「南米日系人学生」―無事卒業― [2022年03月31日(Thu)]
「南米日系人学生」 ―無事卒業― ご存じの通り、日本財団は未来を担う若者に多種多様な奨学制度を行っており、卒業生のネットワークは3万人を超える。また、活動方針の一つに、海外(特に南米)に移住された方々の支援活動、主に老人ホームや病院支援への支援を行っている。 既に四世五世の方々も日本人としてのアイデンティティを持ちたいと、日本への留学を希望する若者が多くいる。文部科学省も活動しているが、政府の制度が規則によって制約が多いのはやむを得ないことではある。しかし日本財団の奨学制度は単に大学入学だけでなく、家具製作、美容技術、太鼓製作、ファッションデザイナー等多岐にわたり、最長5年の奨学制度である。 2003年から開始したが、昨年までの卒業生は、アルゼンチン3名、コロンビア5名、チリ3名、パラグアイ16名、ブラジル48名、ベネズエラ1名、ペルー20名、ボリビア6名、メキシコ5名、フィリピン2名、インドネシア2名と、計111名になる。今回はコロナの関係もあり、下記の6名が無事卒業された。 石田 純 コロンビア 2世 琉球大学大学院理工学研究科 海洋生物学 天羽 恵理紗 ボリビア 2世 文化服装学院ファッション高度専門士科 服飾 イトカズ ミナミ グスタボ ラウル ペルー 3世 名古屋大学大学院国際開発研究科 国際関係学 ヒガ ヤギ パトリア ハルミ ペルー 4世 昭和音楽大学大学院音楽研究科 音楽療法 金城 晃 アレックス ボリビア 3世 沖縄調理師専門学校調理科 調理学 かめた 湯沢 マリアナ メキシコ 3世 東京藝術大学大学院美術研究科 芸術学 ※以下、私の励ましの発言です。(3月17日) 本日はようこそお越しいただきまして、感謝申し上げます。日系スカラーシップの修了式ということですが、新型コロナウイルスの蔓延もあり様々なご苦労されたと思いますし、その中でよく十二分に活躍下さったと思います。学校もオンラインでの授業が多く、友人をつくるも難しかったと聞いています。これから母国に帰る方も、もう少し日本にいてから帰国される方もいらっしゃると思いますが、いずれ母国に戻り頑張っていただきたいと思います。 石田さんは、海洋生物学を勉強されたと伺いました。この分野はとても大事です。ご承知の通り日本財団は海の分野において世界の拠点になりつつあります。現在200万種類程度の未確認の海洋生物がいると言われていますが、これは我々人類は陸のことはよく知っていても海のことは十分に分かっていないことの証左の1つでしょう。また、海の地形図の作成も支援していますが、未だに20%程度しか解明されていません。火星の詳細な地図はありますが、我々人類が住んでいる地球の海の中のことは分かっていないのです。ですから、日本財団はこの分野でも一生懸命取り組みを進めていますので、今後も日本財団と連絡をとりあっていきましょう。 天羽さんは、文化服装ということでデザインを学んだと伺っています。日本のデザインは優れていると思いますが是非うまくボリビアでも応用し、10年したらボリビアを代表するファッション・デザイナーになるといった大きな夢を持ってやって欲しいと思います。いずれファッションショーを開いていただき、拝見するのを楽しみにしています。 イトカズさんは、国際関係学を勉強されていたと聞いています。最近の南米の政局をどのようにご覧になっておりますでしょうか。最近の南米の諸国の大統領選挙を見ていると、相当変化が出てきている印象があります。実はペルーのフジモリ・元大統領とは浅からぬ関係があります。当時日本にいたフジモリ・元大統領が日本から演説を行い、ペルーの地方の人が彼の演説を見られるようにして盛り上がったことを覚えています。当時大統領資格について判断をする委員会があり、その委員会で資格があると判断されるまで帰国はしない方がいいとお伝えしたが、私が海外出張で不在の時に帰国され逮捕されてしまいました。彼の家族は仲が良く、みな私の家に来たこともあり交流もあります。フジモリ・元大統領は前任の大統領が国の財政赤字にしたものを挽回したという功績もあったと思います。 比嘉さんは音楽療法を勉強されたと伺っています。日本での音楽療法は我々とも関係の深かった日野原重明先生が日本で初めて行いました。今では音楽療法学会もありますが、音楽療法をやると、例えば、末期がんで精神的に不安定な人の苦しみを和らげる効果があるとも聞いています。もしペルーでは貴女が音楽療法のパイオニアということであれば、いずれは国が資格制度をつくり一般への理解促進をしていくことが重要だと思います。日本財団が支援した日系人病院がペルーにありますが、私は、ハンセン病に理解のあった革命家のチェ・ゲバラにゆかりのあるハンセン病施設を訪ねた折に倒れてしまい、ここで手術しその時のペースメーカーが今でも入っています。 金城さんは琉球料理をおやりになっているんですね。確かにボリビアは沖縄から移り住んだ人が多いと聞いています。ボリビアには日本財団が支援した空手道場や柔道場もあります。将来的にお店を開き、価格の比較的高い日本料理を一般家庭の方にも召し上がっていただきたいという素晴らしい夢をお持ちでいらっしゃいますから、是非一大チェーン店をボリビアに展開していただくことを期待しております。 亀田さん、メキシコの近代絵画は素晴らしいですね。東京藝術大学に入るのは大変難しいのによく努力をされたと思います。芸術学となると、ご自身で絵を描いたり、彫刻を作ったりということだけでなく、芸術の論評もされると聞いています。芸術関係の教育者になったり、更に学問的な追及をされたりと様々に活躍できると思うので、これからの活動に期待しています。 本日卒業される皆さんが、それぞれ明確な夢や目標を持っていらっしゃることは素晴らしいことです。勿論日本の若い人たちの中にも皆さんのような方も沢山いますが、一方で何となく大学に進学し、就職しなければいけないのでどうしようか、となる人も少なからずいます。やはり、自分は将来こういった道を進みたいと考えて大学に入らないといけません。その点皆さんは夢や目標が明確にあり、勉強されたのは素晴らしいことです。 また、日本財団は皆さんを家族の一員と考えています。奨学金を出して終わりになるのではなく、これからも皆さんとネットワークを組み、皆さんが協力して欲しいということがあればぜひ教えてほしいと思います。日本財団には、海外に移民した人たちに協力するという大きな目標があります。これまでは高齢になった方たちへの支援として、老人ホームや病院の建設に協力してきましたが、これからは若い日系の方から見て日本の至らない点を教えてもらい、そうした課題解決に協力していきたいと思います。ありがとうございました。 |