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「タイ安全保障対話総括文書」 ―沈黙の外交採用― [2025年09月22日(Mon)]

「タイ安全保障対話総括文書」
―沈黙の外交採用―

8月30日から二日間、バンコクで開催されたタイ王国国防研究所主催「タイ安全保障対話」の総括文書が発表された。筆者が基調講演で述べた「沈黙の外交」が反映されておりますので、ご参考までに掲載します(原文英語)。

*******************
「タイ安全保障対話」
―総括文書―


タイ安全保障対話の総括文書(ポンテープ・ゲーチャイヨー将軍、タイ王国国防研究所 司令官)

タイ王国軍総司令官 ソンクウィット大将、防衛駐在官、各国の尊敬すべき指導者の皆様、名誉ある基調講演者ならびに司会者の皆様、ご来賓の皆様、そしてご列席の皆様。

本日、「タイランド・セキュリティ・ダイアローグ2025」という極めて重要な会議の閉幕にあたり、再びソンクウィット大将の御前に立てますことを大変光栄に存じます。過去2日間、12か国から34名の講演者、26か国から300名の参加者を迎え、まさに平和と安全保障という共通の目的を追求するための主要な声が結集しました。

基調講演においてスラキアット・サティラタイ博士は、世界的な混乱と大国間の対立が激化する現状に照らし、本会議の意義と緊急性を的確に指摘してくださいました。そのメッセージは力強いものであり、ASEANとタイは引き続き対話を促進し、分断を乗り越え、団結と相互尊重を通じて平和を推進しなければならない、というものでした。

議論は地政学的対立とそれが安全保障戦略に及ぼす影響から始まりました。変動する国際秩序の中では、信頼がしばしば対立に覆い隠されることを認めつつ、ASEANの結束と中心性、人道的対応、そして対話といった手段を活用する必要性を確認しました。また、インド太平洋地域における協力促進と平和維持において、タイが果たす独自かつ重要な役割を強調しました。

続いて、地域安全保障の変化に目を向けました。ASEANがこれまでに多くの成果を挙げてきたことを認めつつも、多面的な脅威に対処し、断片化する多極世界において存在感を保つためには、より実務的で、適応力があり、かつ積極的である必要があると確認しました。新たな安全保障と平和の枠組みが求められており、インド太平洋が世界の繁栄の中心であることを強調しました。まったく新しい枠組みを作るのではなく、ARF、ADMM+、EASといった既存の枠組みを強化し、中立的な対話の場として活用することが重要であると結論づけました。

本日午前、笹川陽平氏は自身の幼少期の戦争体験に根ざした生涯にわたる平和への献身を語られ、ミャンマーの紛争の複雑さを浮き彫りにされました。そのメッセージは明確でした。すなわち、信頼、対話、そして「沈黙の外交(silent diplomacy)」こそが持続的な平和の構築に不可欠であると。ミャンマーにおける民主的な連邦国家の実現に希望を託し、タイと緊密に協力して平和と安定を推進していくことを約束されました。

さらに、東南アジアが直面する複雑に絡み合う越境的な組織犯罪の問題についても議論しました。これらは安定と発展に重大な脅威をもたらします。これらの課題は国境を越えるため、国際協力の強化、情報共有、合同作戦といった革新的な解決策が求められます。地域的に法制度を強化・調和させ、円滑な執行を可能にすることが不可欠です。AIやデータ分析を含む先端技術は犯罪ネットワークの撲滅に重要であり、また市民の意識向上と地域社会の参加も同様に強靭性構築に不可欠です。総じて、越境犯罪への対応には国内改革と地域・世界の集団的行動が必要であると結論づけられました。

分科会では新たな課題領域について取り上げました。第一の分科会ではAI、ブロックチェーン、サイバー領域に関するリスクが議論されました。証拠に基づく積極的な戦略の必要性が強調され、危機発生後の対処では不十分であると指摘されました。AIにおけるバイアスや予測不可能性、ブロックチェーンや量子技術によるデジタル主権への挑戦などは、地域協力と社会全体の関与を必要とするものであるとされました。規制強化と官民パートナーシップによって将来に耐え得るインフラを構築し、破壊的技術の意図せぬ影響を軽減すべきであると結論づけられました。

最後の分科会では経済安全保障について議論しました。地政学、技術、変化するグローバル・サプライチェーンが経済の安定を再定義している現状が強調されました。米中の競争は軍事ではなく経済の場で激化しており、その核心はサプライチェーンの強靭性、戦略的自立、技術的優位性にあります。経済安全保障とは、外的ショックや保護主義、経済的威圧に対して繁栄を守り、グローバル化を維持しつつ多様化や近接生産を進めることを意味します。議論では欧州の脆弱性、ASEANの適応の必要性、そして将来の競争力を形作る上でグリーン化やデジタル移行の重要性が指摘されました。最終的に、革新、人材投資、積極的政策を通じて強靭性を高めることが不可欠であると結論づけられました。

さらに、次世代のリーダーたちにも焦点を当てました。彼らはこの不確実性の中を進んでいかなければなりません。パネルディスカッションでは、強靭性は社会が若者をどう扱うか、ASEANがどう改革して relevancy を維持するか、世界がグローバル危機にどう対応するかにかかっていると強調されました。若者は新たな発想と活力をもたらすが、その声に耳を傾けねばならず、ASEANは尊敬・評判・存在意義の危機に直面しています。戦争、気候変動、弱体化する多国間主義といった負担を背負わされる若者にとって、強靭性は包摂的なリーダーシップ、制度改革、市民参加を必要とします。若いリーダーたちは、現実を直視する者、革新者、そしてネットワーク構築者として不可欠な存在です。

皆様、この対話を通じて私たちは共通の理解と集団的な責任を得ました。示された知見は貴重な羅針盤ですが、歩み出さなければ羅針盤は役立ちません。この対話で築いた信頼、共有したアイデア、そして再発見した団結を携え、次世代のために平和の遺産を築くための行動を始めましょう。

「平和な世界を望むだけでなく、ともに築いていこうではありませんか。」サワッディークラップ
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