「看護師海外留学へ」―笹川保健財団― [2024年08月05日(Mon)]
「看護師海外留学へ」 ―笹川保健財団― 笹川保健財団の活動は二つあります。一つは世界のハンセン病制圧活動であり、もう一つは起業家マインドをもった在宅看護センター経営のできる看護師の育成及び日本はもとより国際的に活動する看護師養成プログラムです。 今回下記の通り13人の方々が、看護学や公衆衛生学で著名なアメリカ・カナダの大学へ留学することが決定し、7月10日ささやかな壮行会が開かれました。 川浪美穂 コロンビア大学 新谷由衣 ジョンズホプキンス大学 寺田万莉奈 ジョンズホプキンス大学 吉田孝介 ピッツバーグ大学 金岡真利 マギル大学 酒井理絵 イェール大学 藤井清文 ジョンズホプキンス大学 五木田嵩 コロンビア大学 菅香織 ジョンズホプキンス大学 富増由菜 カリフォルニア大学バークレー校 島田宗太郎 イリノイ大学シカゴ校 星谷真子 デューク大学 今井優佳 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 以下壮行会での私の挨拶です。 ******************* 皆さん、おめでとうございます。皆さんが志をもって海外に行かれることを心から歓迎致します。日本は資源がありませんから、人材を養成していくことが重要です。釈迦に説法ではありますが、日本の近未来の中で、これから増々高齢者が増えていきますので、皆さんの役割は大変重要であります。私自身は診療看護師、Nurse Practitioner(NP)、を作るべきと論陣を張っていますが、医師会、薬剤師会などに強硬に反対されています。しかし日本のこうしたシステムに風穴を開けようと頑張っています。 日本の偏差値教育も然りです。高校まで行って、例えば英語は大事かもしれませんが、国語も、数学も、社会も、体操も、音楽も出来ないといけないという教育制度自体が現代にマッチしておりません。しかし役人の世界では先輩が作った規則を後輩が変えるのは難しいという風土があります。私は「好きこそものの上手なれ」ではありませんが、好きなことを見つけ、それを深めてもらうことが教育だと思っています。全員が東京大学に入れるような人材になったとしても国は成り立ちません。好きな分野を見つけて努力することが大切ではないでしょうか。 日本財団はオンラインと対面でのネットワークを兼ね備えた大学を作ります。一学年5,000人を想定しております。現在日本には約790の大学がありますが、半分は定員割れです。我々が設立するZEN大学が出来れば多くの既存の大学に大きな影響を与えるでしょう。また、世界で革新的な大学と言われているミネルバ大学もオンラインと対面を織り交ぜた教育を提供しています。日本財団はミネルバ大学を日本に招聘し、日本とサンフランシスコで教育を提供していこうと考えています。 近年、若者の内向き志向の傾向が強まる中、ここにお集まりの皆さんが海外に行って勉強することを嬉しく思います。高齢化社会においては慢性病が増えますが、2〜3年前に国家試験に受かった医者に指導されずとも、看護師の皆さんの方が長年の経験に基づき、高血圧、糖尿病などについては薬の処方も出来ます。こうしたことが出来るよう資格を与え、在宅看護を中心に仕事をしてもらうことが日本の将来に重要と考えています。笹川保健財団の喜多会長はWHOを中心に国際的に活躍してこられた方で、この情熱も汲み取っていただき、国際社会で活躍頂くと同時に、帰国した暁には、こうしたNPの制度を作るうえで力添えを頂きたいと思います。 ところで、哲学の話は好きですか。「我思う、ゆえに我あり」。これは誰の言葉でしょうか。デカルトです。しかし私はこれには納得しておりません。「我思う、ゆえに我あり」の前段があります。これを研究して解明した人はノーベル医学生理学賞がもらえるのではないでしょうか。何故私たちはこの世に存在するのでしょうか。突き詰めれば、私たちは一人でこの世に存在したわけではありません。3億といわれる精子のうちの1つが卵子と結びついたから存在しているわけです。つまり、何億という人間になる可能性があるものの犠牲の上に我々は誕生したのです。卵子への到着が二番であったら、我々は存在していないのです。こうした何憶分の一の幸運に恵まれて我々は誕生し、現在存在しているのです。従って、我々には一生懸命生きる責任があるのではないでしょうか。私の人生哲学に「『よく生きた』と思える人生を歩みたい」というものがあります。我々が生まれるにあたり犠牲となった数多のもの達にも「よく生きた」と言える人生にしたいと思っています。 日本の若者が一層内向き志向の傾向にある中、海外に行って勉強しようという皆さんの姿勢に改めて敬意を表します。喜多先生の強い思いは、それぞれの目的に向かって皆さんが勉強をすすめ、海外、国内で指導者となり、世界の中で活躍できる人になって欲しいということです。私の思いも全く同じです。どうぞ元気で行ってらっしゃい。 |