「海と日本プロジェクト」―本年度開始式典― [2025年05月16日(Fri)]
「海と日本プロジェクト」 ―本年度開始式典― 日本財団主催の「海と日本プロジェクト」は今年10回目を迎え、一区切りです。10回を総括の上、新たな取り組みへと発展させたいと考えています。 51放送局の参加、10年間で4万件を超える様々な海にまつわるイベント、延べ2000万人が参加されたことになる。 海ゴミの回収、海の民話のアニメ化、灯台の利活用、高校生を中心に魚を使った新しい商品開発等々、海に興味のなくなってきた国民に今一度、海に親しみを持ってもらう活動は、大きな成果をあげて、25年度で最終年度となります。 以下は本年最終年となる「25年度海と日本プロジェクト開始式典」での挨拶です。 ******************* お忙しいところお集まりいただき恐縮です。海と日本プロジェクトに皆さんにお力添えをいただき、25年度のキックオフをできますことを感謝申し上げます。 海と日本プロジェクト開始から10年という期間で51の放送局からの献身的なお力添えを頂きました。海洋立国日本と政治家は口では言いますが、口先だけで政府が機能していないという状況下にあり、これではいけないということで、皆さんのお力添えを頂いて参りました。海の大切さ、そして我々日本人は海と共に生きてきた歴史もありますから、特に子どもを中心に海を再認識して欲しいと活動を頂いております。これまでに4万件に上るイベントを開催いただき、延べ2000万人を超える人が参加下さったということで、改めて皆さんのご尽力に感謝申し上げます。 私も多くの国際会議に参加致しますが、今や世界の最も大きな問題の一つが海に関わる問題、すなわち海洋問題です。ここから気候変動が起こり、地球環境の悪化も進んでいきます。人類の生存に最も大切なものは海であるにもかかわらず、人間は宇宙に興味を向けがちで、人類の生存に一番肝心な海洋への認識が大変薄かったことは御高承の通りです。しかし、今や世界の国際会議では、一番の問題は海洋の問題と言われるまでになってきました。これはお集まりの皆さんの地道な活動の成果の積み重ねと思います。皆さんの地道な活動で蓄積されたエビデンスを基に我々が国際社会で発信することで海洋問題のトップリーダーは日本財団と言われるところまで来ました。皆さんに改めて感謝を申し上げます。 日本財団はこれまで様々な海洋課題に取り組んできました。例えば北極海航路の開拓、最近でいえば暗黒酸素に関する記者会見も行いました。ご承知の通り、酸素は光合成で生成されると従来考えられておりましたが、海底5000メートルにあるマンガンノジュールという物質から酸素が発生しているのではないかという発表がスコットランド海洋科学協会からあり、日本財団はこの組織といち早く連携しメカニズムを解明しようとしております。また海の生物は実は10%しか知られていない現状に鑑み、新しい海の生物を発見する事業も開始致しました。動物や植物、昆虫には分類学が発達しておりますが、海にこれだけの生物がいながら9割が未知であり分類学も存在しない状況であります。しかし、中には我々の健康に有益な物質を持った生物も沢山いると言われており、海を科学することで人類が更に発展できるよう、こうした方面でも日本財団は活動しています。 日本財団は1972年のストックホルム宣言の時から、環境問題を解決せずには人類の将来はないと認識して活動を開始しております。近年、国連海洋会議が出来ましたが、形だけで十分機能していない実情があるほか、国連、政府がやることにも限界があります。例えば海洋ゴミ対策でいえば、実は海のゴミの7割は陸地から海に流れ込んでおり、特にプラスチックはそれを魚が取り込み、そしてその魚を食べている我々人間にも影響が出るという事象も発生しています。つまり、大切なことはゴミを捨てないというのが基本となります。海と日本プロジェクトの主たる活動の一つにゴミを拾う活動もありますが、こうした取り組みから「一度ゴミ拾いに参加した人はごみを捨てなくなる」ということが分かりましたので、日本財団は「スポGOMI」と称しゴミ拾いをスポーツにすることで多くの人を巻き込んでおります。既に「スポGOMI」のW杯を開催しており、昨年は約30ヶ国が参加し、英国が優勝、日本代表であった新潟のチームは2位という成績でした。このように、ゴミを拾えば捨てなくなるという特徴を活かして、海洋環境の改善に民間の立場から取り組んでおりますが、全ては、海と日本プロジェクトの成果であろうと思います。 改めて皆さんの活躍に深甚なる謝意を表したいと思いますが、これまで10年間やってきた結果を受け止め、しっかりと今後の在り方を見直す時期でもあろうかと思います。10年一区切りではありますが、これで事業を止めようという考えではなく、10年間の成果を分析し、次どのように更に活動していくかを考えて参りたいと思います。すでに、灯台プロジェクト、海にまつわる民話の映像化、高校生による海にまつわる様々な取り組みなどを実施しニュースとして広く多くの国民に広がっています。是非とも引き続きご参加の皆さんの協力を賜り、海洋問題は日本がリーダーシップを取っている国であると世界に理解してもらえるようになってほしいというのが私の願いです。今年は一つの区切りであり、心から感謝を申し上げるとともに引き続きの協力をお願い致します。ありがとうございました。 |