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「海洋開発後進国日本」―人材の養成は急務― [2024年11月15日(Fri)]

「海洋開発後進国日本」
―人材の養成は急務―


昔は日本も石油リグの製造もおこなっていたが、今や皆無となり、急速に進む海洋開発における技術は私見ではあるが、後進国となってしまった。かつて世界を凌駕したトランジスタをはじめIC技術も今や中国、台湾の後塵を拝してしまった。最近のニュースでは、有人の深海探査の船の技術は日本に既になく、有人探査船は諦めたとのことであった。

日本財団は「義を見てせざるは勇なきなり」の精神で遅まきながら、将来の海洋開発をけん引するグローバルなエンジニアの育成を目的に、2016年より産業界、大学と連携の上、日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムを設立。今日まで387名の優秀な学生をスコットランド、ノルウェー、オランダ、アメリカ、フランス、台湾、ドイツに派遣して海洋開発の最新の技術を学んでもらっている。
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10月25日海外派遣の学生たちの成果報告会が日本財団で開かれた。2024年は57名の大学生と企業から8名の若手技術者が参加した。

派遣先の教員等からの推薦で下記の9名が優秀者として表彰された。
写真C.png


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成果報告会に参加した学生らと


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スコットランドのプログラムに参加したメンバー


以下成果報告会での私の挨拶です。

********************


2024年10月25日(金)
於:日本財団ビル2階

ようこそ。日本財団会長の笹川です。私も月曜日にアイスランドから帰国してきましたが、アイスランドでは北極海の国際会議に出席していました。北極海航路の開発は実は日本財団が中心となって、25年前に日本、ロシア、ノルウェーと連携して行いました。この背景といたしまして、当時のノルウェー外務大臣が私に「ササカワさん、何か挑戦的なことをしませんか」とのことで「一体何でしょう」と伺ったところ「北極海航路の開発をしましょう」とのことでした。私が議長になり10年間やりましたが、結論としては「技術的には可能であるが、氷解の状況を考えると2050年くらいに航行可能になる」と発表したのを覚えています。現在、予想外の気候変動でこの期間が大幅に短縮されましたが、25年前に日本が中心になって北極海航路の開発の可能性を図るべく、実証的に横浜からロシアのムルマンスクまで航行実験を実施したという歴史があります。しかし残念なことに、今日、各国は北極海に注目しているにもかかわらず、中国や韓国には砕氷船があるのに、日本にはいまだにありません。

「日本は海洋立国だ」「世界で唯一海の日を祭日にしている国だ」ということを政府も言っていますが、実態は今申し上げたような状況です。海洋開発の分野においても、大幅に後れを取っているのは皆さんご存じの通りです。我々国民のレベルの視点では「政府は何をやっているのか」「ちっとも進まないではないか」と批判しがちですが、日本財団の場合には、国も様々な問題を数多く抱えているわけですから、批判をするだけではなく自分たちの出来る範囲で、民間でできることを最大限やっていこうということを基本的考えとしています。

我々日本財団も、多様化する社会において国際協力、国際支援をしていますが、その中で海洋開発の重要性は喫緊の問題です。ご承知の通り、地球の7割は海であり、海の開発については特に環境に配慮した開発を考えないといけません。日本財団は、先般東京大学と連携して南鳥島でマンガンノジュールを発見し、一部分ではありますが陸揚げに成功しました。しかし、海底資源の陸揚げについても、日本では陸揚げに必要な船を建造すると言って10年以上経ちますが、未だに作られていません。今回は、東京大学と連携しアメリカの船をチャーターして陸揚げを致しました。我々が発見しただけで、75年分の海底資源、特にレアメタルが含まれていることも分かっており、日本は無資源国でありながら、こうした凄いものが埋蔵されていることが分かりました。しかしこうした資源がEEZ内にあるにもかかわらず、日本の技術では引き上げられない悲しい現実があります。大きな問題は、海底資源を陸揚げするにあたり、国際的傾向としては「環境」というものが批判の対象になっていますので簡単に陸揚げとはいきません。マンガンノジュールの中には暗黒酸素を作り出し深海底の生態系を支えている可能性があり、陸揚げによる生態系への影響を示唆した論文がNature Geoscienceに掲載されたこともあり、これは我々としては慎重に環境に配慮しながらやろうとしています。

国が出来ないから放置するのではなく、出来るところがコンソーシアムを組んでやっていくことが必要というのが日本財団の基本的考えであり、若い人に海洋開発の技術を学んでいただくよう、遅まきながら皆さんの力を結集して海洋開発の技術促進のための人材養成をしていこうとしています。企業の皆さん、大学の皆さんの熱い情熱に支えられて皆さんが勉強する機会を得たものであります。内容的に充分であったかは、年々皆さんのご意見を聞き、必要であれば反省しながら一層充実したプログラムにしていかないといけません。若い時に海外に行って勉強してきたことは皆さんの人生の中で大変大きな体験であったのではないかと思います。参加された若い皆さん、日本は海洋開発に大きな遅れがありますが、これからの日本の海洋開発について、世界に冠たる日本の技術、これからは環境を抜きにした海洋開発はできないので、環境に配慮した海洋開発にご努力をいただきのみならず、皆さんが先頭となって世界に伍して闘い、成果を出せるようご努力に期待しています。今後の皆さんの活躍を期待すると同時に、企業・大学の関係者の支えによって皆さんの研修が成功裏に終わりましたので、この点についても企業・大学の関係者に心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。
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