「アール・ブリュットとは」―日本財団コレクション寄贈― [2023年09月19日(Tue)]
「アール・ブリュットとは」 ―日本財団コレクション寄贈― 「アール・ブリュット」とは「生の芸術」を意味するフランス語で、「正規の美術教育を受けていない人による芸術」とか「既存の美術潮流に影響されない表現」とか解釈は様々だが、日本財団では主に「障がい者の表現」として絵画を中心に549点の秀れた作品を収蔵していた。 そもそも日本ではアール・ブリュットに対する理解も関心もなかったが、スイスには既に「アウトサイダー・アート」として常設展があることから、勉強に訪れたことがある。 当時の日本では、福祉施設で絵画や紙細工などを熱心に製作する障がい者はいたが、その作品の芸術性を理解する人はいなかった。そのため日本財団はスイスの専門家を招き、芸術性のある作品を収集して2010年2月、パリのオルセー美術館で展覧会を開催したところ大いに話題となり、たしか当初の予定より6ヶ月間延長して2011年1月まで開催したのも懐かしい思い出である。 中には出品した方の家族が当人の作品は芸術性があるとわかり、高値で日本財団への売却を希望する方もおられたが、これら作品の散逸を恐れて大切に保管し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで大規模な展覧会を計画していたが、コロナ禍で実現が不可能になってしまった。 貴重な価値ある作品なので慎重に検討の結果、滋賀県立美術館に全コレクションを寄贈することにした。 以下、京都新聞の記事です。 *************** 国内の公立美術館で唯一、アール・ブリュット(生の芸術)をコレクションの柱に掲げる県立美術館(大津市)に、日本財団から作家43人の作品計549点が寄贈された。同館によると、アール・ブリュットの収蔵作品は国内最大級の計731点に上り、世界有数の質と量になるという。来年4月から企画展などで寄贈された作品や作家の魅力を発信していく。 アール・ブリュットは、美術教育に影響されていない独自の創造性をもつ芸術で、障害者らの作品が見いだされている。 財団が寄贈したのは、2010年にパリで開かれた日本のアール・ブリュット作品を紹介する大規模展に出展し、高く評価された作品が中心。ペンで多色に塗り分けた絵画や、紙とセロハンテープで角張った人形に仕立てた立体、無数の突起で覆われた陶作品など多彩だ。作家43人のうち、10人が出身や制作拠点で滋賀県にゆかりがあり、京都府の出身者もいるという。 同館を選んだ理由は、運営が安定した公立で、専門の学芸員がいて、展示の実績もある点を挙げる。18日に県庁を訪れ、三日月大造知事に目録を手渡した日本財団の尾形武寿理事長は「財団では活用が難しく、引き受けてもらえる美術館を探していた。(寄贈作品は)できれば定期的に展示会をしてもらえればありがたい」と話した。三日月知事は「アール・ブリュットといえば滋賀県立美術館といわれるように大切に収蔵していく」と応じた。 同館の保坂健二朗館長は取材に「どういう人がどういう思いで、どのように作っているのか想像してもらいたい」と展示方針を示し、作品を見てもらうだけでなく、制作風景などの紹介を通じて作家についても知ってもらう工夫をするとした。(梶井進) |