「第41回WHO笹川健康賞」
―デンマークのノーデントフト博士―
第41回WHO笹川保健賞が、 5月23日にジュネーブで開催された第78回世界保健総会の式典において、若者の自殺予防に関する功績が認められたデンマークの精神科医メレーテ・ノーデントフト博士に授与されました。
5月23日、スイスのジュネーブでの世界保健総会での授賞式にて、第41回WHO笹川健康賞受賞者のメレーテ・ノーデントフト博士(左から2人目)、日本財団の笹川陽平会長(右)、WHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス博士(右から2人目)、第78回世界保健総会議長のテオドロ・J・ヘルボサ博士(左)。
この賞は、自殺という深刻な公衆衛生問題に取り組むための科学と実践に基づいた戦略を高く評価するものです。自殺は毎年世界中で70万人以上を死に至らしめ、15歳から29歳の若者の主な死亡原因の一つとなっています。
ノーデントフト博士による自殺予防と精神疾患への早期介入、特に若者を対象としたアプローチは、目覚ましい成果を上げています。このアプローチはデンマーク全土で実施されており、他の国々のモデルとみなされています。
1998年、彼女は18歳から45歳までの精神科初診患者を対象とした早期介入プログラム「OPUSアウトリーチ治療プログラム」を立ち上げました。このプログラムは、多職種チームを基盤とし、担当スタッフとの週1回のミーティング、回復支援グループ、そして家族の参加を柱としています。入院率の低下と生活の質の向上に加え、地域社会と家族の役割を重視していることで高く評価されています。
OPUS(「仕事」)という名称は音楽の世界から取られており、プログラムの様々な要素が互いに調和し、綿密に準備された計画を統合する必要性を表現するために選ばれました。OPUSは、精神医学的介入、心理学的介入、社会的介入を統合することを目指しており、それらの相互作用が非常に重要です。
ノーデントフト博士は受賞に際し、「本日ここに立つことは、私自身だけでなく、精神病を患う若者たち、その家族、そしてこの道のりを可能にしてくれた同僚たちにとって光栄です」と述べました。「この賞は、若者たちに声を与え、適切な支援を早期に受ければ、回復は可能であるだけでなく、その可能性が高いことを改めて示すものです」と彼女は述べました。
授賞式にはWHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス博士が出席し、日本財団の笹川陽平会長からノーデントフト博士に賞が授与されました。
「メンタルヘルス分野の取り組みが同賞に選ばれたのは今回が初めてです」と笹川氏は述べたほか、「WHOの自殺防止イニシアチブ『LIVE LIFE』は、プライマリー・ヘルスケアのアプローチに加え、地域レベルでの支援と予防策の強化の重要性を強調しており、ノーデントフト博士の研究は先駆的な取り組みです。」と言及しました。
賞金3万ドルは、臨床医、研究者、患者を集めて治療の最適化に関する議論を深める会議の開催に充てられます。
笹川健康賞笹川健康賞は、世界保健機関(WHO)の理念「すべての人に健康を」の実現に貢献することを目的として、当時(財)日本船舶振興会(現・日本財団)会長であり、笹川記念保健財団(現・笹川保健財団)理事長であった笹川良一氏の提唱と資金提供、およびWHO事務局長ハルフダン・マーラー博士の賛同により、1984年に設立されました。この賞は、プライマリー・ヘルスケアの推進や地域レベルでの具体的な保健プログラムなど、持続可能かつ効果的な活動を通じて人々の健康と福祉の向上に大きく貢献した個人および団体を表彰するものです。
笹川保健財団笹川保健財団は、日本財団創設者の笹川良一氏(1899年〜1995年)と、日本のハンセン病化学療法の父と称される石館守三教授(1901年〜1996年)によって、世界からハンセン病を撲滅することを目的として1974年に設立されました。設立以来、ハンセン病対策に注力するとともに、寄生虫病やHIV/AIDS対策、チェルノブイリ原発事故後の医療協力、国際保健人材の育成、ホスピス緩和ケアの充実などにも取り組んできました。現在は、ハンセン病制圧と地域保健の推進に重点を置き、「すべての人に健康と尊厳を」という理念のもと、国内外で様々な事業を展開しています。