャン・センサスも手掛けています。未知の海洋生物の発見は心を躍らせるものがありますし、何より植物や昆虫の分類学は発達しるものの、海洋生物に関する分類学は世界的に未発達であることから、新たな海洋生物の発見とその分類学の確立は86歳になった私の夢の一つでもあります。 また、海洋環境の面では、7〜8割は陸地起源と言われている海洋ゴミの増加を防ぐべく陸地でのゴミ拾い活動をスポーツ化し世界大会を開催している他、廃棄漁網を活用しバッグなどの新たな製品を生み出すリサイクル活動にも従事しています。そして、海面上昇などで国家存亡の危機に瀕するなど真っ先に影響を受ける世界の島嶼国の声を結集して世界に発信できるよう、来年6月には世界島嶼国会議を日本で開催する予定でおります。 このように、今や海洋の問題は、一団体はもとより一国・一地域で対応することも不可能なほど多様で複雑になり、海洋に大きな負荷を与え続けています。現在、世界の人々がようやく海洋問題に目を向け始めたことは非常に喜ばしいことです。しかし、これはあくまで出発点に過ぎません。やはり世界的な海洋の問題を解決するには、互いの利害を超えて、500年、さらには1000年という長期的な視座に立ち、人類共通の利益のために一致団結する必要があると私は考えています。 お集まりの皆さん。世界には約200の国がありますが海は一つです。海洋への取り組みにおいて、長い歴史と確かな専門性を有し、未来志向で活動しているウッズホール海洋研究所が、引き続き卓越した指導力を発揮されることで、国際社会が人類共有の財産である『母なる海』を守ると同時にその持続的な活用を実現できると確信しております。そして、我々日本財団も健全な海を未来につなげ、人類の平和と弥栄の繁栄に資するべく、これからも全力で活動を続けてまいります。ありがとうございました。 |






